予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

公務員の為の予備自衛官等志願手続きマニュアル(仮)

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。

 

はじめに

  予備自衛官等制度には予備自衛官即応予備自衛官予備自衛官補の三つ(以下予備自衛官等という)が存在するが、予備自衛官等には各種手当(報酬)が発生する。

 

 従って国家公務員は国家公務員法及び関係法令等の規定により所定の手続きを得て内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長等の兼業許可を得なければ予備自衛官等に任官することが出来ない。地方公務員においても地方公務員法及び条例等により任命権者の営利企業等従事許可を得なければ予備自衛官等に任官することができないのは同様である(拙稿「公務員は予備自衛官になれるのか?」「国家公務員の兼業基準と予備自衛官について」及び「予備自衛官等関連資料 地方公務員法実例判例集(抜粋)」参照)。

 

 許可を得るためには申請書を提出しなければならないが、恐らく人事部門経験者を除く大多数の公務員にとってこれらの手続きは初めての経験であると思料されるので、稚拙ながらこの度自分の経験を元に予備自衛官等の従事許可申請を提出するにあたって有用だと思った知識及び情報を取りまとめてみた。予備自衛官等を志す公務員の方で役に立つと思しき点があれば参考にしていただきたい。

 

 なお、本案については誤りや加筆すべき点も多々あるかと存ずるが、適宜コメント等で指摘して頂ければ幸いである。

 

申請手続きの確認

  まず、第一に進めるべきは営利企業従事許可の基準及び許可を取得するためにどのような申請手続きが必要か調査することである。国家公務員については以下の資料を参照されたい。ちなみに兼業許可申請書の様式については「職員の兼業の許可に関する内閣官房令」で確認できる。

 

国家公務員法(昭和22年法律第120号)

職員の兼業の許可に関する政令(昭和41年政令第15号)

職員の兼業の許可に関する内閣官房令(昭和41年総理府令第5号)

職員の兼業の許可について(昭和41年2月11日付総人局第97号)

「職員の兼業の許可について」に定める許可基準に関する事項について(平成31年3月28日内閣人事局参事官通知)

国家公務員の兼業について(概要)(平成31年3月内閣官房内閣人事局)

 

 地方公務員については各自治体ごとの条例、規則等により文言が異なるものの、概ね国家公務員を準拠とした許可基準となっている。現在は各自治体の例規をインターネットで検索することも可能なので(「○○市 例規」などで検索すると出てくる。なお、営利企業等従事許可に関する規則は「人事」の「服務」関係に記載されていることが多い)、あらかじめ申請書の書式や申請手続きについて調べておきたい。

 

 地方公務員の注意すべき点として全ての職員が首長を任命権者とするわけではない点に留意されたい(例えば教育委員会職員の任命権者は教育委員会、議会事務局の職員は議会議長等。また、一部事務組合の場合は管理者もしくは企業長となる)。

 

 各自治体の例規以外で地方公務員の営利企業等従事許可申請で参考になりそうな資料は以下の通り。

 

地方公務員法(昭和25年法律第261号)

地方公務員法実例判例集

 

 「地方公務員法実例判例集」についてはネット上では原本のデータが確認できないため、出来れば図書館で必要箇所をコピーした方が良いだろう。

 

 国家公務員の兼業許可基準は「職員の兼業の許可について」によれば以下の通りであるが、地方自治体の許可基準についても文言は違えど概ね似たような内容となっている。予備自衛官等についてはこれらの許可基準を満たすものであり問題はないと思われる。

 

第3 許可基準に関する事項

2 事業の許可に関する申請が次の各号の一に該当する場合には、原則として、許可しない取扱いとされたいこと。

(1)兼業のため勤務時間をさくことにより、職務の遂行に支障が生ずると認められるとき。

(2)兼業による心身の著しい疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与えると認められるとき。

(3)兼業しようとする職員が在職する国の機関と兼業先との間に、免許、 認可、許可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等の特殊な関係があるとき。

(4)兼業する事業の経営上の責任者となるとき。

(5)兼業することが、国家公務員としての信用を傷つけ、または官職全体の不名誉となるおそれがあると認められるとき。

 

 ちなみに、予備自衛官労働基準法第7条に定める「公の職務」に該当するか否かは「労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日基発第150号)」において明確に否定されている点、注意されたい。

 

