予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

国会議員と予備自衛官

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 第209回国会で立憲民主党の櫻井周衆議院議員予備自衛官について質問主意書を提出されています。

 

 詳細は以下参照(質問第2号)。

 

www.shugiin.go.jp

 

 一つ目は予備自衛官等の定員割について政府は広報を充実させるべきではないか、というもので、政府の回答は現行の施策を並べたもの。

 

 二つ目は国会議員が予備自衛官等に登録出来ないことを問題としたものですが、これは国会法の規程によるものであり、同法の所管は衆参両議院であるため政府としては答える立場にないとの事(要するに国会議員が予備自衛官等になりたいんだったらそっちで法律を変えてくれという意)。

 

国会法第三十九条

 議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣内閣官房副長官内閣総理大臣補佐官副大臣大臣政務官、大臣補佐官及び別に法律で定めた場合を除いては、その任期中国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。ただし、両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は、この限りでない。

 

 ちなみに戦前は現役軍人(貴族院のみ。但し行事等以外ではほぼ登院せず)・予備役軍人たる国会議員も存在していましたが、軍の議会不介入という観点から衆議院議員の場合は召集されて現役軍人となった場合は失職する規程があったため、先の大戦ではこれに対応するために「衆議院議員ニシテ大東亜戦争ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタルモノノ補闕及復職ニ関スル法律」が昭和18年に施行されています。これは召集に伴い失職した衆議院議員について補欠選挙を行わず、衆議院議員の任期中に召集解除された場合は復職できると定めたものです。

 

 もし、国会議員にも予備自衛官等の任官を認めるのならば、招集された予備自衛官等が国会議員の職を兼ねるというのは望ましいと言えませんので、同様の法令を整備し、一時的に失職する等の措置をとれるようにするのが適切だと思います。

充足率低下と予備自衛官等制度

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 激戦が続くウクライナ情勢ですが、ウクライナ軍では正規軍だけでなく領土防衛軍(Сили територіальної оборони Збройних сил України)も戦闘や後方支援に参加しています。領土防衛軍とは平時に予備役や民間人を訓練し、有事の際に動員するもので、隣国のポーランドやイギリスでも同様の制度を採用しています(ポーランド領土防衛軍、イギリス国防義勇軍)。

 

 現代戦に俄か仕立ての兵隊は役に立たないと言われてきましたが、ウクライナ軍では予備役や民兵を効果的に運用できているようです。

 

 一方で、有事に予備自衛官等を効果的に運用できるのか疑問なのが防衛省自衛隊です。現職自衛官と同様の任務に当たる即応予備自衛官の充足率は50%近くにまで落ち込んでいます。予備自衛官については7割近い充足率ですが、訓練日数は基本的に年5日のみ。予備自衛官補についてもせっかく予備自衛官に任官したものの、仕事の都合やモチベーションの問題で数年で退職していく人も多いと聞きます。

 

 こんな状態で災害招集はともかく実際に有事となったら役立つのか、現状でははなはだ疑問でしょう。即急なる改革が望まれます。

 

 最も、このような状態なのは防衛省自衛隊だけの問題ではありません。まず充足率の問題から言えば、そもそも即自のように年間30日の訓練を受けるというのが現代日本社会では難しいという点が挙げられます。

 

 即自は訓練参加の為に年4~6日は平日の休みを取らねばならず、災害時には本人と雇用企業の同意によるとは言え1~2週間の災害招集で突発的に仕事を抜ける可能性があります。また万が一有事となれば数カ月から年単位の防衛招集がかかる可能性もあるわけです。

 

 自衛隊側も雇用企業に対しては即自一人に対し年間約50万円の給付金を出してはいますし、実際の招集となれば別途補償金が支払われますが、防衛問題に特段関心があるわけでもない経営者からしてみれば「割に合わない」というのが正直な所でしょう。

 

 結果として予備自衛官等(特に即自と予備自補)をやりたいと思っている人がいても仕事の都合上出来ないという人が多く発生してしまう訳です。

 

 これについては「消防団等充実強化法」(公務員が消防団との兼業を申請した場合、任命権者は原則認めなければならいと共に民間事業者に対しても従業員が消防団に加入、活動する際には出来る限り配慮すべきと定めたもの)のような立法的な対策が考えられますが、恐らく現代の日本でこれをやろうとすると色んな所から反対の声が上がると予想されるため、直近で実現する可能性は低いと思います。企業に対する給付金を上げるという手もありますが、これも昨今の厳しい財政事情では望み薄です。結局の所、防衛省自衛隊の長期的な広報、国民への制度周知に期待していくしかないでしょう。

 

 また、モチベーションの問題としては、予備自衛官の訓練日数が年5日と少なすぎるという点が挙げられます。さすがにこれだけでは練度の向上など不可能で、せいぜい次の訓練までに教育されたことを忘れないようにするのが精一杯となってしまします。これではモチベーションが上がるわけありません。かといって即応予備自衛官に志願しようとすれば年間訓練日数は一気に30日まで増えてしまい、ハードルが高い。

 

 そもそも予備自については本来年間20日以内の訓練招集と定められているのですから、訓練を受けたい人は上限まで受けさせることが出来たらと思いますが、予算や訓練担当部隊の受入能力の問題もあり難しいのでしょう。

 

 例えばもし仮に、予備自の訓練日数を現在の倍の10日にしたとした場合、単純に考えて訓練担当部隊の負担も2倍になるという事になります。その分、現職自衛官の訓練計画に影響が出てしまう訳で、現状では自衛隊の予備自に割ける資源はこれが限度なのだと思います。

 

 政府は防衛費をGDP比2%に増額するとの方針を打ち出していますが、そもそも予算優先度の低い予備自がこの恩恵を受けられるのか。余り期待は出来ますまい。

 

 要するに、予備自衛官等制度をより良いものに変えていこうとしても、定員割れしており、雇用企業の負担は増やせず、予算は無く、予備自の教育に割ける自衛隊の人的資源も限られている、という状態になるわけです。特に定員割れの問題は結構重大で、防衛省が「予備自衛官等の数を増やしたい」と予算要求しても、財務省から「定員を増やしても志願者が来なければ意味ないでしょ」と一蹴されてします

 

 充足率を上げる方法として、本業に対する負担を軽減し、なおかつ訓練を通じたモチベーション向上を図るという着眼が重要になると思います。例えばコア部隊(常備隊員と即応予備自衛官からなる部隊。平時は少数の隊員しかいないが、有事には即自を招集して任務に就く)に予備自衛官を所属させ、年間20日内の範囲で即自と共に訓練を受けさせるという方法が考えられるでしょう。

