予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

予備自衛官、即応予備自衛官として取得した防衛記念章が着用できるようになりました

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 防衛省情報検索サービスの方はまだ更新されていないようですが、山本朋広防衛副大臣ツイッターで公表されています。

 

twitter.com

 

 これまで予備自衛官即応予備自衛官については、現役時代に着用資格のあった防衛記念章しか着用が認められていませんでした。つまり、予備自衛官即応予備自衛官として縁故募集や災害派遣等での活躍があっても(正確には活躍により賞詞が授与されても)新たに該当する防衛記念章を着用することができなかったのです。

 

 例えば、現職時に縁故募集により第5級賞詞を授与され防衛記念章(第13号)の着用資格を得た隊員が、退職後に即応予備自衛官となり熊本震災に関わる災害招集に従事し第3級賞詞を授与(第4号)された場合、第13号は制服に着用できますが第4号は着用できない状態でした。

 

 今回の制度改正により、予備自衛官即応予備自衛官として賞詞を授与された場合は該当する防衛記念章が制服に着用できるようになり、予備自衛官補出身者についても防衛記念章着用への道が開かれたことになります。

 

 ちなみに予備自衛官即応予備自衛官についは主に賞詞授与(縁故募集関係(第5号、第9号、第13号)や災害派遣関係(第4号、第8号、第12号))での着用資格が主になると思われます。実際に以下の通り、縁故募集や災害派遣予備自衛官即応予備自衛官に対する賞詞授与が行われております。

 

防衛ホーム新聞1002号12面

www.boueinews.com

 

雑誌「みりば」埼玉地方協力本部No.61より

http://www.miliba.com/pdf/report_03_061.pdf

 

 今回の改正については、予備自衛官等の縁故募集拡大といった狙いもあるのかもしれません(山本防衛副大臣のツイートでもモロに書かれている)。まぁ、予備自衛官が制服を着用する機会は滅多にないのですが(即自でも貸与はされるものの着る機会はほぼ無い)、それでもモチベーションアップには繋がるのは間違いないでしょう。

雑誌記事紹介

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 新型コロナウィルス対応のため、予備自衛官が招集されるようです。

 

https://www.mod.go.jp/j/press/news/2020/02/13a.pdf

防衛省プレスリリースより)

 

 今回の招集は主に医師、看護師等の資格を持つ予備自衛官が対象との事。地震や台風に続き医療活動での招集ということで、予備自衛官の活用も一昔前に比べると幅が広がったな、という感じです。

 

 これから重要になってくるのは招集される予備自衛官の生活や、雇用企業に対する補償だと思いますが、防衛省自衛隊は実態に即した問題把握に努め、制度の改善に努めていってほしいと思います。

 

 あと、公務員が即応予備自衛官雇用企業給付金制度と雇用企業協力確保給付金制度の対象外になっているのはいい加減、何とかならないもんでしょうか? 公務員の予備自衛官が招集されても現行の制度では所属組織に対する補償は一切なしとか肩身が狭すぎるんですが・・・。

 

 さて、ここからが本題。

 

 予備自衛官に関する雑誌記事を2点見つけましたので紹介したいと思います。

 

 一つ目は防衛省が編集協力している雑誌「MAMOR」の2020年2月号。

www.fusosha.co.jp

 

 「いざ志願! おひとりさま自衛隊」の著者で予備自衛官補出身の岡田真理予備3曹が台風19号による災害招集の体験をルポとしてまとめたものです。着隊から離隊まで19日間の活動を紹介されています。

 

 岡田3曹は陸上総隊司令部報道官室に配属され主に広報の仕事に携わっていました。台風19号の時に陸上総隊司令部のツイッターを見ていた方は招集された予備自衛官の紹介などが投稿されていたことを覚えていると思いますが、その裏舞台がどうだったのかこの記事を読めば分かります。

 

 本業がプロのライターという事で、一般人にわかりやすい文章の作成等、自らの経歴を生かして業務に貢献できたとの事です。

 

 岡田3曹の場合はレアケースになるのかもしれませんが、防衛省はこれから先、予備自衛官の職業、資格、技能を把握したうえで、これを有事に際に生かしていこうと考えているようです。

 

 既に制度改正で予備自衛官等が施設器材(建設機械)の資格を保有している場合は災害派遣の現場で活用できるようになっていますが、その他の分野でも予備自衛官の能力に応じた運用を進め、限られた人的資源を有効活用できるようになればと思います。

 

 二つ目は「ビジネスガイド」2019年8月号。

www.horei.co.jp

 

 恐らくほとんどの人になじみのない名前かと思いますが、労働保険、社会保険、税務等に関する雑誌で、企業の労務担当者、社会保険労務士などを対象とした記事が多く書かれています。

 

 2019年8月号では「社員が予備自衛官になったら・・・~制度の概要と実務上の留意点~」と題し、社会保険労務士の専田晋一氏(予備3曹)が予備自衛官等制度の概要と予備自衛官を雇用する企業の実務対応について書かれています。

 

 このブログでも紹介した労働基準法第七条(公の職務)に予備自衛官は該当するのかという問題や、訓練招集時の休暇はどう処理するのか、就業規則予備自衛官をどう規定するか等々について事例等を含めて解説されています。予備自衛官等たる社員の処遇に関する規程例も掲載されていますので、予備自衛官だけでなく、雇用企業の人事関係者にも役立つ内容となっております。興味ある方はご参考にされてはいかがでしょうか。

元自衛官から見た徴兵制と予備自衛官制度

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 平成26年ごろに解釈改憲が議論の的となっていた頃、徴兵制についても集団的自衛権と絡める形でよく話題に上がっていました。

 

