意外とたくさんある予備自衛官雇用企業への支援制度
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
防衛省は予備自衛官等の定員確保を目的として、雇用企業の負担を減らし企業側のインセンティブを高めるべく様々な政策を実施しています。防衛省ホームページのリーフレットを見てもらえれば紹介されていますが、記載されてないものもありますのでまとめて紹介してみたいと思います。なお、実際にこれらの制度を活用されるという方はまず地方協力本部にご相談を。
即応予備自衛官雇用企業給付金制度
即応予備自衛官は年間30日の訓練招集が課され、また有事には第一線での活躍が期待されていることから雇用企業側の負担もそれ相応のものとなります。近年では即自の災害招集も珍しくなく企業側の苦労も軽いものではないでしょう。
このような雇用企業の負担に報いるため、防衛省では即応予備自衛官を雇用する企業に対して一人当たり年額51万円(月額42,500円)の企業給付金を支給しています。なお、即応予備自衛官を雇用していれば無条件に支給されるわけではなく、次のような条件が付きます。以下、抜粋。
即応予備自衛官雇用企業給付金支給要綱
(定義)
第3 この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、次のとおりとする。
⑴雇用企業 即応予備自衛官(災害等招 集命令を受け、自衛官となっている者を含む。以下同じ)を雇用する法人その他の団体及び自家営業主をいう。ただし、国、地方公共団体及び法人税法(昭和40年法律第34号)別表第1に掲げる公共法人は除くものとする。
(給付金の支給要件)
第4 給付金は、次の各号のいずれにも該当する雇用企業に対し、予算の範囲内において支給することができる。
⑴即応予備自衛官との間に次の事項のいずれにも該当する雇用関係を有してい ること。
ア 1週間の所定労働時間が30時間以上であること
イ 申請時において、1年以上引き続き雇用されることが見込まれること
⑵ 即応予備自衛官が訓練招集及び災害等招集に応じる期間を有給の特別休暇、勤務免除扱いとする等労働協約又は就業規則等により措置することによって不利益な取扱いをしないことが明らかであること。
⑶雇用企業内において即応予備自衛官制度等の周知に努めること。
これを読んでアルバイトは対象に入るのかと思われた方もいるかもしれませんが、私が即自をやっていた頃(といってももう5年以上前の話ですが)は給付金の対象外でした。今は制度が変わっているかもしれませんので一度、地本に確認してみてはと思います。
「法人税法別表第1に掲げる公共法人」についてはこちらを参照ください。
なお、この給付金は即応予備自衛官を雇用すれば自動的にもらえるわけではなく雇用企業側からの申請が必要です。ご注意を。
予備自衛官等協力事業所表示制度
事業所が予備自衛官等の雇用を通じて社会貢献を果たしていることを防衛省として認定し、認定された協力事業所に対して、防衛省から「表示証」を交付すると共に、認定された協力事業所を、防衛省HP・地方協力本部HP等で予備自衛官等協力事業所として紹介する制度です。消防団協力事業所表示制度の予備自版といったところでしょうか。
なお、「表示証」のデザインはこんな感じ。地本長認定事業所は表示証の縁のデザインが銀色、大臣認定事業所は金色です。
地本長認定協力事業所と防衛大臣認定協力事業所の2種類があり、当然、認定されるのは後者の方が難しいです。因みに認定だけ受けてホームページへの掲載は断ることも出来るみたいです(大臣認定事業所一覧の末尾に「※防衛省HPへの掲載については、承諾をいただいた事業所のみを掲載しています。」と記載されているので)。大臣認定を得るのは簡単ではなさそうですが、長年出頭率が良ければ即応予備自衛官が1人在籍しているだけでも認定されることがあるみたいです。
国民の9割が自衛隊に良いイメージを持っている現在、協力事業所として認定されるのは社会的にもプラスだと思います。自衛隊側から自動的にもらえるものではなく企業側から申請しないと認定されないので、もし職場に予備自衛官が何人か在籍されているならば、雇用企業側に「こういう制度もありますよ」と伝えてみてはいかがでしょうか。
雇用企業協力確保給付金制度
予備自衛官等が防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣等の招集に応じた場合や、各招集中における公務上の負傷等により平素の勤務先を離れざるを得なくなった場合において、その職務に対する理解と協力の確保に資するための給付金(雇用企業協力確保給付金)を雇用主の方々に支給する制度を制度。施行されたのは比較的最近です。
元々、東日本大震災や熊本地震で災害招集を行った際に予備自衛官等が本業を離れざるを得ず、その間の雇用主の方々に対する支援の必要性が明らかとなったため作られた制度との事。