 

 即自の場合は30日間の訓練に出頭しなければなりませんが、コア部隊に所属する予備自に関しては5日以上、20日以内で可能な限り(土日だけでも)出頭してくれれば良いとすれば、仕事との両立も比較的容易でしかも練度の高い予備自の増加につながるでしょう(但し災害招集については即自の希望者を優先させる)。また、現在では一般公募予備自が所定の訓練を受けたうえで即応予備自衛官に任官することも可能ですが、これらについても教育修了後に即応予備自衛官になるか、予備自衛官としてコア部隊に勤務するか選択できるようにすれば、公募予備自衛官からの志願者増加も見込めると思われます。一般予備自補が予備自衛官任官後にモチベーションが低下して辞めてしまうという事態も減少させられるでしょう。

 

 また、予備自衛官の招集訓練では今までの現職自衛官予備自衛官を教育する方法に加えて予備自衛官予備自衛官を教育するというのも考えてみては良いのではないかと思います。予備自衛官の中で常備自衛官として一定の経験がある者、若しくは所定の訓練を受けたものに対し資格を付与し、招集訓練時に予備自衛官の教育に当たらせるわけです。定年退職組を活用するのが一番容易かと思いますが、若い世代の予備自衛官についても別途集合教育を行えば活用できるのではないでしょうか。警備訓練等の指導はある程度時間を要するかもしれませんが、基本教練や射撃予習は時間をかけずとも十分可能だと思います。予備自衛官の能力向上を図れる上に常備隊員の負担も減らすことも出来き、訓練日数の増加にも貢献できます。ちなみに前述のウクライナ領土防衛軍でも退役軍人が訓練教官として参加しているそうです。

 

 これにより従来の5日間訓練に加えて週末を利用した2日間訓練を隔月でも実施出来れば訓練が短期間に反復されることによって内容も定着しやすくなり、年1~2回訓練を受けるだけに比べて効率的な練度向上が見込めると思います。

 

 今回は充足率と絡めて予備自衛官の訓練の話をしてみました。よく聞く、一般予備自補上がりの予備自がモチベーションを保てなくなって辞めてしまう理由も、予備自衛官の訓練内容がいまいち充実していないという点が挙げられると思います。訓練内容が充実していると、練度が向上すると同時にモチベーションも上がり、充足率の向上につながりやすい。上記の他にも、例えばeラーニングの活用(予備自衛官補では既に導入しているようですが)など、訓練機会を増やす方法は色々あると思います。防衛省自衛隊には既存の制度にとらわれず多様な訓練機会の提供を進めてもらいたいと存じます。

即応予備自衛官のD、F訓練って分割可能だったのか?

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 2022年度版予備自衛官パンフレットがホームページで公開されております。

 

www.mod.go.jp

 

 内容自体はほぼ例年通りですが、気になった点が一つ。

 

 12ページに訓練日程の一例として休業日を活用した出頭(Aさん)と休業日と休暇を活用した出頭(Bさん)が載せられていますが、Aさんの方は4日間訓練であるD訓練、F訓練を直近の土日2回に分けて出頭しています。

 

 即自の訓練出頭で一番問題となるのは3日間のE訓練×2、4日間のD訓練、F訓練です。E訓練は三連休等を上手く活用すれば何とかできるのですが、D訓練、F訓練についてはどうしても仕事を休まなければならないのです。

 

 もしこれが2日間ずつ分割できるとなれば訓練出頭の難易度も大きく下がります。昔、私が即自をやってた頃は基本的にD、Fの分割は出来なかったと思うのですが、今は運用も変わってきているみたいですね。

 

 ただ、実際に問い合わせてみたら部隊によっては出来ないとか言われたりすることもよくあるのが自衛隊という組織なので、細部確認したい方はまず地本に連絡です。

 

 あと、予備自衛官補(一般)の教育訓練招集にeラーニングが導入されたとの事。「約5日/50日の出頭を効率化」(5日分の訓練をeラーニングで出来るということか?)らしいです。こういう取り組みは是非、他の訓練でも進めて行って欲しいですね。

予備自衛官等制度がウクライナ侵攻から学ぶべき点は色々とあるはずだが・・・

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 ロシアによるウクライナ侵攻について、予備自衛官としての見地から興味深い記事が幾つも見られます。

 

www3.nhk.or.jp

 

warontherocks.com

 

www.defenseone.com

 

(下二つの記事は英語ですが自動翻訳を使えば概ね理解できると思います)

 

 一つ目の記事で分かるように、既に台湾政府・軍はウクライナ侵攻を参考に予備役制度の強化に取り組んでいます。また、二つ目の記事はウクライナ領土防衛軍(予備役)の活躍を参考に台湾の領土防衛をどのように取り組んでいくかという内容です。

 

 三つ目の記事はウクライナがドローンや操縦経験者を募集しているという内容で、ウクライナでドローンをどのように活用できるかという具体案を例示しています。

 

 以下、筆者の個人的な感想です。

 

 今後は自衛隊の人材不足も深刻化していくと思われます。従って民間の方がレベルの高い分野については公募予備自衛官制度を通じて人材を確保していくという方法もあるのではないかと思います。

 

 サーバー防衛分野について防衛省予備自衛官の活用に熱心なようですが、ドローンの分野についても技能公募予備自衛官の対象とすべきでしょう。ドローンについてはちょうど国家資格創設も予定されているので良いタイミングではないかと思います。

 

 同時に、即自と予備自の混成運用も進めていくべきでしょう。現在の運用では即自と予備自は全く切り離された状態で、一緒に訓練する事もほぼありません。技能公募予備自衛官の中にはコア部隊で即自と一緒に運用すれば価値が発揮できる職域(前述のドローンなどもし実現できれば特にそうでしょう)がありますので、希望する予備自衛官についてはコア部隊に所属させ、年間20日の法定枠内で訓練を受けさせるのも良いのではないかと思います。

 

 また、現在の予備自衛官等制度では5日しか訓練がない予備自と30日の訓練に出頭しなければならない即自の二つしかなく、両極端な状態です。元自衛官予備自衛官についてはコア部隊に所属させ、5日~20日の範囲内で訓練に参加できるようにしてみても良いと思います。

 

 即自のように年間30日必ず出頭しなければならないとなると志願する人間も少なくなりますが、5日から20日の範囲内で可能な限り来てくれたら良いとなれば、志願しようという人間も多いのではないでしょうか。

 

