予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

公務員は予備自衛官になれるのか?

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。

 

※以下の記事も参照ください。

reserve-f.hatenablog.com

 

 自衛隊に関わったことがある方ならご存じのことだとは思いますが、基本的に予備自衛官は普段、仕事(生業)に従事しつつ訓練招集を受け、有事には各種招集命令が発せられて自衛官として任務に従事するわけです。当然、訓練招集には手当(お金)が発生するわけですが、ここで気になるのが「地方公務員、国家公務員は予備自衛官になれるの?」というお話。

 

 勿論、一般企業でも就業規則で副業を禁止しているところもありますが、地方公務員、国家公務員は特に法律で副業が制限されています。

 

国家公務員法

(他の事業又は事務の関与制限)

第百四条 職員が報酬を得て営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

 

地方公務員法

営利企業への従事等の制限)

第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

 

 「えっ? 自衛隊営利企業じゃないから大丈夫でしょ?」と思われるかもしれませんが、要するに私企業だろうと官公庁だろうとNPO法人だろうと勝手にお金をもらって働いてはいけませんよという事です。

 

 地方公務員法の所管官庁は総務省ですが、前身の自治省が発行した地方公務員法実例判例集においても地方公務員が予備自衛官を兼ねようとするときは地方公務員法第三十八条の規定に基づく任命権者の許可を受けなければならないと判断されています。

reserve-f.hatenablog.com

国家公務員についても人事院等の具体的な文書は見つけられませんでしたがやはり所管庁の長の許可が必要でしょう。

 

 ただ、逆を言えば正式な手続きを踏んで許可を得ることができれば予備自衛官になることは可能という事。

 

 国家公務員、地方公務員の副業制限については、そもそも以下の法令を遵守するためという趣旨によります。

 

国家公務員法

(信用失墜行為の禁止)

第九九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(秘密を守る義務)

第一〇〇条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

(職務に専念する義務)

第一〇一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。

 

地方公務員法

(信用失墜行為の禁止)

地方公務員法第三十三条

職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

守秘義務

地方公務員法第三十四条

職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

(職務専念の義務)

地方公務員法第35条

職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

 

 要約すれば公務員の信用を損ねるような副業をしたり、職務上知り得た情報を利用して商売をしたり、副業のせいで本来の業務に支障が出るようなことがあってはならないので副業をやるなら事前に許可を取りなさいということ。

 

 これを予備自衛官に当てはめてみれば、職の名誉を傷つけるわけでもなく、職務上知り得た秘密を利用する余地もなく、体を動かすとはいえそこまで無理に追い込むようなものでもない予備自衛官は、公務員の副業として十分認められる余地があるのではないかと思います。

 

 実際に地方公務員、国家公務員の予備自衛官は平成23年度で約1300人、即応予備自、予備自補はそれぞれ約50人いるそうです(第180回国会 予算委員会第一分科会 第1号(平成24年3月5日(月曜日))より)。特別職(兼業制限が適応されない公務員、主に地方議会議員など)も含めた数値だと思いますが、とりあえず平成29年度の予備自衛官実員(約33000人)を元に計算すると予備自衛官の約4%が国家公務員、地方公務員という事になります。意外と多いですね。

 

 因みに私もこの約1300人(現在は多少減少していると思いますが)の内の一人でございます。

 

 国家公務員、地方公務員で予備自をやってみたいと思っている方。何はともあれまずは最寄りの地方協力本部に相談してみてはいかがでしょうか。担当者にもよりますが様々な事例を知っているので色々相談に乗ってくれますよ。

 

 最後に、当たり前ですが防衛省の職員は予備自衛官になることができません。ただし、期間業務隊員(非常勤隊員)は兼任することが可能だそうです。