予備自衛官又は即応予備自衛官を雇用する法人その他団体及び個人事業主(国、地方公共団体及び公共団体は除く)に対し、防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣等のため招集に応じ平素の勤務先を離れた場合や、招集中における公務上の負傷又は疾病により平素の勤務先を離れた場合に、日額34,000円×日数分を支給するというものですが、招集中の負傷、疾病による治療の場合は最大90日間という制限があります(自衛隊法七十三条の三第1項第二号及び自衛隊法施行令第九十七条の四)。
なお、この制度も雇用企業側からの申請があって初めて支給されるものなので、対象となる予備自衛官の皆さんはあらかじめ職場に伝えておいた方がよいと思います。
雇用主に対する情報提供制度
訓練招集日程、訓練期間等を予備自雇用企業に通知する制度。これまで予備自衛官の訓練招集の日程は予備自衛官自身が職場と調整して行っていました。この制度によって防衛省側から訓練の日程や期間等を事前に雇用企業に通知することで、業務に無理がないように調整できるとの趣旨で始まった制度の様です。
確かに、職場で何人もの予備自衛官を雇用されている企業さんには訓練招集であらかじめローテーションを組むことができ、ありがたい制度ですね。また、災害招集を受けた時など、どこに、どれぐらい派遣されどのような任務に従事するのか自衛隊側から通知があれば企業側の不安も緩和できるのではないでしょうか。
なお、例によってこの制度を活用するには雇用企業側からの申請が必要であると同時に、防衛省が予備自衛官本人に対して同意を得たうえでの実施となります。申請雛形などはこちらから閲覧できますのでどうぞ。
総合評価落札方式における予備自衛官の評価
こちらは建設業関係の方しか関係しませんが…。
防衛省が発注する自衛隊施設での建設工事の総合評価落札方式において、予備自衛官を雇用し現場に配置している企業に加点するという制度です。総合評価落札方式とは、入札において金額だけでなく入札者が示す様々な要素(技術提案等)を含めて落札者を決定するという制度です。
予備自衛官を雇用していればなぜ加点につながるのかというと、自衛隊の施設で工事を行う際に、一番現場に詳しいのはやはり自衛隊で勤務していた予備自衛官だからというわけです。なので、当然ながら工事を行う駐屯地に勤務していた予備自衛官を現場に配置する場合は加点される点数も一番高くなります。下請け企業が予備自衛官を現場に配置する場合も加点は適用されます。
他にも様々な条件がありますが詳細はこちらをご覧ください。
以上、紹介してきましたが、ここ10年で予備自衛官制度を普及させるための施策はだいぶ充実してきたのではないかと思います。私が初めて予備自衛官になった頃は、即応予備自衛官雇用企業給付金制度しかありませんでした。
恐らく東日本大震災、熊本地震と即応予備自衛官の招集が重なるにつれて雇用企業に対する支援策を充実させないとただでさえ充足率の低い予備自衛官制度(特に即自)が立ちいかなくなるとの危機感が防衛省・自衛隊にもあったのでしょう。
個人的には被災地での即応予備自衛官の活躍がメディアで取り上げられることによって、予備自衛官制度が世間に周知され普及していけばいいなと思っております。ただ、災害のたびに招集があるとなれば負担に感じる雇用企業が出てくるのもまた必然。これからも予備自衛官が後顧の憂いを残さず招集に応じられる体制づくりに防衛省・自衛隊が尽力して頂ければと存じます。
予備自衛官等関連資料 法人税法別表第一
解説
法人税法(昭和四十年法律第三十四号)における公共法人を定めたもの。この表に記載されている法人は公共法人とされ、法人税法第四条第2項により法人税を納める義務がない。
なぜこの別表が予備自衛官に関わってくるかというと、ここに記載されている企業は予備自衛官や即応予備自衛官を雇用していても国や地方公共団体と同様に「即応予備自衛官雇用企業給付金制度」や「雇用企業協力確保給付金制度」の対象外となるためである。
自衛隊法施行令
(予備自衛官である者の使用者から除かれる者)
第九十七条の二 法第七十三条の三第一項に規定する政令で定める者は、国、地方公共団体その他防衛省令で定めるこれらに準ずる者とする。
第百二条の七 前節第二款の規定は、即応予備自衛官である者の使用者に対する給付金について準用する。
自衛隊法施行規則
(国又は地方公共団体に準ずる者)
第八十六条の四の二 令第九十七条の二に規定する国又は地方公共団体に準ずる者は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く。)とする。