反対派からは「集団的自衛権を認めると徴兵制になる」

 

賛成派からは「ハイテク兵器が主体の現代戦で徴兵は役に立たない。現実性がない」

 

 と、何だかかみ合わない議論を繰り広げていたような記憶がありますが、世界に目を向ければロシアによるクリミア占領の影響から2015年にリトアニアが徴兵制を復活、スウェーデンも2018年に人材確保の問題から徴兵制を復活させました。

 

 では実際に現代戦で徴兵制は役に立たないのでしょうか。憲法的な問題は置いといて、今回は自衛隊の諸制度と照らし合わせて実際に徴兵が役に立たないのかどうかについて書いていこうと思います。

 

 ちなみに筆者は徴兵制について、状況によってそれが日本の独立のために合理的なら採用すればいいし、非合理的なら志願制でいいという立場です。

 

※ここでの徴兵制の定義とは、成人に達した男子の全部、もしくは一部を1~2年軍隊に入隊させる制度とします。

 

 よく言われるのが、

 

「現代の兵器はハイテク化されていて徴兵では扱えない」

「軍人が一人前になるには長い年月がかかる。短期間で除隊する徴兵は役に立たない」

 

 多分、徴兵制に対する反論として真っ先に挙げられるのがこのフレーズだと思います。

 

 確かに部隊の運用、ミサイルや電子機器、火砲の操作には長年にわたる技術の習熟と経験が必要なので、御説ごもっとも。でも、それってそもそも将校(幹部)とか下士官(曹)の役目じゃないでしょうか?

 

 一般的に軍隊では指揮官の手足となって行動する兵(士)が必要となります。陸上自衛隊の場合、兵(陸士)に該当する入隊コースは自衛官候補生と一般曹候補生ですが、入隊すると前期後期併せて6カ月の新隊員教育を受けてから部隊に配属され、実際に演習や恒常業務に従事することになります。

 

 部隊で陸士がやる仕事は陸曹の指示の元で各種作業に従事したり、演習では普通科中隊の場合、小銃手などとして班長分隊長の指揮下で行動し、文字通り手足として部隊の末端を支えます。

 

 5~6年目の陸士長ともなれば陸士のまとめ役としてある程度のリーダーシップを求められますが、基本的に指揮は陸曹がするものと考えられているので陸士単独での判断能力というものはそれほど求められません。何か簡単な作業させる際にも陸士だけでやらせることはまず無く、指揮官として陸曹がつけられます。

 

 その後、陸士たちは陸曹にならなければ早くて1任期(2年)、長くても3任期(6年)ほどで任期満了退職(一般曹候補生依願退職)し自衛隊を去ることになります。つまり、陸上自衛隊も陸士については徴兵制と同じように比較的短いサイクルで隊員を入れ替えていることになります。

 

 だからといって有事になった場合は「こいつは入ってまだ2年目だから防衛出動には出せないな」なんてことはなく当然、経験の浅い陸士でも最前線に出ることになります。というか、出さなかったら何のために自衛隊にいるんだという話です。

 

 要するに「現代の兵器はハイテク化されている」、「軍人が一人前になるには年月がかかる」は確かに事実ですが、一方で軍隊組織には未だに「ベテランの手足となる体力重視の若い兵士」が大量に必要であることも事実なのです。

 

 これは徴兵制を採用している軍隊も同様で、兵は徴兵によりますが古参下士官や上級将校はほぼ全員が職業軍人で構成されています。

 

 ここでもし、「短期間で除隊する徴兵は役に立たない」とするならば、約6カ月の訓練で部隊に配属され、最短2年で辞めていく任期制陸士は一体何のために存在するのかという事になります。

 

 更に言えば予備自衛官補が予備2士に任官するまでの訓練日数は50日。技能公募予備自補に至っては10日しかありません。予備自衛官任官後の訓練も通常は年5日です。即応予備自衛官にしても年30日の訓練で現職の自衛官と同じ任務をこなすことが期待されています。

 

 「徴兵は短期間で除隊するから役に立たない」と言い出せば、そもそも陸士や予備自衛官は全員役に立たないという話になりますし、そんな制度を運用している防衛省自衛隊の見識が問われる事になるでしょう(実際には陸士、予備自衛官即応予備自衛官共に災害派遣等で活躍しています)。

 

 現実にはイスラエルのように徴兵制でありながらも強力な軍隊を維持している国も存在しますし、スウェーデンの様に志願制移行後に人員と質の低下により徴兵制を復活させた国もあります。

 

 というわけで、

 

「現代の兵器はハイテク化されていて徴兵では扱えない」

「軍人が一人前になるには長い年月がかかる。短期間で除隊する徴兵は役に立たない」

 

 は必ずしも事実ではありません。

 

 徴兵が役に立つかは

 

「その国の情勢」

「軍の教育システム」

「教育する職業軍人の質」

「国民の徴兵制に対する理解度」

 

 等々様々な条件に左右されます。

 

 昨年、自衛官候補生の採用が5年連続計画割れというニュースがありましたが、少子化と民間の採用増により今後、急速な景気悪化でもない限り自衛官の募集活動は苦戦を余儀なくされると思われます。

 

 というか、はっきり言って就職氷河期リーマンショック後のように自衛隊が優秀な人材をいくらでも集められた時代はとっくに終わっています。給料を上げたらどうにかなるとか、最早そういう段階ではありません。

 

 我が国が徴兵制を採用することは少なくとも今のところはなさそうですが、それならば実際に戦場に派遣されているアメリカの州兵(パートタイムの兵士で年間訓練日数は約40日)やイギリスの国防義勇軍(民間人を訓練して予備役軍人とするもの。我が国の予備自衛官補制度に近い)を参考にして予備自衛官制度を効率よく運用できるようにするなど、新隊員募集以外の面でも改革を行っていかないと最終的には「戦わずして戦力減耗」みたいな状況になりかねません。