 台湾のようにいきなり訓練日数を倍にするのは日本では難しいと思いますので、柔軟に参加できる体制を作ることが、充足率と練度向上に繋がるのではないかと思います。

予備自衛官等関連資料 任期制自衛官退職時進学支援給付金支給要綱の試行について(通 達)(令和3年3月31日防人計(事)第91号 一部改正 防人計(事)第139号 令和3年6月1日)

 任期制自衛官退職時進学支援給付金(退職任期制自衛官を対象とした給付型奨学金)に関する支給要領についての通達。

 

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/2020/az20210331_00091_000.pdf

 

 特に目新しい情報は無いが、「担当地方協力本部の長は、給付金の受給を希望する年度の前年度の6月末日までに給付金請求者から支給申請書を提出させる」や、「定期試験を終了した都度「成績を証明する書類」を、大学を卒業したときは「卒業を証明する書類」を、速やかに、担当地方協力本部の長に提出」する等、支給実務に関する内容が記載されている。支給申請書の雛形もあるので興味のある方は参照して頂きたい。

 

 例えば、陸自で4月入隊の任期制隊員が1任期で辞めてすぐに大学進学を考えている場合は、入隊2年目の6月末日(あくまで地本の受付期限なので、実際にはもっと余裕を見て営内班長等に相談した方が良い)には申請書を提出しなければならないことになる。これが期限に間に合わないとせっかく大学に進学しても1年生の間は給付金を受けられないことになってしまう。要注意だ。

ウクライナ義勇兵募集と戦後日本の義勇兵

※記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 前回記事で紹介した在日ウクライナ大使館の義勇兵募集については公式ツイッターから削除されました。その後、ボランティアを募集するツイートが上がったものの、これも短期間で削除されたようです。

 

 既に外務大臣内閣官房長官からウクライナ全土に退避勧告が出ているため志願しないようにとの呼びかけがなされていたことから、恐らく在日ウクライナ大使館も日本政府の意向に従ったものと考えられます。

 

 ネット上では義勇兵参加について「国が行くなと言っているのだから行くべきではない」、「ロシアと無用な対立を起こすな」、「もし捕虜となって経済制裁解除と交換条件にされる人質になったらどうするのか」等の意見も見られました。

 

 さて、実は戦後、日本人が他国で義勇兵として戦った例というのは少なくありません。

 

 代表的なのは終戦直後から1949年まで続いたインドネシア独立戦争です。現地駐留の日本軍のうち脱走した日本兵約一千人が独立戦争に参加。オランダ軍と戦火を交えています。当時は独立派への協力が連合軍に禁止された状況で、日本人の引き上げにもどう影響するか分からず、日本の国際的立場を危うくする可能性もありましたが、それでも多くの元日本兵インドネシアの独立の為に戦い、斃れました。

 

 戦後、インドネシアへ日本企業が進出し始めた頃、その橋渡しとなったのは彼ら残留日本兵でした。インドネシア政府は独立の為に戦った元日本兵を忘れることなく、英雄墓地に埋葬したり、勲章を授与するなどの待遇を与えています。戦後の日本・インドネシア関係の礎となったのは間違いなく彼らだと言えるでしょう。

 

 また、ベトナムでも多くの元日本兵が残留しベトミンに協力しフランス軍と戦っています。

 

 彼ら残留日本兵は様々なリスクを踏まえたうえで義勇兵として戦争に身を投じました。結果論にはなりますが、その行動は現地国と日本の絆となり、戦後日本にとって良い結果になったのではないかと思います。

 

 日本政府はベトミンに参加して戦死した井川省元少佐に対して勲五等瑞宝章を授与。平成27年には当時の安倍晋三首相がインドネシア独立戦争で戦った日本人の墓前に献花しました。

 

 ウクライナ義勇兵について色々と言われておりますが、その賛否はともかくとして、この問題を考える上で戦後の日本人がどのようにして海外で戦い、どのような結果につながったのか知るのも有意義ではないかと思います。

在日ウクライナ大使館の義勇兵募集について

※記事の内容は投稿日現在のものです。また、筆者は外国語が不得手である為、間違いがある可能性もあります。その場合はコメントにて指摘いただけると助かります。

 

 ロシア軍のウクライナ侵攻に伴い、在日ウクライナ大使館がツイッターでボランティア(義勇兵)を募集しています。

 

 

 

 募集条件は「自衛隊経験など、専門的な訓練の経験」等という事です(他にも条件はあるみたいだが公式に出されている情報はこれだけ)。

 

 さて、この義勇兵募集に関してネット上では色々な情報が飛び交っています。曰く・・・。

 

  • 義勇兵は非正規兵なので捕虜になって拷問されたり処刑されても文句は言えない。

 

 

  • 義勇兵になることは私戦予備及び陰謀罪(刑法第93条)に該当し逮捕される。

 

 とりあえず、説明しますと今回募集がかけられているのはウクライナ領土防衛軍(Territorial Defence Forces メディアによって領土防衛部隊、領土防衛隊など表記の差異有)の外国人軍団要員です。

 

 領土防衛軍とは軍人および民間人志願者(パートタイムの兵隊)から構成される予備役部隊で、ウクライナの行政地区ごとに編成されています。ネット上では制度の詳細までは調べられなかったのですが、ウクライナ領土防衛軍を参考に設立されたポーランド領土防衛軍について以前調べた記事がありますので興味ある方はそちらを参照して下さい。我が国で言うと予備自衛官補制度が近いでしょうか。

 

 今回の義勇兵募集は、この領土防衛軍に外国人が参加できる部隊を設立するということらしいです。

 

 領土防衛軍はウクライナ政府軍の正式な部隊であり、私的な民兵組織ではありません。外国人が参加した場合は領土防衛軍の正式な兵士として登録されるであろうことから、傭兵扱いされて捕虜の待遇を受けられないということはありません。また義勇兵といえども交戦資格者の条件を満たせば捕虜となる権利を持つことになりますので捕まったらいきなり銃殺されるなんてこともありません(ロシア軍や親ロシア派が国際法を守れば・・・の話ですが)。

 

 さらに、義勇兵になると私戦予備及び陰謀罪(刑法第93条)に該当し逮捕されるという点ですが、これは令和元年にイスラム国に参加しようとした大学生らに対して適用されたことが念頭にあると思います(ただし最終的には不起訴処分)。

 

 この刑法93条については判例等もなく義勇兵に志願することが該当するかどうかは分かりません。但し、これまで何人もの日本人がフランス外人部隊アメリカ軍に入隊し、実戦を経験してきたにもかかわらず摘発された事例がないという事を考えると、今回のウクライナ軍の件だけを取り上げて罰するというのは如何なものかと感じます。

 