施行規則第八十六条の四の二で「(地方公共団体を除く。)」となっていてややこしいが、これは別表第一に地方公共団体が記載されているが、施行令第九十七条の二で既に地方公共団体を除くとしているため、このような条文になっていると思われる。要するに地方公共団体も給付金制度の対象外である。ちなみに一部事務組合も地方公共団体に含まれる。
公務員だけでなく、国立大学法人(現在は非公務員)、日本年金機構、日本中央競馬会(JRA)なども含まれている。地方独立行政法人(地方の公立大学や公立病院など。非公務員型を含む)に勤務している方などは注意されたい。
別表第一 公共法人の表(第二条関係)
名称 |
根拠法 |
沖縄振興開発金融公庫法(昭和四十七年法律第三十一号) |
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株式会社国際協力銀行 |
会社法及び株式会社国際協力銀行法(平成二十三年法律第三十九号) |
株式会社日本政策金融公庫 |
会社法及び株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号) |
港務局 |
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国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号) |
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水害予防組合 |
水害予防組合法(明治四十一年法律第五十号) |
水害予防組合連合 |
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地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号) |
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地方公共団体金融機構 |
地方公共団体金融機構法(平成十九年法律第六十四号) |
地方公共団体情報システム機構法(平成二十五年法律第二十九号) |
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地方住宅供給公社法(昭和四十年法律第百二十四号) |
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地方道路公社法(昭和四十五年法律第八十二号) |
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地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号) |
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独立行政法人(その資本金の額若しくは出資の金額の全部が国若しくは地方公共団体の所有に属しているもの又はこれに類するものとして、財務大臣が指定をしたものに限る。) |
独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)及び同法第一条第一項(目的等)に規定する個別法 |
公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四十七年法律第六十六号) |
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土地改良区 |
土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号) |
土地改良区連合 |
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土地区画整理組合 |
土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号) |
日本下水道事業団法(昭和四十七年法律第四十一号) |
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日本司法支援センター |
総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号) |
日本中央競馬会法(昭和二十九年法律第二百五号) |
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日本年金機構法(平成十九年法律第百九号) |
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放送法(昭和二十五年法律第百三十二号) |
「消防団充実強化法」の予備自衛官版は可能か?
