予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

予備自衛官で官公庁にメリットはあるのか?

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。

 

 以前、公務員は兼業許可さえ得ることができれば予備自衛官等に任官することが可能と書きました。

reserve-f.hatenablog.com

 

 それでは、官公庁が職員の予備自衛官等任官を認めると何かメリットがあるのでしょうか?

 

 実は、金銭面については何にもありません。

 

 詳細は以前の記事を見てもらえればわかると思いますが、簡単に説明すると以下の通り。

 

即応予備自衛官雇用企業給付金制度

→官公庁(正確には「国、地方公共団体その他防衛省令で定めるこれらに準ずる者」。以下同)は対象外。

 

雇用企業協力確保給付金制度

→官公庁は対象外。

 

 つまり職員に即応予備自衛官がいても企業給付金はもらえないし、予備自衛官が訓練招集で負傷して入院したり、有事に防衛招集されても補償すら受けられないという事。

 

 では、その他に何かメリットのある支援制度があるのかというと…。

 

総合評価落札方式における予備自衛官の評価

→そもそも官公庁は発注者側なのでメリットはない。

 

予備自衛官等協力事業所表示制度

→官公庁にとって利用するメリットが薄い。

 

雇用主に対する情報提供制度

→便利と言えば便利だが、そもそも従業員の中に多数の予備自衛官を抱えている企業(大手警備会社とか)にとってメリットが大きい制度である。官公庁にそれほど利点はない。

 

 …という有様で、身も蓋もない言い方をすれば、官公庁にとっての予備自衛官等制度というのは「負担ばかりで民間企業ならば受けられるはずの給付金や補償すら受けられない制度」(まぁ、軍の予備役制度というのは本来そういうものなんですが)となっております。

 

 防衛省からすれば、給付金の本旨は予備自衛官の訓練や招集で営利企業が負う負担を軽減するという意味合いなので、営利を目的としない官公庁は給付金の対象ではないという考え方なのでしょうが、それならば独立採算制の非公務員型地方独立行政法人地方公営企業ぐらいは支給対象でも良いでのはないかと。

 

 公務員の予備自衛官が1300人(平成24年度と少し古いデータですが)もいるのですから、もう少し何とかならないものかと思います。

 

 そこで、防衛省の支援制度以外で官公庁にとって職員が予備自衛官をやるメリットを2つほど挙げてみました。

 

現場の予備自衛官との交流

 災害発生時には国家公務員、地方公務員問わず自衛隊災害派遣部隊と連携の元、業務に取り組む場面が出てきます。しかしながら、現在、一般の公務員が第一線部隊の自衛官と接することのできる場所は非常に限られてます。そこで、予備自衛官として訓練を受けることにより、部隊の自衛官と顔の見える関係を構築し、有事の際に生かすことができるようになるでしょう。特に地方公務員にとっては、勤務する自治体を警備隊区とする部隊は防災訓練等で日常的にも接点があるので、メリットはより大きくなると思われます。

 

スキルアップの場としての活用

 予備自衛官等の訓練においては災害用の人命救助システムの操作や、心肺蘇生法等の課目等、様々な内容が含まれています。普段と異なる環境下で訓練を受けることによって、新たな着眼点の発見や、これまでになかった発想が生まれるなど、職場の活性化が期待できる点は多々あります。また、訓練の一環として都道府県レベルの総合防災訓練への参加や、災害派遣経験のある隊員から様々なノウハウを学ぶ機会もあり、官公庁職員としての危機管理能力の向上も見込まれます。南海トラフ地震東海地震等、防災の重要性が国、地方自治体問わず叫ばれる現在、予備自衛官は職員のスキルアップの場としても活用できます。

 

 防衛省の予備自ホームページには、予備自衛官を雇用するメリットについて

 

 予備自衛官は、自衛隊で培った規律心や責任感等を職場に活かし、協調性や実行力をもって日々の業務にあたります。また、毎年の訓練に参加することで、これらの資質を磨き、維持しますので、企業における人材育成にも役立ちます。

 

 予備自衛官を雇用してくださることは、企業として「国防への貢献」「地域社会への貢献」を果たすことになり、イメージアップ・PRにつながります。また、予備自衛官の存在が、職場の活性化に結びつき、予備自衛官の定期的な訓練への参加は、社員の健康管理・社員教育にも資することとなるでしょう。

 

と紹介されていましたが、抽象的すぎるので公務員として具体的なメリットを出来るだけ入れて書いてみました。もし公務員で予備自衛官をやりたいと考えている方がいましたら、上司を説得するときにでも参考材料にしていただければと思います。