 ウクライナ政府とは関係なく勝手にロシアと戦いに行くとかならまだ適用出来る余地はあると思うのですが、今回募集しているのはウクライナ政府軍が運用する正式な部隊です。

 

 ただ、この法律は判例がないだけに幅広い解釈で運用が可能であるとも言え、国の方針により一気に締め付けが厳しくなる可能性もあります。

 

 前述のイスラム国の場合は放置すれば日本の国益を大きく毀損するため逮捕という決断を下したと考えられます。一方でフランス外人部隊にしろアメリカ軍にしろ基本的には日本の友好国であり、その軍隊に日本人が入隊して戦闘に参加しても実害はないと政府が判断し放置されていただけとも考えられるのです。

 

 よってもし今の政府が、ウクライナの戦争に日本人が参加してロシアに必要以上の刺激を与えたくないとか、とりあえず外交的トラブルになりそうな活動は一切させたくない等と考えた場合は、志願者に対する何らかの干渉もしくは取り締まりが行われる可能性もあるでしょう。一方でさしたる影響もないと考えれば容認される可能性が高いと考えられます。

 

 最後に在日ウクライナ大使館が日本国内で義勇兵を募集することの可否についてですが、既に在日フランス大使館がホームページで外人部隊の募集要項を掲載しているという例があり、日本政府はこれを特に問題としていません。

 

 前述の通り、今回の募集は義勇兵と銘打ってますが、実態はフランス外人部隊と同様に、ウクライナ軍の正規要員の募集です。これが傭兵の募集となると問題になる可能性はありますが(ウクライナは「傭兵の募集、使用、資金供与及び訓練を禁止する条約」の批准国)、今回はそうではありません。

 

 とは言ったものの、正直なところ日本政府のさじ加減一つで可にも不可にもなると考えられます。国内法的に問題が無くとも日本政府から“自粛”を要請された場合、在日ウクライナ大使館としても従わざるを得ないでしょう。何かあれば在日ウクライナ大使館の公式ツイッター等に情報があがると思われますので興味のある方は今後の動きに注目です。

昔の予備自衛官、今の予備自衛官

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 近年では災害時に即応予備自衛官が招集される機会も増えておりますが、一方で余り活用されていないと思えるのが予備自衛官です。

 

 予備自衛官が招集されたのは以下の通り。

東日本大震災

・令和元年台風19号

・新型コロナウィルスの感染拡大防止に係る災害派遣(技能公募予備自のみ)

・令和2年7月豪雨

 

 事例としてはそれなりに挙げられるのですが、そのほとんどは管理業務や技能公募予備自による医療支援であり、令和2年7月豪雨まで即自のような一定数を集めて被災地における活動に投入されることはありませんでした。

 

 令和2年7月豪雨についても即自が300名の招集に対して予備自は48名(技能公募予備自除く)と6分の1以下の人数です。

 

 やる気のある予備自衛官からしてみれば「もっと予備自衛官を活用して欲しい」と思うかもしれませんが、このような状態であるのは予備自衛官自衛隊側から戦力として不安があると判断されているからではないかと思います。これは年間訓練日数が5日間しかないからという理由だけではなく、昭和から平成初期にかけての予備自衛官がどのようなものであったかが大きく影響しています。

 

 制度発足当時(昭和30年代)の予備自衛官訓練は、招集中の外出不可、夜間行軍、戦闘訓練は当たり前という現在と比べると厳しいものでした。それが時代を下るにつれて形式的になっていき、平成初期にはとんでもない状態になっていきます。

 

 以下、元自衛官の大宮ひろ志氏による「そこが変だよ自衛隊!〈Part2〉」(光人社 H14-11)からの引用です。

 

 なにせ予備自衛官の訓練ときたら、やる気のない現役以上に酷い有り様で、とても自衛隊とは思えないのだ。

 とくに酷いのが五日間のうちに一回はやるように義務付けられた戦闘訓練で、まだ欠片ばかりの真面目さが残っていた二〇代前半の頃、戦闘訓練では当たり前の動作をしたおかげで、まわりの隊員から笑われてしまったことがある。

 遮蔽物から駆け出し、また次の遮蔽物に飛び込んで伏せる。

 この一連の動作を早駆けというが、僕が現役当時にやっていたように、遮蔽物の陰に飛び込んだときだった。隣から同じ予備自衛官のおっさんの声が聞こえてくる。

「大宮君、なにやってんの」

 訓練中にも関わらず、まるで世間話でもするかのような、その声に振り向くと、あろうことかそのおっさんは、遮蔽物の陰にも隠れようとはせず、のほほんとウンコ座りしているではないか。

「えっ」

 呆気に取られた僕が周りを見回すと、状況中にも関わらず伏せていないのは、このおっさんばかりではない。

 僕以外の全員が、隠れようともせず、「堆土」と呼ばれる土饅頭のところにしゃがんでいるだけなのだ。

 戦闘訓練をおこなう十数名のなか、たった一人、地面に伏せた僕を見た予備自のおっさんは、「いやー、若い人は元気だなあ」などと、訓練中にも関わらず堂々と私語を交わしはじめる。

 オイオイ、これを果たして戦闘訓練というのか。これじゃ単なる儀式だよ。戦争ごっこ以下だよ。

 

 

 これだけで暗澹たる気分にさせられますが、課業外でも酷い事になっています。

 

 消灯時間をとうに過ぎ、夜中の二時過ぎまで酒をかっ喰らいガヤガヤとやっていても、まるで腫れ物にでも触るかのように注意されるだけ。

 これが現役なら、当直陸曹が吹っ飛んできて気合の一つでも入れるところである。

 

消灯時間を過ぎて酒を飲むのは、まだかわいいほうで、中には、訓練途中で勝手に自宅に帰ってしまったり、外出届けも出さずに、勝手に外の飲み屋に出かけてしまうのもいる。

 

 では、何故このような状態が罷り通るようになったかというと、以下のような事情があったからです。

 

 召集訓練初体験の僕が、あとでこの酒宴が問題にならないか心配すると、酒で顔を真っ赤にしたおっさんが御高説を説きはじめる。

「いいんだよ。あんまり現役の奴らがうるさく言うようだったら、こんどの召集訓練はもう出ねぇ、とか、今回の召集訓練は最低だったとか、最終日にわたされる所見用紙にボロクソ書いてやりゃいいだけだからな」

 そう、予備自衛官を受け入れる側も、あとでこういう形で復讐されるから、まともな規律を要求したり、厳しい訓練ができないのである。

 

