予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

ポーランド領土防衛軍について

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 ポーランド領土防衛軍(Wojska Obrony Terytorialnej 以下WOT)はポーランド軍の第5軍種として2017年に設立された非常勤兵士による民兵組織である。

 

 WOTホームページ

terytorialsi.wp.mil.pl 

 

WOT youtubeチャンネル

www.youtube.com

 

 ポーランドと日本では地理的条件等で異なる点が多く単純な比較はできないが、ホームページを見たところ詳細な情報が掲示されていたので何かの参考になるやもと思い記事に取り上げてみた。なお、筆者はポーランド語が全くできないためグーグル翻訳を頼りに書いている。誤っているところなどあるかもしれない。お気づきの方は知らせて頂けると幸いである。

 

 WOT設立の主たる要因は2014年に勃発した一連のウクライナ動乱でありWOTの任務についてもハイブリッド戦争を指向したものが主となっている。

 

 当初はポーランド東部3県(ロシアの友好国であるベラルーシとの国境近辺)で3個の領土防衛旅団(BOT)が編成され、現在13個領土防衛旅団まで増強されている。最終的には5万3千人からなる17個領土防衛旅団が編成され、首都ワルシャワのあるマゾフシェ県に2個、その他の県には各1個領土防衛旅団が配置される予定。

 

 各領土防衛旅団は駐屯する県に居住する兵士によって構成され、WOTのホームページには地域社会をサポートすると謳われている。ポーランド軍予備役が正規戦を担うのに対して、WOTはハイブリッド戦争下で自らの故郷を守る地域密着型組織であるということだろう。

 

 WOTの多くは非常勤の兵士より構成されており、生業を持ちながら訓練に参加している。志願するに当たって主な条件は以下の通り。

 

  • ポーランドの市民権があること。
  • 法定年齢(18歳)以上であること。
  • 肉体的・精神的に健康であること。
  • 兵役等の義務に従事していない事。
  • 犯罪歴がないこと。

 

 申し込みはネット及び郵送で行うことができる。採用試験は面接と身体検査、心理テスト。

 

 また、一般コースとは別にサイバーセキュリティ技術者や看護師を対象としたコースも存在する。大学等で教育を受けている看護師、もしくは看護師志望者については補助金を受け取れる制度もあるようだ。

 

 入隊後は教育訓練(自衛隊で言えば予備自衛官補の教育訓練招集か)を受けることになるが、軍隊経験者と未経験者とでは日数や内容が異なる。訓練については毎日12時間にも及ぶ厳しいものだが、基本教練等の訓練は最小限にして射撃訓練等を優先しているとの事。

 

軍隊未経験者

連続16日か2日×8回の週末訓練

戦闘訓練、救命措置、SERE(残存・脱出・抵抗及び退避)、射撃訓練など

 

軍隊経験者

2日×4回の週末訓練

体調検査、軽歩兵としての訓練など

 

 その後、3年間で段階的に個別訓練、専門訓練、部隊訓練を受けることになる。最初の教育訓練とは別に1年間で36日の訓練を受け、最初の3年間で合計124日の訓練を受けるように計画されている。ただし、雇用企業に影響を与えないよう訓練は休日を中心に行われているようだ。

 

 また、eラーニングも訓練の一部に取り入れられている他、体力錬成の為に専用のアプリまで用意されている。

 

play.google.com

(残念ながらポーランド語のみと思われる)

 

 体力検定の内容は3000m走、腕立、腹筋。

 

 この他、専門職養成の為のコースもあり年間36日(例:週末11日とフィールドトレーニング14日)の訓練を受けることができる。更に下士官や将校になるための長期入校コースも開かれており、またWOTの正規(フルタイム)軍人に志願することも可能である。

 

 雇用条件についてはWOT兵士は通常の訓練中、手当を受け取ることができる。一方、雇用企業は当該兵士を無給休暇扱いとするが、補償として一定の現金給付を受け取ることが可能。その代わりWOT兵士であることを理由に解雇することは出来ない。

 

 将校課程に入校する等、長期的に職場を離れる場合、雇用企業はWOT兵士に給料を支払い続けなければなければならないが、WOTより給料として支払った同額を補助金として受け取ることができる。WOT兵士の義務としては訓練期間を雇用企業に通知しなければならない。

 

 制度の紹介としては以上となる。

 

 WOTの役割はハイブリッド戦争時の郷土防衛が主であり、第一線任務に就く即応予備自衛官、後方警備に就く予備自衛官とは役割が異なっている。しかしながら訓練内容や人事制度については予備自衛官等制度の参考になりそうな点も多々あると思うので(体力錬成用のアプリとか訓練のeラーニング活用とか是非自衛隊でも実施して欲しいと思う)この度、紹介する記事を書かせてもらった。

 

 興味のある方はグーグル翻訳等を使ってWOTホームページを閲覧してみて欲しい。