 

 徴兵制を否定するのはそれで構いませんし、筆者も今の日本に徴兵制は不要だと考えています。が、長期的に少子化が続くという我が国の状況を考えて、それでも必要な人員を確保できるだけの施策は考えて行かなければならないと思います。でないと、待っているのはスウェーデンのような「徴兵制の方が合理的」という結末かもしれません。

国会で予備自衛官等制度について取り上げられていました

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 令和元年11月14日の第200回国会参議院外交防衛委員会(第4回)において予備自衛官等制度について取り上げられていました。

 

 発言者は元自衛官佐藤正久議員で、内容としては主に以下の通り。

 

○「労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日基発第150号)」により予備自衛官が公の職務に含まれていないことの問題点。

○海自と空自の予備自衛官が少なすぎる。

災害派遣の実情に応じて建設機械を操作できる予備自衛官を重点的に採用して欲しい。

 

 ちなみに基発第150号について稲津久厚生労働副大臣の回答は「防衛省を通じて予備自衛官の活動状況の実態を把握した上で対応していきたい、速やかに検討してまいりたいと思います」とのこと。

 

※動画はこちらから検索ください。

www.webtv.sangiin.go.jp

当該質疑応答は23分14秒あたりから。

 

※議事録はこちらから検索ください(「予備自衛官」で検索すると出てきます)。

kokkai.ndl.go.jp

 

 なお、「労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日基発第150号)」については以下の弊ブログ記事も参照ください。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 欲を言えば、基発第150号に触れるなら、官公庁が予備自衛官に関わる各種給付金の対象外になっていることにも触れてほしかった。現在、本業が公務員の即応予備自衛官予備自衛官は「即応予備自衛官雇用企業給付金」、「雇用企業協力確保給付金」の対象外なのです。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 労働基準法の解釈については所管が厚生労働省の為、防衛省単独ではどうにもなりませんが、給付金の支給対象については防衛省単独の判断で変更できるためハードルはもっと低かったはず。

 

 ただ、限られた質疑応答の時間を使って予備自衛官について言及して頂いた佐藤議員には公務員の予備自衛官の一人として大いに感謝の言葉を伝えたいと思います。

国民保護等招集とは何ぞや?

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 予備自衛官即応予備自衛官の招集については以下のように区分されています。

 

防衛招集

 

国民保護等招集

 

治安招集(即応予備自衛官のみ)

 

災害招集(即応予備自衛官は災害等招集)

 

訓練招集

 

即応予備自衛官が災害「等」招集となっているのは地震防災派遣や原子力災害派遣の招集対象にもなっているため。

 

 防衛招集については有事(戦時)、治安招集については内乱、災害招集については自然災害と、予備自衛官がどのような状況で招集され、いかなる任務に従事するのかある程度想像しやすいと思います。

 

 では「国民保護等招集」とは一体何なのか? どのような状況で招集され実際に何をやるのか、字面だけではわかりにくいと思います。簡単に言ってしまえば「国民保護等招集」とは「災害招集」の有事バージョンとなるのですが、少しややこしいので根拠法等を参照しつつ説明していきます。

 

 平成16年に「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」が成立しました。これにより軍事攻撃、大規模テロ等から国民を守るため国や地方公共団体が行わなければならない措置等が規定されました。要するに有事に備えて国や地方自治体はあらかじめ計画を作っておきなさいよ、有事の際は国民を守るためにこういうことをしなさいよ、と法律で定めたわけです。

 

 国民保護法の制定に伴い、防衛省も有事に国民保護措置(主に軍事攻撃が対象)、緊急対処保護措置(主にテロ攻撃が対象)が行えるように自衛隊法を改正し「国民保護等派遣」(自衛隊法第七十七条の四)が新設されました。

 

(国民保護等派遣)

第七十七条の四 防衛大臣は、都道府県知事から武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第十五条第一項の規定による要請を受けた場合において事態やむを得ないと認めるとき、又は事態対策本部長から同条第二項の規定による求めがあつたときは、内閣総理大臣の承認を得て、当該要請又は求めに係る国民の保護のための措置を実施するため、部隊等を派遣することができる。

 

2 防衛大臣は、都道府県知事から武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第百八十三条において準用する同法第十五条第一項の規定による要請を受けた場合において事態やむを得ないと認めるとき、又は緊急対処事態対策本部長から同法第百八十三条において準用する同法第十五条第二項の規定による求めがあつたときは、内閣総理大臣の承認を得て、当該要請又は求めに係る緊急対処保護措置を実施するため、部隊等を派遣することができる。

 ※すでに防衛出動、治安出動が命ぜられている場合はその一環として国民保護もしくは緊急対処保護を実施する。

 

 では、武力攻撃事態等は具体的にどのような事態を指すのか。内閣官房の国民保護ポータルサイトでは以下の類型を挙げています。

 

武力攻撃事態

 

●着上陸侵攻

弾道ミサイル攻撃

●ゲリラ・特殊部隊による攻撃

●航空攻撃

 

www.kokuminhogo.go.jp

 

緊急対処事態

 

●危険性を内在する物質を有する施設等に対する攻撃が行われる事態

多数の人が集合する施設及び大量輸送機関等に対する攻撃が行われる事態

●多数の人を殺傷する特性を有する物質等による攻撃が行われる事態

●破壊の手段として交通機関を用いた攻撃等が行われる事態

 

www.kokuminhogo.go.jp

 