 勿論、現在の予備自衛官訓練でこのようなことは無く、当時と比べて規律も厳しくなり、訓練にも真面目に取り組むようになりました。また予備自衛官補制度が創設されたことも相まって予備自衛官の質は向上しています。訓練途中で勝手に帰ってしまうような予備自衛官もいません(と信じたい)。

 

 但し、このような予備自衛官制度の過去を自衛隊側も、また予備自衛官側もいまだに引きずっています。現在の自衛隊上層部はかつて部隊の訓練担当者としてこのような予備自衛官と接してきた方々です。現在の予備自衛官が昔とは違うとはいえ、有事に「使える」とは思っていないでしょう。そして残念ながら未だに「お客様扱い」に慣れ切った予備自衛官がいることも事実です。

 

 予備自衛官に対する印象を払拭するためには、有事に必要とされる練度を維持するため一定の基準を設け、即応予備自衛官と同じような訓練を受けさせれば良いのですが、そうなると多分、訓練に耐えられなかったり、仕事等の兼ね合いなどから予備自の退職者が続出し制度が成り立たないという事態になります。

 

 即応予備自衛官制度もこの玉石混淆状態の予備自から年間30日の訓練に出頭できる人間を抽出して有事にも使える部隊を作ろうということで始まったのだと思います。更には一般公募予備自の即自志願を認めるようになったり、任期満了者が予備自衛官等に登録することを条件に奨学金を給付する等の施策を打ってきたのでしょう。

 

 それでも即自の充足率は50%強程度というのが現実です。

 

 結局のところ、ちゃんと訓練しよう思えば人は集まらない、人を集めようと思えば練度が維持できないというという二律背反が予備自衛官制度最大の問題点なのでしょう。

 

 とはいえ、ここ十年でも予備自を取り巻く状況は劇的に変わりつつあります。

 

 一昔前、私が即自に志願した時に「もし招集がかかったらどうなるんですか?」と聞いたところ「即自が招集なんてあるわけないじゃん」というのが地本担当者の答えでした。その後、東日本大震災で即自と予備自が初めて招集され、現在では大規模災害での即自招集は当たり前のように行われるようになりました。前述のように令和2年7月豪雨では予備自衛官も被災現場に投入されています。

 

 個人的には、例えば希望する予備自衛官を即自のコア部隊に所属させ、土日のみで年間20日の訓練に参加させるなど、人員確保と練度を両立する方法はあると思います。

 

 即自の充足率が低いのは3日間や4日間連続の訓練があり、平日に休みを取らざるを得ないからです。土日のみで年間20日なら参加できるという予備自はそれなりにいるのではないでしょうか。こうすればコア部隊の充足率は向上し、有事の際に動員できる人員も増加するでしょう。

 

 大宮氏の著書では現職の自衛官たちが予備自衛官を次のようにこき下ろしています。

 

予備自衛官なんて、自衛官じゃねぇ。単なるタバコ代稼ぎと同窓会だ。酒飲みにきてるだけなら、駐屯地に来なくていい。勝手にどっかの居酒屋で同窓会でもやってりゃいいんだよ」

 

 今後、予備自衛官等制度がどのように変わっていくかは分かりませんが、このような時代には戻りたくないものであります。

自衛隊限定大型免許が解除できる教習所

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 以前、自衛隊限定の大型免許は簡単に限定解除できるという記事を書きました。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 この限定解除コースがある教習所をネット上で探して一覧にしてみました。限定解除しようと考えている方は参照して頂ければと思います。但し、ざっくりと検索しただけですので取りこぼしはあるでしょうし、ホームページに記載が無い教習所でも実際に問い合わせたら自衛隊限定解除を受け付けていたという事もありますので、あくまで参考程度にお願い致します。限定解除したいと考えている方はとりあえず近場の教習所に電話確認してみましょう。

 

北海道

 

北海道クミアイ自動車学校(旭川市

https://h-kumiai.com/

 

芽室自動車学校(芽室町

https://memuro-ds.p-kit.com/

 

函館自動車学校(函館市

http://hakoji.jp/

 

恵新自動車学園手稲自動車学校(札幌市)

http://www.keishin-g.com/teine/

 

北広島自動車学校(北広島市

https://www.hiyokko.jp/index.html

 

はぎの自動車学校(白老町

http://www.haginods.co.jp/

 

宮城県

 

築館自動車学校(栗原市

http://www.tsukidate-ds.co.jp/index.html

 

R45・日の出自動車学校(仙台市

https://www.r45-ds.com/

 

茨城県

 

大宮自動車教習所(常陸大宮市

https://www.ohmiyajikyo.co.jp/

 

土浦北インター自動車学校(土浦市

https://www.tsuchikita.jp/

 

栃木県

 

栃木県自動車学校(宇都宮市

https://www.tochigiken-ds.com/

 

トーブモータースクール(宇都宮市

http://www.658-0731.jp/

 

栃交自動車学校(下野市

https://www.tochiko-ds.jp/index.php

 

埼玉県

 

埼玉とだ自動車学校(戸田市

https://www.toda-drive.com/

 

東武こしがや自動車教習所(越谷市

http://www.tobu-koshigaya.jp/

 

愛知県

 

一宮自動車学校(一宮市

https://138ds.jp/

 

兵庫県

 

尼崎ドライブスクール(尼崎市

http://www.amagasaki-ds.co.jp/

 

はりま自動車教習所(高砂市

https://www.harima-ds.com/

 

和田山自動車教習所(朝来市

https://www.wa6332.com/

 

和歌山県

 

田辺自動車学校(田辺市

http://www.tanabe-ds.co.jp/

 

広島県

 

テクノ自動車学校(熊野町

https://www.tekuno.info/

 

福岡県

 

福岡市自動車学校(福岡市)

https://fcds.jp/

 

久留米自動車学校(久留米市

https://www.kurume-ds.jp/

 

佐賀県

 

鳥栖自動車学院(鳥栖氏)

http://www.minamitosu.gr.jp/

 

長崎県

 

大塔自動車学校(佐世保市

http://www.daito.gr.jp/

 

大分県

 

大分自動車学校(大分市

https://www.oita-ds.co.jp/index.html

 

鹿児島県

 

志布志自動車学校(志布志市

http://www.shibushi-ds.jp/

 

鹿屋自動車学校(鹿屋市)

https://kanoya-ds.com/

予備自衛官が災害招集されると給与はどれぐらいになるのか

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 予備自衛官は年間5日間の訓練に出頭した場合、年額88,500円の手当が支給されます。一方で災害招集された場合は「招集に応じて出頭した日をもって、現に指定されている階級の自衛官となる」ため自衛官俸給表が適用され、常備自衛官と同様の給与が支払われます(招集及び招集解除が月の途中の場合は日割り計算で支給)。