地方協力本部への相談 

 具体的な手続き方法を把握したら、次の段階として居住地の地方協力本部(担当部署は援護課(地本によって予備自衛官室、予備自衛官課))に相談する。予備自衛官等が許可されるかまだ分かっていない状況で相談するのも時期尚早と思われる方もいるかもしれないが、場合によっては地本担当者に職場まで来てもらい予備自衛官制度について説明してもらうことになる可能性もあり、早めに相談しておくことが望ましい。

 

 その他にもパンフレット等資料の提供を受けたり、災害派遣招集の現状や他の省庁や自治体での事例等を聞くことも出来るので、職場に申請を出す前にあらかじめ相談しておいた方が得策である。勿論、地本も出せる情報と出せない情報があるが、もし、他省庁や自治体の事例を聞くことが出来るのならば、特に招集訓練について必要な手続きはあるかとか、職免や年休を使用して参加している公務員がいるか等を確認しておきたい。

 

 また、勤務先の所在地と居住地が別の都道府県の場合は勤務先所在地を管轄する地方協力本部で志願するのも一つの手である。基本的に予備自衛官予備自衛官補は居住地の地方協力本部に所属するが、勤務地と接点がある地方協力本部に所属すれば予備自衛官任官後に地本とも接点を持ちやすい。部隊訓練見学等のイベントについても調整が容易である。

 

申請書の提出

  準備が出来たら実際に申請書を提出することになる。ここから先のやり方は人それぞれだが、著者の場合はいきなり申請書を提出するのではなく、パンフレットや訓練日程表等を元に予備自衛官等制度を説明したうえで、予備自衛官に任官したいので営利企業等従事許可を申請したい旨を上司に伝えた。この際、重点的に説明したのは、職場に負担をかけないという点である。

 

  • 予備自衛官の訓練が年5日で2日と3日に分割することも可能であること。

 

  • 訓練は土日が中心で、祝日等を利用することができれば職場に負担をかけず訓練を終えることができるということ。

 

  • 災害派遣招集は本人の意向を確認したうえで招集命令書を発出しているということ。

 

 以上の点を特に強調し理解してもらえるように努めた。

 

 時間に余裕があれば、パワーポイント等で予備自衛官制度及び関係諸法令等の概要をまとめた資料を作成しておけば説明が容易になり望ましいだろう。可能ならば他の省庁、自治体の事例も紹介できるとなお良い。なお、これらの作成した資料は事前に地本の担当者にチェックしてもらった方が後々、認識の齟齬を発生させないためにも望ましいであろう。

 

 省庁や自治体によっては申請を認める代わりに無給であることを条件としてくるところもあるかもしれないが、予備自衛官補については「国家公務員等が予備自衛官補を兼ねる場合の教育訓練招集手当の支給について(通知)(平成27年3月31日防人育第5841号)」により手当を受け取らないことも可能である。この通知が予備自衛官即応予備自衛官に準用されるのかは不明であるが、必要ならば事前に地方協力本部へ確認されたい。なお、この通知は原本を確認したければ防衛省に行政文書開示請求を行わなければ閲覧できない。請求からコピーが自宅に届くまでおおよそ1ヶ月半以上はかかるので、必要な方は早めに申請されたい。

 

 過去に予備自衛官等で許可を出したことのある省庁や自治体であれば前例を参考にして比較的早く判断が下るが、初めての事例となる場合は所属課と人事担当課が調整のうえ法令上問題がないか検討するため比較的長い時間がかかるものと思われる。場合によっては必要な資料の提出を求められる可能性もあるため、あらかじめ今まで準備した資料は手元に用意しておこう。

 

 職場から地本担当者の説明を求められた場合は遠慮せずに地本に連絡を取ること。その際には事前に部内でどのように話が進んでいるかをあらかじめ地本の方に情報提供しておいた方が良い。

 

訓練参加について

 予備自衛官等の訓練参加については平日と被る場合も多いが、その場合、防衛省としては国家公務員、地方公務員共に職務専念義務免除での訓練参加を基本とする考えである。但し、勤務先の状況により年次有給休暇を取得し訓練参加することも排除しないとしている。

 

 詳しくは「予備自衛官等を兼ねる国家公務員等が訓練招集等に応じた場合の勤務先である所轄庁の取扱いについて(通知)(令和元年7月24日防人育第4666号)」を参照されたい。