予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

陸自施設科と技術系公務員

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また、記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 関係者はご存知かと思いますが陸上自衛隊には施設科という職種があります。旧軍では工兵と呼称されていた兵科で、主に土木建築分野を任務とする職種となります。

 

 ユンボ等の建設機械や架橋器材、大型ダンプを保有し、意外なところでは戦争映画などでよく見る火炎放射器陸自では携帯放射器と呼称)も施設科の装備です。

 

 任務によって最前線での陣地構築や地雷原処理及び地雷の敷設、障害物爆破を任務とする戦闘工兵と、後方で橋梁や道路等を構築する建設工兵に分けられます。陸上自衛隊では戦闘工兵については師団、旅団の施設大隊、施設隊が担当し、建設工兵については主に方面隊直轄の施設団が担当しています。

 

 さて、この施設科についてですが、最近南スーダン派遣施設隊の動画をYOUTUBEで見ていて気が付いたことがありました。「あれ? これ民間の建設会社のやってることそのまんまじゃない?」。

 

 動画で紹介されていたのは主に道路整備作業ですが、その他にも排水溝の整備から宿営地のコンテナ宿舎建築まで様々な作業を実施。さすがは自己完結能力を持つ自衛隊と言うべきでしょうか。恐らく日本国内に直営でここまで出来る官公庁は自衛隊以外に存在しないでしょう。幹部自衛官の仕事など、ほぼ民間の施工管理そのままだと思います。

 

 この能力、地方自治体でも生かせるんじゃないか?

 

 現在、インフラの老朽化や多発する自然災害に加え民間企業の好況により技術系の公務員は完全な人員不足に陥っています。正規職員ですら採用試験倍率2~3倍等というありさまの自治体も少なくありません。そのため地方自治体では大規模災害が発生すると、技術系職員の不足を補うため任期付職員の臨時採用を行ったりしています。

 

www.reconstruction.go.jp

 

www.pref.okayama.jp

 

 一方で、令和2年度から延長されるとはいえ自衛官の定年は将官を除けば50代半ばから後半に設定されています。自衛隊を定年退職してから年金が出る65歳までの間、最長10年近くは民間企業等で働かなくてはなりません。

 

 現在、防災・危機管理部門において退職自衛官を雇用している地方自治体が多くありますが、土木建設部門においても施設科出身の退職自衛官が活躍できるのではないでしょうか。

 

 施設科の幹部自衛官は2級土木施工管理技士の取得が必須であり、また陸曹でも建築関係の資格を持っている隊員がいるとのことで、能力を生かせる素地は十分にあると思います。特に人員削減と業務委託により公務員の技術力が低下している今、現場を知っている人間はとても重宝されます。

 

 少なくとも全く違う分野で再就職するよりは、自衛隊で身に着けた知識と経験を生かせるという点でモチベーションも維持できますし、自衛隊とは畑違いと言えど公共の仕事に携わることができるのでやりがいもあるのではないかと思います。また、任期付職員ならば自治体によって差はありますが残業もそれほどありません。

 

 ただ、給与については自治体によって大きな幅があり、経験年数を加味してそれなりの金額をもらえるところもあれば、大学新卒程度以下の給料しか出ないところもあります。そしてこれが最大の問題ですが自治体の任期付職員はおおむね任期が3年~5年のため、安定した雇用とは言えません。

 

 正直、他の就職先に比べてあまりお勧めできるものではありませんが、経験を生かせる点とやりがいがある点については大きな利点であると思います。もし再就職先が60歳で定年の場合は第3の人生として悪くない職場ではないでしょうか。興味のある方はお住まいの都道府県や近隣の市町村ホームページで職員採用情報を調べてみてはいかがかと存じます。