 

 この給与がどれぐらいになるのか、参考となりそうな資料がありましたのでご紹介したいと思います。

 

広島地本ホームページより。

www.mod.go.jp

 

災害招集等時の予備自衛官の給与決定要領(参考)

https://www.mod.go.jp/pco/hiroshima/images/06/rf_03_1113c.pdf

 

 少しややこしいのですが、順を追って見ていけば理解できると思います。

 

 招集時に自分がどれぐらいの給与をもらえるのか知りたいという方は、まず退職時の号俸を調べましょう。例えば退職時の号俸が士長16号俸だった場合、俸給月額は218,000円です

 

elaws.e-gov.go.jp

(別表第二を参照)

 

 もし、招集時に階級が士長のままだった場合はここに経験年数加算された金額が給与になります。例えば自衛隊退職後、予備自に任官しながら企業で2年(24ヶ月)間働いていたとします。その場合、申告すれば以下の数式により号俸が加算されます(予備自に任官していなかった期間については経験年数加算の対象とならないため注意)。

 

加算号俸=24ヶ月×換算率÷12×4号俸×80/100(災害招集の場合)

 

 換算率については以下の通り。

 

国家公務員、地方公務員又は民間における企業体、団体等の職員としての在職期間のうち、自衛官として有用な職務に従事していたといえる期間があるか否か。

ない場合:(在職証明書で確認できない場合や未申告期間を含む):25/100

ある場合:技能公募予備自衛官受検に必要な資格を有している者:100/100

     上以外の資格を有している者:80/100

     資格を有していない者:50/100

 

 今回は自衛官として有用な職務に従事していた(換算率50/100)として計算すると、加算号俸は3(端数切捨)となり、士長19号俸が適用され俸給月額は22,4300円です。

 

 ちなみに、経歴を申告しなかった場合や無職だった場合でも25/100の換算率が適用されます。また、経歴の一部だけを申告することも可能です。

 

 次に士長から3曹に昇進していた場合です。この場合、まず退職時の俸給で3曹に昇任したと仮定して号俸を当てはめます。

 

elaws.e-gov.go.jp

(別表第一のロ参照)

 

 士長16号俸が3曹に昇任した場合、3曹8号俸になりますので、俸給月額は221,500円です。ここに経験年数加算を先ほどと同じように計算して号俸を加算すれば招集時の給与が算出されます。

 

 また予備自衛官補から採用された予備自衛官については、基準となる号俸が各階級の1号俸になります(2士の場合は2士1号俸、2曹の場合は2曹1号俸)。従って広島地本の例を見てもわかる通り、例えば3佐で採用された場合は3佐1号俸の320,400円に経験年数加算した号俸が給与月額になります。

 

 なお、広島地本のホームページには経歴年数の申告に必要な在職証明書の雛形と記載例もありますので、参照して頂けたらと存じます。

任期制隊員が任満退職後に大学進学しつつ即自になると約100万円もらえる

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 だいぶ前に何度か記事にした自衛隊奨学金について公式情報が上がっていました。

 

任期制自衛官退職時進学支援給付金制度

https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/new/img/index/topics/shingaku.pdf

 

 支給金額は即自が年額24万円、予備自が年額4万円です。大学4年間を通して任官したとすると、即自で計96万円、予備自で計16万円が支給されることになります。

 

 支給条件は以下の通り。

 

  • 任期制自衛官であって、任期満了した日に退職していること

 

 

  • 学校教育法に規定する大学の学部に在学していること

(大学院、専門職大学、短期大学、専門職短期大学、夜間部・通信制の大学を除く。)

 

 なお、注意すべき点として「上記要件を満たさなくなった場合、給付金の全部又は一部の返納が必要」との事です(恐らく大学を中退したり即自、予備自を退職した場合が該当すると思われる)。

 

 当初報道されていた即自4年間で244万円支給という話に比べればだいぶ減額されてしまいましたが、返済不用の奨学金約100万円というのはかなり魅力的な話です。

 

 これに即自の手当を加算すると4年間で約300万円の収入(+訓練招集時の衣食住)になり独力で大学進学しなければならない人にとっては大きな助けとなるでしょう。国公立大学の場合はこれだけで学費がすべて工面できます。

 

 産経新聞の報道によれば、令和3年度の予算は1千万円で人員の上限は46人とのこと。この制度によって即応予備自衛官の充足率が向上すれば、防衛省としても財務省に成果を提示することが出来るので、将来的に上限人数が増えたり、給付金の増額が見込めるでしょう。

 

 現職の任期制隊員だけでなく既に大学へ進学している任満退職者も活用できるのではないかと思いますので、興味のある方は是非とも地本に問い合わせて頂きたいと思います。

隊員自主募集と予備自衛官

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 「隊員自主募集」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 簡単に言えば現職自衛官予備自衛官等の紹介で採用試験を受けて入隊する制度です。少し前までは縁故募集と呼ばれていました。

 

 紹介と言っても自衛官予備自衛官が部隊や地本に「自衛隊に興味を持っている人がいますよ」と連絡先を伝えるだけで、実際に志願者と連絡を取って募集業務に当たるのは地本の広報官です。その後の手続きは採用試験を含めて一般の志願者と何ら変わりません(採用試験に落ちたりして入隊しなかった場合は隊員自主募集にはならない)。

 

 昨今の募集難から自衛隊では隊員自主募集にも力を入れており、予備自衛官の訓練招集でも地本や訓練担当部隊から「自衛隊に興味がある人がいれば連絡ください」とよく言われます。

 

 この隊員自主募集ですが、もし予備自衛官が志願者を紹介して実際に入隊した場合には、予備自衛官本人にもメリットがあります。隊員自主募集は賞詞の対象となっており紹介した人数によって防衛記念章を着用することが出来るようになるのです。

 

 具体的な人数は以下の通り。

 

単年度で1名入隊等   5級賞詞 第13号防衛記念章

 

単年度で3名入隊等

2年連続2名入隊等   4級賞詞 第9防衛記念章

累計で10名入隊等

 

単年度で5名入隊等

2年連続4名入隊等   3級賞詞 第5号防衛記念章

3年連続3名入隊等

累計で15名入隊等

 

詳細はこちら。

www.mod.go.jp

 

 かつては予備自衛官等が新たに取得した防衛記念章を着用することは出来ませんでしたが、令和2年の制度改正により予備自衛官等として取得した防衛記念章も制服に着用することが出来るようになりました。

 