 分かりやすく言えば、武力攻撃事態が軍事攻撃、緊急対処事態がテロ攻撃を主に想定しています。このような事態に対し、自衛隊が想定している活動内容は以下の通りです。有事という特性から一部相違点もありますが、活動内容としては災害派遣と重なる部分が多いことが分かると思います。(長崎地本のホームページより抜粋)

 

住民の避難

必要な情報を収集・提供するとともに、関係機関と連携して、避難住民の誘導や運送を実施します。このほか、地方公共団体の長から、住民の避難のために自衛隊の駐屯地・基地内の通行などを要請された場合には、速やかに所要の調整・手続きなどを実施します。

 

避難住民などの救援

人命救助関係(捜索・救難、応急医療の提供など)を中心に、対策本部長などからの求めにより、医療活動の支援(傷病者の搬送など)や、必要に応じて生活支援関係の措置(炊き出し、給水、救援物資の輸送など)や安否情報の収集を実施します。このほか、救援のための、防衛省の施設の使用許可などを行います。 

 

武力攻撃災害への対応

被害状況の確認(モニタリング支援など)、人命救助(捜索・救助、応急医療の提供など)、被害の拡大防止(周辺住民の退避支援、消火など)、NBC攻撃等による危険物質の除去などを実施します。このほか、生活関連等施設の安全確保の支援(指導・助言、職員の派遣)などを実施します。

 

応急の復旧

防衛省の所管する施設および設備の応急の復旧を行うとともに、都道府県知事などからの要請により、危険ながれきの除去や道路や滑走路の応急補修などの支援を行います。

 

www.mod.go.jp

 

 国民保護等派遣は軍事攻撃や大規模テロが発生している(もしくは発生しようとしている)けれど防衛出動や治安出動を命じるほどではないという段階で実施されますので、原発テロ等の特殊な状況でなければ発令されることも無く、予備自衛官が招集される可能性も低いと思われます。

 

 ただ、有事の際は防衛省自衛隊としても敵国軍の撃破に全力を投じるため、特に着上陸侵攻が予想される場合は即応予備自衛官予備自衛官を活用し、住民の避難等の国民保護に当たることが「防衛省・防衛装備庁国民保護計画」でも想定されています。

 

 防衛招集、国民保護派遣を問わず、有事になれば即応予備自衛官予備自衛官が国民保護措置に従事する可能性は高いと思われますので、知識としてどのような活動をするのか知っておくのも良いかと思います。

予備自衛官が災害招集時で生かせる建設機械関係の資格

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※12/24追記 記事投稿後に気が付いたのですが、防衛省予備自衛官制度のホームページに関連資料が公開されていました。まずはこちらをご確認ください。

 

  既に防衛省ツイッターで広報されておりますが、平成30年10月の規則改正により、災害招集中の予備自衛官及び即応予備自衛官による施設機械(重機)の操縦が可能となっています。

 

twitter.com

 

予備自衛官の任免等細部取扱いに関する達 第18条第4項

 災害招集においては、予備自衛官が施設機械操作に係る国家資格を保有し、次の各号に該当する場合、前3項によることなく、災害招集終了までの間、陸上自衛隊の施設機械を操作できるものとする。

(1)施設機械操作に関連する業務に1年以上従事

(2)中隊長等が職務上必要であると認めること

(3)施設科部隊長(施設群長、施設大隊長、施設隊長、施設器材隊長、施設教導隊長及び教育支援施設隊長)が別に示すところにより、施設機械の操作技能を認めた場合

 

 

即応予備自衛官の任免等細部取扱いに関する達 第12条第3項

 災害招集においては、即応予備自衛官が施設機械操作に係る国家資格を保有し、次の各号に該当する場合、前2項によることなく、災害招集終了までの間、陸上自衛隊の施設機械を操作できるものとする。

(1)施設機械操作に関連する業務に1年以上従事

(2)中隊長等が職務上必要であると認めること

(3)普通科連隊長又は施設科部隊長(施設群長、施設大隊長、施設隊長、施設器材隊長、施設教導隊長及び教育支援施設隊長)が別に示すところにより、施設機械の操作技能を認めた場合

 

 というわけで、台風19号に伴う災害派遣では実際に即応予備自衛官予備自衛官が施設機械を操作して災害廃棄物処理や道路啓開等の任務に当たったようです。

 

 それでは、この「施設機械操作に係る国家資格」とは何ぞや? と疑問に思う方もあるかもしれません。公式の情報ではいまいちはっきりしないのですが、恐らく該当するであろう資格について紹介していきたいと思います。

 

車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習

小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育

 

 油圧ショベルユンボ)、バケットローダー、ブルドーザー等の運転や操作をするために必要な資格です(公道を走るには別途、大型特殊自動車免許の取得が必要)。技能講習と特別教育の違いは技能講習が機体重量3トン以上の建設機械を操作できるのに対し、特別教育は機体重量3トン以下と制限が設けられています。ただし、必要な履修時間は技能講習が38時間(約5日)なのに対し、特別教育は13時間(2日)以上と大幅に短くなっています。

 

 教習所についてはコマツやコベルコ等、建設機械メーカーの教習所で受講することができます。料金については例えばコマツ教習所東京センタの場合、技能講習で10,7000円、特別教育で1,7000円です。

 

www.komatsu-kyoshujo.co.jp

 

 なお、技能講習は大型特殊免許を有するなど一部の資格保持者等は講習時間が短縮され、それに伴い料金も安くなっています。もし大型特殊免許も免許を取得しようとしている場合は大型特殊免許を取得してからの方がお得になります。

 

 自衛隊の建設機械の場合、特別教育で操縦できるのは普通科連隊の各中隊等に配備されているミニユンボ位のもので、施設科の持つ大型油圧ショベルになると余裕で3トンを超えています。現場での活躍の幅は技能講習の方が広がるでしょう。