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
予備自衛官や即応予備自衛官の定員割れが問題になって久しいですが、同じように志願者不足で悩んでいる非常勤の公務員に消防団員があります。
消防団員とは普段は生業に従事し、火災時等には消火活動に従事する特別職非常勤地方公務員です。日ごろの火災や自然災害などで活躍し、東日本大震災では水門操作や避難誘導に当たった消防団員253名が津波等で殉職されるなど、地域の防災活動に無くてはならない存在ですが、最盛期の200万人から85万人へと団員数が減少しています。
これは居住地以外に通勤するサラリーマンが増えたことや、昨今の不景気、最近では人手不足もあり仕事との両立が難しくなったことが原因として考えられるそうです。消防庁や各自治体では任務を限定して負担を少なくした「機能別団員」を導入するなどして女性や大学生の加入を促したり、消防団活動に協力した企業を顕彰する「消防団協力事業所表示制度」を創設したり、消防団員雇用企業に減税や入札で加点を行うなどして消防団員確保に取り組んでいます(どこかで聞いたような話ですね)。
そのような中、平成25年に成立したのが「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(平成二十五年法律第百十号)」(以下、消防団等充等実強化法という)です。
この法律は消防団を中核とした地域防災力の充実強化を図り、消防団の強化による地域防災体制の向上を目的としたものです。ここで注目すべきは、第十条(公務員の消防団員との兼職に関する特例)です。
第十条 一般職の国家公務員又は一般職の地方公務員から報酬を得て非常勤の消防団員と兼職することを認めるよう求められた場合には、任命権者(法令に基づき国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百四条の許可又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十八条第一項の許可の権限を有する者をいう。第三項において同じ。)は、職務の遂行に著しい支障があるときを除き、これを認めなければならない。
2 前項の規定により消防団員との兼職が認められた場合には、国家公務員法第百四条の許可又は地方公務員法第三十八条第一項の許可を要しない。
3 国及び地方公共団体は、第一項の求め又は同項の規定により認められた消防団員との兼職に係る職務に専念する義務の免除に関し、消防団の活動の充実強化を図る観点からその任命権者等(任命権者及び職務に専念する義務の免除に関する権限を有する者をいう。)により柔軟かつ弾力的な取扱いがなされるよう、必要な措置を講ずるものとする。
第十一条では一般の事業者にも従業員の消防団への加入、活動に配慮しなければならないとしていますが、国家公務員及び地方公務員については「職務の遂行に著しい支障があるときを除き、これを認めなければならない」としています。
これに伴い、国家公務員については「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律第十条第一項の規定による国家公務員の消防団員との兼職等に係る職務専念義務の免除に関する政令(平成二十六年政令第二百六号)」及び「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律第十条第一項の規定による国家公務員の消防団員との兼職等に関する規則(平成二十六年内閣官房・総務省令第一号)」により「その所轄庁の長(中略)の承認を受けて、消防団員としての活動を行うためにその割り振られた正規の勤務時間の一部を割くことができる」(要するに職免で消防団活動ができる)ようになりました。
また各自治体においても消防団等充実強化法制定後は条例で消防団活動が職免で行えると規定する流れとなっており、地方公務員の消防団加入手続きも簡略化されております。
公務員の私としては是非、防衛省も自衛隊法を改正して頂き、公務員が予備自衛官等を志願した際には原則として承認しなければならない様にすると同時に、手続きの簡略化や訓練出頭を職免で行えるようにしてほしいところではありますが、消防団と違い、いろいろと障害が出てくるであろうということも予想できます。
まず第一に、消防団を強化することに反対する人はいないが、自衛隊を強化することに反対する人はまだまだ多いという事。海上区分の予備自衛官補(技能)募集を防衛省が始めた時には全日本海員組合から「事実上の徴用だ」との声が上がりましたが、公務員が予備自をやりやすいよう法律を整備しようとしたら官公労がそろって反対してくることは間違いないでしょう。「事実上の徴兵だ」等と騒ぎ立てるやもしれません。勿論、官公労が支持母体の政党も反対の論陣を張るでしょう。
第二に、予備自衛官志願を認めなければならないとなると予備自衛官が公務員採用試験で忌避されるようになるのではないかということ。消防団活動は日ごろの訓練と火事や災害時のみで、活動範囲も職場からそれほど離れていないと考えられますが、予備自衛官の場合は災害派遣招集はともかく防衛招集がかかれば派遣先は遠方になる可能性もあり、また招集期間も年単位になる可能性があります。そして最悪の場合は戦死、もしくは職務に復帰できないほどの重傷を負う恐れもあるのです。