 まぁ、これが大したメリットかと言われればそうでもないかもしれませんが、現状では予備自衛官等が新たに防衛記念章を取得するのは隊員自主募集か災害派遣招集しかありませんので、もし機会があれば制度を活用していただければと思います。

予備自衛官等関連資料 POWER RESERVE第52号(2021年度版)  

 パワーリザーブとは予備自衛官等制度について防衛省が毎年発刊している冊子である。内容は予備自衛官等制度の紹介、予備自衛官等の活動状況、予備自衛官等や訓練に関わる現職自衛官、雇用企業、予備自衛官等の家族による投稿文等からなる。

 

 今回は令和2年7月豪雨と新型コロナウィルスでの災害派遣が特集されていたが、前年度の第51号と違ってネット上まだ公表されていないようなので、参考までに摘録したいと思う。

 

令和2年度7月豪雨における活動実績

 令和2年7月5日に即応予備自衛官の招集実施命令が、7月9日に予備自衛官の招集実施命令がそれぞれ発出される。※熊本県知事の災害派遣要請は7月4日。

 

 派遣部隊及び活動概略は以下の通り。即応予備自衛官300名、予備自衛官54名が活動。

 

第19普通科連隊(福岡)

主な活動地域  人吉市球磨村

活動人員・期間 即応予備自衛官 104名(R2.7.10~R2.7.15)

        予備自衛官    48名(R2.7.15~R2.7.19)

活動内容    災害廃棄物の除去、輸送支援

 

第24普通科連隊(えびの)

主な活動地域  人吉市

活動人員・期間 即応予備自衛官  85名(R2.7.10~R2.7.15)

活動内容    廃棄物の除去

 

西部方面後方支援隊

第101弾薬大隊(目達原)

第103弾薬大隊(目達原)

第105補給大隊(大分)

主な活動地域  人吉市益城町湯前町球磨村

活動人員・期間 即応予備自衛官 111名(R2.7.8~R2.7.18)

活動内容    輸送支援

 

西部方面衛生隊(健軍)

主な活動地域  人吉市球磨村

活動人員・期間 予備自衛官     6名(R2.7.13~R2.7.18)

活動内容    巡回診療支援、保健衛生指導

※衛生職種の技能公募予備自衛官

 

新型コロナウィルスの感性防止における活動実績

 令和2年2月13日に予備自衛官の招集実施命令を発出。税務大学校自衛隊中央病院で活動。予備自衛官10名。※技能公募予備自衛官

 

税務大学校

活動人員・期間 予備自衛官(看護師) 2名(R2.2.18~R2.2.22)

活動内容    健康管理支援

 

自衛隊中央病院

活動人員・期間 予備自衛官(医師)  1名(R2.3.2~R.2.3.11)

活動内容    医務業務

 

活動人員・期間 予備自衛官(看護師) 3名(R2.2.25~R2.3.11)

活動内容    看護業務

 

活動人員・期間 予備自衛官(語学要員)4名(R2.2.27~R2.3.5)

活動内容    通訳支援

 

 なお、予備自衛官等の全員が全期間を通じて招集されていたわけではなく活動期間の一部のみ招集されていた予備自衛官等も存在する。

 

 第19普通科連隊では一般の予備自も招集されているが、即自とは別に活動していた模様。私見だが、予備自衛官普通科出身者で即自対象年齢の者については上限の20日間までコア部隊(普通科連隊)で即自と一緒に訓練を受けられるようにしてはどうだろうか。

 

 即自については3日間訓練や4日間訓練に出頭しなければならないが、予備自衛官のコア部隊訓練参加者は通常の5日間訓練に出頭すれば、後は週末2日間×7回等の訓練参加でも良いようにする(もちろん本人の都合が良ければ3~4日間の訓練に参加可能)。但し、手当については予備自衛官としての金額が支払われる。もし仕事や家庭の事情で忙しい年は参加日数を減らしても良い。要するに即自と予備自の中間的な存在を作るのである。

 

 これならば普段から即自と訓練することにより、災害派遣時に即自と予備自が混成で活動するにもハードルは低くなるだろう。また年間最大20日の訓練を受けられるので練度の向上も期待できる。面倒な法改正も必要ないのも利点だ。

自衛隊の大規模接種センターに予備自衛官が動員されない理由

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 現在、東京と大阪で自衛隊による大規模接種センターが運営されており、5月24日からコロナのワクチン接種が開始されるとの事です。

 

 この大規模接種センターの運用ですが、ワクチン接種は自衛隊だけで行うわけではありません。自衛隊医官、看護官に加え民間の看護師(報道によれば約200名程)が参加しています。ここで少し自衛隊に詳しい方なら「クルーズ船対応の時みたいに医療系の予備自衛官を招集すればいいんじゃないの?」と思われたかもしれません。

 

 確かにクルーズ船のコロナ対応では医師、看護師、通語学の資格を持つ技能公募予備自衛官が招集され任務に従事しました。一方で今回の大規模接種センターでは予備自衛官が招集されていません。近年では防衛省も災害時に即応予備自衛官予備自衛官の招集を当たり前のように行っていますので、この対応の違いについて疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 恐らく防衛省は大規模接種センターの話が持ち上がった段階で、予備自衛官の運用は難しいと判断したのではないかと思います。理由は色々と考えられますが、私個人の想像ではだいたい以下のようなものではないかと思います。

 

 まず第一に、招集期間の問題が挙げられます。今回の大規模接種センターは3カ月間の長期にわたり運営されます。当然、医療関係者を含めたスタッフは全期間を通じて勤務してもらう方が会場運営の効率上適当と考えられます。しかし現在、予備自衛官が災害招集される場合の招集期間は、概ね1週間から2週間です。これは、予備自衛官が生業を持っておることと関係しており、有体に言えば職場を長期間空けて招集に応じるという事が出来ないのです。考えてみれば分かると思いますが、現在の日本社会で1~2週間連続で職場を離れるというのは現実問題、難易度が高いものです。ましてや3ヶ月ともなれはほとんどの社会人が「無理」と答えるでしょう。

 

 もし大規模接種センターに予備自衛官を招集した場合、現状ではどうしても1~2週間で予備自衛官が交代でやってくるという形にならざるを得ません。会場側としたらそのたびに新しくやって来た予備自衛官に仕事内容を教えなければならず、せっかく仕事を覚えてきたと思ったら今度は招集解除でいなくなるという繰り返しとなり、運営効率が低下するという事態につながりかねません。それよりは民間の看護師を活用し3カ月間の安定した人材確保を目指した方が効率という観点からも良いかと思われます。

 

