予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

「有事が終わった後」の予備自衛官について

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 ロイターがウクライナ戦争におけるロシア軍帰還兵の問題を取り上げていました。

 

jp.reuters.com

 

 ロシアやウクライナの場合は受刑者を前線に送っているので特殊な事例かもしれませんが、この「復員兵」の問題については日本も無関係ではありません。

 

 日本では「有事」の事は頻繁に取り上げられても、「有事が終わった後」の問題を取り上げられる事はありません。戦争に突入すれば自衛隊即応予備自衛官予備自衛官(以下予備自衛官等と表記)を大量に招集することが予想されます。これらは戦争が終われば余剰人員となるので招集解除・復員となるでしょう。問題となるのはこの一般社会へと戻る予備自衛官等への保障問題です。もちろん戦死した場合は遺族に年金が支給されますし、身体的・精神的障害についても災害補償がありますが、一方で経済的支援については非常に頼りないというのが現状です。

 

 そもそも、有事の防衛招集ともなれば災害招集と違って数カ月~年単位の招集期間が予想されます。予備自衛官等は平時において一般企業等で働いているわけですから招集されてい間は本業で働けないという事になります。

 

 防衛省は防衛招集等により平素の勤務先を離れた場合を想定して「雇用企業協力確保給付金制度」を設けていますが、これは上限が90日と定められています。また自衛隊法第73条では「予備自衛官であること又は予備自衛官になろうとしたことを理由として、その者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱をしてはならない(即自についても準用)」と定められていますが罰則はありません。

 

 会社によっては招集される予備自衛官等に休職等の取扱いをしてくれるところもあるかもしれませんが、「防衛招集に応じるなら辞めてくれ」と言われ、退職して招集に応じる予備自衛官等も出てくるのではないかと思います。

 

 戦争終結後、これら予備自衛官等は招集解除されて一般社会に戻っていくことになりますが、以前と同じ年収を得られる職に就ける確証もなく、特に既婚者や子供がいる場合は経済的に非常に不安定な中で生活を始めなければならなくなります。現職隊員にように就職援護を受けられることもありません。結果として国の為に戦った先に貧困が待ち受けているという事態も十分に考えられるのです。

 

 なお、戦前にはこのような問題に対応するため「入営者職業保障法」という法律がありました(ただし罰則は実質的に無い)。

 

 有事に招集された予備自衛官等が戦後経済的に困窮することがあっては予備自衛官等全体の士気にかかわる事態になります。有事を想定した諸制度の整備が最優先ではありますが、有事の後に来る「新たな戦後」についても今から考えておかないと、「次の次の有事」で予備自衛官等の成り手が益々いなくなるという事になるやもしれません。