 

 また、建設機械全般に言える事ですが、資格を取っても普段から操縦に慣れている人でなければ現場では全然役に立ちません。逆に土木の仕事に就いている方は取って損になる資格ではないので挑戦してみるのも良いでしょう。

 

不整地運搬車運転技能講習

 

 不整地運搬車を運転するための資格です。不整地運搬車とは何ぞや? と思われるかもしれませんが、自衛隊装備で言えば資材運搬車のことです。

 

 ちなみに車両系建設機械と同じように不整地運搬車運転特別教育もあるのですが、資材運搬車の最大積載量は特別教育で運転可能な制限である1トンを超過しているため、自衛隊で役立つのは技能講習の方になります。

 

大型特殊免許

 

 技能講習や特別教育は現場で建設機械を操作するための資格ですが、こちらは建設機械(但しナンバープレートがついているもの)で公道を走行するための免許です。

 

ラフテレーンクレーン(クレーン操作には別途「移動式クレーン運転士」の資格が必要)などが代表的ですが、バケットローダーや資材運搬車も公道上を走る場合は大型特殊免許が必要です。

 

 取得費用は教習所にもよりますが、普通免許取得者で概ね10万円程度。ただし、各都道府県の運転免許試験場で技能試験(いわゆる一発試験)に合格すれば数千円で取得できる可能性もあります。

 

 大型特殊の一発試験はほかの試験と違ってそれほど難易度も高くないとのこと(試験に使われる車両はバケットローダーが多いようです)なので、普段、仕事で運転されていて腕に自信のある方は挑戦してみるのも手かと思います。

 

 

 以上、紹介してきましたが、この他にも建設機械施工技士、クレーン運転士、フォークリフト運転者、車両系建設機械(解体用)技能講習など、災害派遣の現場において役立ちそうな操作関係の国家資格は数多くあります。

 

 防衛省が具体的にどのような運用を考えているかは、公式な情報が無い為まだ何とも言えませんが、もし、現在の職場に関係ある国家資格でキャリアアップにつながりそうなものがあれば積極的に取得してみてはと思います。

海外の予備役はどれくらい訓練を受けているのか?

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 現在、予備自衛官は年間5日(正確には20日以内)、即応予備自衛官は年間30日の訓練招集を義務付けられています。良く、「年間5日しか訓練を受けていない予備自が有事に何の役に立つんだ」みたいなことを言われたりもしますが、それでは諸外国の予備役はいったい何日ぐらい訓練を受けているのでしょうか。

 

 気になったので、とりあえずウィキペディアと数か国の陸軍のホームページを参考に調べた結果をご紹介したいと思います。ただし、著者は外国語がからっきし駄目なため、グーグル翻訳が頼りです。必ずしも正確な情報とは限りませんので誤りがありましたらご指摘いただけると幸いです。

 

アメリカ合衆国

 

アメリカ陸軍予備役ホームページ

www.usar.army.mil

 

 アメリカ陸軍の予備役は州兵と同じく年間39日の訓練を受けます。訓練日数は月1回の週末訓練と年1回の2週間訓練から構成されているようです。この他に、予備役登録はされているが訓練は受けない予備役も存在します。

 

カナダ

 

カナダ軍ホームページ

www.army-armee.forces.gc.ca

 

 アメリカのお隣のカナダ軍。ウィキペディアの情報ですが一般的な予備役は年間最低14日間の訓練に参加する義務があるとのことです。

 

イギリス

 

イギリス陸軍予備役ホームページ

www.army.mod.uk

 

 イギリス陸軍には通常の予備役と一般人志願者からなる国防義勇軍が存在します。国防義勇軍については軍隊未経験者を訓練し予備役の軍人とするもので、我が国の予備自衛官補に相当する制度と言えます。

 

 陸軍予備役の訓練日数については分かりませんでしたが、国防義勇軍の年間訓練日数についてはウィキペディアの日本語版記事によると、所属部隊により2週間の合宿を含む19日から27日以上の訓練を義務付けられているとの事です。

 

フランス

 

フランス軍予備役ホームページ

https://www.defense.gouv.fr/reserve/devenir-reserviste/integrer-la-reserve-des-armees/integrer-la-reserve-des-armees

 

フランス国民衛兵ホームページ

garde-nationale.gouv.fr

 

 徴兵制の本場(廃止されましたが)、フランス軍です。訓練招集日数の下限については情報がありませんでしたが、フランスの労働者は予備役として活動するため年次休暇とは別に年間8日間(公務員及び中小企業の場合は5日間)、雇用者の許可なく休みを取ることができるとの事です。また公務員については年間30日間、予備役活動の為に有給休暇が取れるそうです(何とうらやましい!)。

 

 以上、各国の制度を見てきましたが、年間約15~40日位の訓練を課しているところが多い印象です。即応予備自衛官が諸外国の予備役に相当するといったところでしょうか。ただ、予備役登録のみで訓練参加義務はない予備役コースがある国もありますのでここら辺は一概には言えません。

 

 意外だったのが軍隊未経験者を訓練して予備役軍人にする制度を導入している国が結構多いこと。上で紹介したイギリスの国防義勇軍の他にフランスの国民衛兵も一般人を対象に予備役軍人を育成しています。また、アメリカ陸軍でも新兵教育終了後にそのまま予備役へ編入されるコースもあるようです。

 

 イギリスの国防義勇軍についてはアフガニスタン対テロ戦争等で実戦に投入され、またフランスの国民衛兵は国内のテロ対策に動員されています。

 