 第二に全国的なコロナ流行という状況下で医師や看護師である予備自衛官の招集が困難であるという事。先ほども述べた通り予備自衛官は生業を持っています。医療系の予備自衛官なら本業は病院勤務の医師や看護師だったりするわけですが、医療機関がコロナで逼迫している現在、更にそこから予備自衛官を招集するとなれば職場からの反発は必須ではないかと思います。予備自衛官本人としても招集に応じにくいでしょう。元々、災害招集は予備自衛官本人及び雇用企業の同意を得て招集する運用方法ですので、現状で招集を打診しても必要な人数を確保するのは難しいと思われます(ちなみにクルーズ船での予備自衛官招集人数は10名)。

 

 そもそも大規模接種センターのお鉢が自衛隊に回ってきたのも、既存の医療機関に余力が無いから自衛隊を活用するという主旨であって、そのために予備自衛官である民間の医療関係者を招集するというのは政策的にも矛盾していると言えるでしょう(じゃあ人材派遣会社と契約して民間看護師を集めるのは本末転倒じゃないかという話になりますが)。

 

 このような事情もあり、今回の大規模接種センターでは予備自衛官の招集が見送られたのではないかと個人的に予想する次第です。

 

追記(5月25日)

 

 自衛隊大規模接種センターと予備自衛官に関連する記事が出ていました。

 

news.yahoo.co.jp

 

 該当する部分を抜粋すると以下の通り。

 

佐藤)これは予備費等も含めて取る努力を我々もしますし、隊員の手当ということもできますが、今回少し変なのは、災害派遣ではないのです。千代田区の方が施設を病院のように指定して、「巡回診療」という形を取っているのですが、災害派遣ではなく普通の自衛隊の病院運営なので、予備自衛官が参加できないのです。予備自衛官の医師、看護官や薬剤師の方からすると、「なぜ自分たちを使わずに民間の看護師を使うのか」と。

 

飯田)派遣された看護師さんがやるわけですよね。

 

佐藤)準有事と考えるならば、使える隊員は使うべきで、予備自衛官が参加すれば現役隊員の負担も減って、本来任務の方にも運用できます。そのような準有事的な発想は必要だと思うのです。

 

※佐藤→佐藤正久参議院議員

 飯田→飯田浩司ニッポン放送アナウンサー)

 

 これについて調べたところ、4月27日の防衛大臣臨時記者会見で設置根拠について回答されていました。

 

www.mod.go.jp

 

防衛省において様々な病院を運営しております。自衛隊中央病院等々ですね、根拠としては同じような形でなるわけですけれども、自衛隊法の27条の1項及び自衛隊法施行令の46条3項の規定に基づいて、隊員の他、隊員の扶養家族、被扶養者等の診療に影響を及ぼさない程度において、防衛大臣が定めるところにより、その他の者の診療を行うことができるとされていることから、新型コロナウイルスワクチンの接種は自衛隊中央病院が果たすべき本来の任務の一つということで行ってまいります。

 

 要するに東京の自衛隊大規模接種センターは自衛隊中央病院が大手町合同庁舎3号館へ巡回診療に来ているという形になっているわけですね。

 

 予備自衛官即応予備自衛官の招集については防衛招集、国民保護(等)招集、治安招集、災害招集、訓練招集しか認められてないので、そのいずれにも該当しない今回の大規模接種センターには予備自衛官を招集出来なかったという訳です。

 

 米軍では遅延している業務に予備役を招集して当たらせるなど、平時の任務についても予備役を活用する仕組みがあるようですが、自衛隊では現行の制度上出来ないみたいですね。

 

otakei.otakuma.net

 

 今回の事例を元に、平時における業務についても予備自衛官を活用できるような仕組みを作ることができれば予備自衛官の運用も弾力性が増すでしょう。そうなると社会保険制度(長期の招集になった場合、国共済に加入するのか否か)等、解決しなければならない問題は多くあると思いますが、これらは結局有事になれば表面化する話ですので、これを機に考えて行くべき問題ではないかと思います。

訓練は駐屯地だけでやるという発想は転換すべきではないか?

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 今年度は昨年から続くコロナ禍と緊急事態宣言の影響で、予備自衛官の訓練についても中止や延期が相次ぎました。新型コロナについては一時期に比べて収束しつつあるものの、変異株の出現など予断を許さない状況です。令和3年度も予備自衛官等の訓練について影響が出る可能性は大きいでしょう。

 

 コロナ禍において官公庁や民間企業ではテレワークを推進したりしてきましたが、その動きが全く見られないのが予備自衛官の訓練です。令和2年度は一部だけ若しくは全く訓練に参加できなかった予備自衛官もいたと思いますが、練度やモチベーション維持の観点から問題ではないかと思います。かといって、予備自衛官の場合は外部に出せない訓練内容が多いため民間と違って「資料を送るからこれで勉強しといてね」という訳に行かないのが悩ましいところです。

 

 ただ、予備自衛官が訓練するための情報は何も機密事項だけとは限りません。例えば体力錬成で言えば、筋トレのやり方、筋力をつけるための食事のメニュー、体をメンテナンスするための準備体操やストレッチの方法等、世間一般に公開しても問題のない範囲で予備自衛官の能力向上に直結する情報を伝えていくことは出来ると思います。

 

 以前にもブログで紹介しましたが、ポーランド領土防衛軍(Wojska Obrony Terytorialnej 予備役の郷土防衛部隊)ではトレーニングアプリを作ってGoogle Playストアで配信しています。また、訓練にeラーニングも導入されています。

 

play.google.com

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 他にも例えば基本教練の内容は教育訓練招集日数の少ない技能公募予備自や退職後にブランクを経て予備自衛官に任官した人などが訓練前の復習として参考にするのに良いのではないかと思います(基本教練は体験入隊者にも教えているので保全上も問題ないでしょう)。また、予備自衛官訓練でやる野外衛生に関してはAEDの使い方や心肺蘇生法など機密性のない情報もあるでしょう。

 

 防衛省YouTubeSNSを広報で活用しているのですから予備自衛官に向けてこのような情報発信は是非ともして欲しいところです。あるいはアプリではなく動画配信や希望者にアカウントとパスワードを付与してeラーニング形式で出来るようにするのも良いかもしれません。

 

 下手をすれば新型コロナの影響は数年続く可能性もあります。そうなれば予備自衛官等の訓練も数年単位でままならないという状況になりかねません。必然的に今までの「訓練は駐屯地だけでやる」という発想にも限界が来るでしょう。

 

 既に世の中は1年前とは大きく変わっています。防衛省においても固定概念にとらわれるのではなく、将来を見据えて柔軟な発想で訓練方法の改善に取り組まれて頂ければと思います。