 今年度から一般公募予備自衛官から即応予備自衛官への志願が可能となりましたが、自衛隊の志願者減少に悩む日本では、今後このような人材活用も積極的に考えていかねばならないのかもしれません。

 

 多分、一番のネックは訓練日数の確保になると思います。ここら辺は予備自衛官も20日を上限として何回でも訓練招集を認めたり出来ればなと思います。自衛隊に余裕がないなら隊友会あたりで補備教育になるようなセミナーを実施する等出来ればいいのですが、やはりそう上手くはいきませんかね・・・。

予備自衛官が訓練担当部隊の為に出来る事

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 予備自衛官の招集訓練はコア部隊で行われることもありますが、基本的には通常の部隊で行われることがほとんどです。

 

 訓練担当部隊にとっては年に1回あるかないかの業務な上に、少ない人員で多数の予備自衛官を受け入れなければならないため、結構な負担を生じます。特に都会の駐屯地だと、1個中隊で最大100人近い予備自の面倒を見なければならないこともあり、こうなると着隊だけで現職の隊員は大わらわとなります。

 

 そこで今回は、予備自衛官として訓練招集に参加するに当たり、常備隊員の負担を少しでも軽減するために思いついた事項をまとめてみました。常備自衛官の負担を減らすことが出来れば訓練も円滑に進めることができ、引いては予備自衛官の為にもなります。これから訓練に参加される方は参考にしていただけでば幸いです。

 

初日は早めに着隊する

 

 予備自の招集訓練は5日間の日程で組まれますが、初日は早めに着隊した方が良いです。できれば部隊の受付開始時間直後には駐屯地に到着したいところ。

 

 何故かというと、招集訓練初日は出頭者が非常に多いためです。都会の駐屯地では特に顕著ですが、受付時間ギリギリに行くと受付が出頭者で大混雑しており被服交付を受けるだけで非常に時間がかかったりします。

 

 また、駅やバス停が近い駐屯地だと電車やバスが出頭する予備自衛官で混雑する可能性もあるので(特にバス)やはりなるべく早い時間に出頭することをお勧めします。

 

 早めに行けば、もし被服交付でサイズの間違い等があっても迅速に対応してもらえますし、身体検査の準備も余裕をもってできます。

 

 交通事情等で早めに出頭できない方は仕方ありませんが、受付業務の平準化という観点からもなるべく早めに出頭することが現職、予備自双方の負担軽減になると思います。

 

 なお、通修者の場合、2日目以降はそこまで早くなくても問題ありません。受付が混むこともそれほどないので、前日に達せられた朝の集合時間に間に合うよう余裕をもって集合できれば大丈夫です。

 

編成表を確認する

 

 予備自の招集訓練の場合、臨時の編成表が張り出されます。出頭したらまず自分が所属する小隊、分隊等を確認しておきましょう(編成表の場所が分からない場合は担当部隊の人に聞けば教えてくれます)。

 

 朝礼、終礼や一部の訓練はこの編成表の区分に基づいて行われます。現職自衛官や小隊長、分隊長の予備自衛官も隊員を掌握しようとはしてくれますが、いざ、区分ごとに整列となったときに自分の所属が分からないようなことは出来るだけ無いようにしましょう(「進んで指揮官の掌握下に入る」というやつです)。

 

 また、小隊長や分隊長に指名された方は小隊員、分隊員の氏名階級も同時に掌握しておいた方が良いと思います。別途、編成表を配布してくれる場合もありますが、無い場合もありますのでメモ帳等に書き写しておきましょう(保全上、携帯電話等での写真撮影ではなく手書きで写す方が良いみたいです。これは下記の訓練予定等も同じ)。

 

 技能公募出身の予備自衛官は階級によっては初めての訓練招集でいきなり小隊長や分隊長になる可能性もあります。色々と慣れないこともあると思いますが、定年退官組や長く予備自衛官をやっている人はここら辺の要領は心得ていますので、分からないことがあれば積極的に聞いて頂ければと思います。

 

訓練予定を把握する

 

 編成表と同じく、訓練予定も張り出されます。予備自の訓練では結節ごとに事後の行動を指示されますが、やはり一日の予定ぐらいは事前に掌握しておいた方が遅滞なく行動できると思います。また、訓練予定には服装や携行品等も指示されていますので、あらかじめ準備して集合時間間際に慌てる事の無いようにしましょう。

 

 訓練予定とは別に、訓練区分ごとの編成表が逐次張り出されることもあります。休憩等で時間があれば何か変更点がないか度々確認しておきましょう。特に終礼終了後は明日の予定も含めて確認しておいたほうが良いと思います。

 

最終日の離隊は速やかに

 

 現役の時に勤務していた駐屯地で訓練招集を受けた場合、かつての所属部隊に立ち寄って同期の顔でも見ていこうか・・・というのは良くある話です。これ自体は全く問題ないのですが離隊日にいつまでも駐屯地内に留まってしまうと担当部隊に迷惑をかけてしまう可能性があります。

 

 というのは、担当部隊は離隊する予備自衛官全員が駐屯地を出るまでを営門で確認しているので、いつまでたっても駐屯地内にとどまっている予備自衛官がいると最終的には担当部隊が駐屯地中を探し回る羽目になります。

 

 恐らく、最終日の終礼時には離隊時限が示されると思いますのでその時間までにはちゃんと営門を通過して駐屯地を出るようにしましょう。

予備自衛官等に対する自衛隊法の適用除外

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また、記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 予備自衛官即応予備自衛官予備自衛官補は非常勤の特別職国家公務員という特性上、一般の自衛官が課せられる自衛隊法の規定が一部適用されないようになっています。

 

自衛隊

(適用除外)

第七十五条 第四十一条、第三節、第五十四条第一項、第六十条第二項及び第三項、第六十一条から第六十三条まで並びに前節の規定は、予備自衛官については、適用しない。ただし、第六十一条第一項の規定は、第七十一条第一項の規定による訓練招集命令により招集されている予備自衛官については、適用があるものとする。

 

2 第四十一条、第六十条第二項及び第三項、第六十一条第二項及び第三項、第六十二条、第六十三条並びに前節の規定は、第七十条第三項の規定により自衛官となつている者については、適用しない。

 

(これらの規定は即応予備自衛官予備自衛官補についても準用)

 

 例えば自衛隊法第六十一条は自衛隊員が選挙の候補者になることができないとしていますが、普段は一般社会で暮らしている予備自衛官に対してそのような制限を課すのは適当ではありません。そこで予備自衛官に対しては適用除外としているわけです。

 

 予備自衛官即応予備自衛官は有事に招集されると指定された階級の自衛官となりますが、その場合も第七十五条第二項の規定により同様に自衛隊法の規定が一部適用除外されます。

 

 自衛隊法第六十条、第六十三条では自衛隊員が他の国家機関や地方公共団体等の職員になるには防衛大臣の承認が必要となっていますが、公務員が予備自衛官をやる場合は勿論、招集されて自衛官になった場合でも適用除外の規定があるので兼職の承認申請は不要です。また、招集期間中でも勤務先の国家機関や地方公共団体等から給与を受け取ることが可能です。

 

 以下、予備自衛官等が適用除外により可能とされている項目を挙げると以下の通り。

 

議員、首長の選挙に立候補すること(招集中でも可能。ただし国会議員に当選した場合は国会法第39条の規定により国家公務員との兼職が禁止されているため予備自衛官等になることは出来ない)。

 

政党や政治団体の役員になること(招集中でも可能)。

 

政治活動(ただし訓練招集を含め招集期間中は不可)。

 

営利企業に従事したり役員になること(招集中でも可能。本業を持つ以上当然ですね)。

 

他の国家機関や地方公共団体の職員を兼ね、また給与を受け取ること(招集中も可能)。

 

 このように、いざ有事となっても本業の職場に在籍したまま招集に応じられるよう自衛隊法では配慮されています。これで会社側が無給休暇等で対応するなどしてくれれば招集解除後の心配をすることなく長期の招集にも応じられるのですが、そこらへんはやはり難しいところですね・・・。

台風19号被害による予備自衛官等の招集状況(その3)

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 ニュース等での取り扱いは少なくなりましたが、即応予備自衛官予備自衛官の招集は現在も継続中です。直近の情報では約100名の即応予備自衛官予備自衛官が被災地で活動中との事。

 

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 予備自衛官については司令部勤務要員や医療関係者から更に活動の幅が広がり、第一線部隊で重機オペレーターとして活動している隊員もいるようです。更に幹部、陸曹だけでなく陸士の予備自衛官も招集されています。

 

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 陸上総隊司令部のツイッターフェイスブックでも多くの予備自衛官の活躍が紹介されていますので興味のある方はご覧ください。執筆者はなんと「いざ志願! おひとりさま自衛隊」の著者でライターの岡田真理予備3等陸曹です。

 

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 初めて見たときは驚きましたが、本業がライターなので報道室の勤務はまさに適材適所ではないでしょうか。広報業務に従事されているとの事で、招集期間中のご活躍を祈念したいと存じます。

台風19号被害による予備自衛官等の招集状況(その2)

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 台風被害による予備自衛官等の招集ですが、予備自衛官の招集も開始されています。

 

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 10月23日の段階で約20名の予備自衛官が被災地で活動しているとの事です。

 

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 現在招集されている予備自衛官は弁護士、医師、看護師等の資格を持つ技能予備自衛官と、定年退職した佐官級の幹部予備自衛官が中心の様です。それぞれ司令部や駐屯地業務隊の他、医療職種の予備自衛官については隊員の巡回健診等の業務にもあたるとのこと。

 

 即応予備自衛官については最新の情報は見つけられませんでしたが10月20日の段階で170名が活動中です。

 

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 被災地で活動している即応予備自衛官予備自衛官は当面の招集規模である200人に達したと思われます。関東、東北の各都県においては引き続き即応予備自衛官の招集が行われておりますが、これから先、招集規模を最大1千人まで拡大させるのか、現状のままを維持するのか、状況を見守っていきたいと思います。

台風19号被害による予備自衛官等の招集状況

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 既に第38普通科連隊(多賀城)、第48普通科連隊(相馬原)等のコア部隊が被災地に派遣され、所属する即応予備自衛官が活躍中です。

 

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 10月18日の防衛大臣記者会見によれば17日の段階で82名の即応予備自衛官が被災地で活動中とのこと。またこれから先、予備自衛官から招集される人が出てくるだろうとのことでした。

 

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 当面の予備自衛官等招集規模は200人との事だったので、人数が揃うのを待つよりも即時出頭可能な人員からとりあえず投入したのでしょう。今後、職場との調整等を終えて出頭できるようになった人員が出てくれば逐次増員していく方針かと思われます。

 

 被災地での活動が長期化し、1千人規模の招集となればローテーションも必要となってきますので即応予備自衛官だけでなく予備自衛官にも招集がかかる可能性が大きいと思います。逆に災害派遣活動終了の目途が予定よりも早くなりそうならば予備自衛官の招集は小規模に留まるでしょう。

 

 また、予備自衛官は部隊に所属していないため(平時は各地本に所属)どの様に運用されるかまだ分かりませんが、主な活動が生活支援と想定されていることからコア部隊に編入されて活動する可能性も考えられます。

 

 今後も情報発表等を注視していきたいと思います。

台風19号被害に伴う予備自衛官等招集決定

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 台風19号の被害により即応予備自衛官予備自衛官の招集が決定されました。

 

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 当面200人、最大で1千人規模での招集になるようです。被災地入りは早くて16日になる模様で、既に各地のコア部隊では招集された即応予備自衛官が続々と出頭しているようです。

 

 今回は即応予備自衛官に加え、東日本大震災以来となる予備自衛官の招集も行われるとの事。即応予備自衛官の実員が約4500人もいる中で、なぜ予備自衛官まで招集するのかといった疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、1千人もの招集となればその全てを即応予備自衛官で賄うのは難しいのではないかと思います。

 

 ここ数年、即応予備自衛官災害派遣招集は200人~300人の規模で行われており、恐らく陸自が短期間に動員できる即自の上限もこれに近いのではないかと思います。更に、即自の招集期間は短くて1週間、長くても2週間が限度でありそれ以上は本業に支障をきたす可能性が高いため陸自も短いローテーションで即自を回していかざるを得ません。

 

 特に今回のような1千人規模かつ長期間の活動が予想される事態となると、招集できる即自がすぐに枯渇してしまうのではないかと考えられます(招集期間を長期間にしたり、同じ即自を何回も招集すれば活動維持は可能だが、雇用企業の負担が大きくなるため実際には難しい)。

 

 そのため、1千人規模の招集となった場合でも活動が維持できるように今回、予備自衛官も招集対象としたのではないか・・・というのが私の(特に何の根拠もない)予想です。

 

 まぁ、もしかしたらただ単に予備自衛官災害派遣招集という実績を作りたかったのかもしれませんし、予備自衛官のモチベーション向上のために招集対象としただけかもしれません。

 

 何はともあれ、1千人規模の招集が実現すれば予備自衛官も実際に招集される可能性は十分にあります。現状では情報も少なくこの先どうなるかは分かりませんが、いざというときは「自衛官として責務の完遂に努める」ことができるよう物心両面の準備を整えていきましょう。

陸自施設科と技術系公務員

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 関係者はご存知かと思いますが陸上自衛隊には施設科という職種があります。旧軍では工兵と呼称されていた兵科で、主に土木建築分野を任務とする職種となります。

 

 ユンボ等の建設機械や架橋器材、大型ダンプを保有し、意外なところでは戦争映画などでよく見る火炎放射器陸自では携帯放射器と呼称)も施設科の装備です。

 

 任務によって最前線での陣地構築や地雷原処理及び地雷の敷設、障害物爆破を任務とする戦闘工兵と、後方で橋梁や道路等を構築する建設工兵に分けられます。陸上自衛隊では戦闘工兵については師団、旅団の施設大隊、施設隊が担当し、建設工兵については主に方面隊直轄の施設団が担当しています。

 

 さて、この施設科についてですが、最近南スーダン派遣施設隊の動画をYOUTUBEで見ていて気が付いたことがありました。「あれ? これ民間の建設会社のやってることそのまんまじゃない?」。

 

 動画で紹介されていたのは主に道路整備作業ですが、その他にも排水溝の整備から宿営地のコンテナ宿舎建築まで様々な作業を実施。さすがは自己完結能力を持つ自衛隊と言うべきでしょうか。恐らく日本国内に直営でここまで出来る官公庁は自衛隊以外に存在しないでしょう。幹部自衛官の仕事など、ほぼ民間の施工管理そのままだと思います。

 

 この能力、地方自治体でも生かせるんじゃないか?

 

 現在、インフラの老朽化や多発する自然災害に加え民間企業の好況により技術系の公務員は完全な人員不足に陥っています。正規職員ですら採用試験倍率2~3倍等というありさまの自治体も少なくありません。そのため地方自治体では大規模災害が発生すると、技術系職員の不足を補うため任期付職員の臨時採用を行ったりしています。

 

www.reconstruction.go.jp

 

www.pref.okayama.jp

 

 一方で、令和2年度から延長されるとはいえ自衛官の定年は将官を除けば50代半ばから後半に設定されています。自衛隊を定年退職してから年金が出る65歳までの間、最長10年近くは民間企業等で働かなくてはなりません。

 

 現在、防災・危機管理部門において退職自衛官を雇用している地方自治体が多くありますが、土木建設部門においても施設科出身の退職自衛官が活躍できるのではないでしょうか。

 

 施設科の幹部自衛官は2級土木施工管理技士の取得が必須であり、また陸曹でも建築関係の資格を持っている隊員がいるとのことで、能力を生かせる素地は十分にあると思います。特に人員削減と業務委託により公務員の技術力が低下している今、現場を知っている人間はとても重宝されます。

 

 少なくとも全く違う分野で再就職するよりは、自衛隊で身に着けた知識と経験を生かせるという点でモチベーションも維持できますし、自衛隊とは畑違いと言えど公共の仕事に携わることができるのでやりがいもあるのではないかと思います。また、任期付職員ならば自治体によって差はありますが残業もそれほどありません。

 

 ただ、給与については自治体によって大きな幅があり、経験年数を加味してそれなりの金額をもらえるところもあれば、大学新卒程度以下の給料しか出ないところもあります。そしてこれが最大の問題ですが自治体の任期付職員はおおむね任期が3年~5年のため、安定した雇用とは言えません。

 

 正直、他の就職先に比べてあまりお勧めできるものではありませんが、経験を生かせる点とやりがいがある点については大きな利点であると思います。もし再就職先が60歳で定年の場合は第3の人生として悪くない職場ではないでしょうか。興味のある方はお住まいの都道府県や近隣の市町村ホームページで職員採用情報を調べてみてはいかがかと存じます。