こうなると予備自衛官だけでなく、元自衛官というだけでマイナスイメージを与えてしまう可能性もあります。官庁や地方自治体の人事担当者からすれば「元自衛官を採用しても予備自衛官を志願されたら有事には自衛隊に行っちゃうし、それだったら別の人を採用しようか…」と考えるかもしれません。
勿論、自衛隊法第七十三条には「何人も、被用者を求め、又は求職者の採否を決定する場合においては、予備自衛官である者に対し、その予備自衛官であることを理由として不利益な取扱をしてはならない。」と規定されていますが、罰則規定がないうえに学科試験を通っても面接で適当な理由をつけて落とせばそれで終わりですから何ら実効性がありません。
というわけで、消防団等充実強化法のように法令で国や自治体に職員の予備自衛官志願を認めなければならないと定めるのはちょっと無理があるかなと私は思います。理想を言えば、「予備自衛官は我が国の平和と独立を守るために必要な制度だから公的機関として協力するのは当たり前だ」と考える人が広がってくれれば一番だとは思いますが、現実にそれが見込めない以上、雇用企業側へのインセンティブを増加させると共に、災害時の予備自衛官等の招集を増やし一般社会に予備自衛官制度を益々認知してもらうのが今できる限度ではないでしょうか。
そうなると、現在、国や地方公共団体には適応されない「即応予備自衛官雇用企業給付金」や「雇用企業協力確保給付金制度」を何とかしてほしいところですが…。現状、国や地方自治体が予備自衛官を出して自衛隊に協力しても何の補償もないですからね。
まぁ、この話は別の機会に改めてしたいと思います。
予備自衛官等関連資料 予備自衛官の任免、服務、服装等に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第1号)(抜粋)
解説
予備自衛官の採用や昇進、服装などについて定めた訓令。全文を読みたい方は防衛省情報検索サービスを利用されたい。
予備自衛官の選考方法(第6条)、任用基準(第7条)や、昇進の要件(第10条)、制服を着用できる条件(第19条の3)、予備自衛官であっても防衛功労賞や現職時に授与された防衛記念章を着用できること(第19条の5~7)などが規定されている。
この訓令に基づき「予備自衛官の任免等細部取扱いに関する達」において更に特技の指定や任免の条件等について詳細事項が定められているので興味のある方は併せて参照されたい。
なお、予備自衛官補と即応予備自衛官については「予備自衛官補の任免、服務、服装等に関する訓令」「即応予備自衛官の任免、服務、服装等に関する訓令」においてそれぞれ定められている。
(選考)
第6条 予備自衛官の採用のための選考は、予備自衛官志願票、自衛官離職者 身上書、即応予備自衛官離職者身上書等の資料に基づいて行う。ただし、必要があると認める者については、口述試験をあわせて行うものとする。
2 予備自衛官の継続任用の選考は、継続任用志願票、予備自衛官としての人事評価(第9条第1項の規定による人事評価をいう。)の結果又はその他の能 力の実証に基づく勤務成績(法第70条第3項の規定により自衛官となつて勤務したときの人事評価(人事評価に関する訓令(平成28年防衛省訓令第56号)第4条第1項の規定による人事評価をいう。次条第4号において同じ。)の結果又はその他の能力の実証に基づく勤務成績を含む。)等の資料に基づいて行うものとする。
(任用の基準)
第7条 次の各号のいずれかに該当する者は、予備自衛官に任用してはならない。
(1) 自衛官としての勤務期間が1年に満たない者(自衛官候補生から引き続き自衛官となつた者にあつては、当該自衛官候補生としての勤務期間と自衛官としての勤務期間とを通算した期間が1年に満たないもの)
(2) 現に常勤の隊員、法第44条の5第1項に規定する短時間勤務の官職を占める隊員、即応予備自衛官又は予備自衛官補である者
(3) 自衛隊法施行規則(昭和29年総理府令第40号。以下「規則」という。)第27条に規定する身体検査の基準に該当しない者
(4) 自衛官であつたときの人事評価の結果又はその他の能力の実証に基づく勤務成績が不良であつた者
(5) その他予備自衛官としてその職務に必要な適格性を欠く者
第7条の2 予備自衛官補の任免、服務、服装等に関する訓令(平成28年防衛省訓令第44号)第2条第5号に規定する予備自衛官補(技能)から任官される予備自衛官に対しては、当該予備自衛官が保有する特殊又は高度の技術及び知識の種類及び程度に応じて2等陸佐以下3等陸曹以上又は2等海佐以下3等海曹以上の階級を指定するものとする。
2 陸上幕僚長又は海上幕僚長は、自衛官との均衡を考慮して、前項の規定の実施に関し必要な事項を定めるものとする。
(職種等の指定)
第8条 予備自衛官に対しては、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「各幕僚長」という。)の定めるところにより、職種又は特技区分の指定を行う。
(昇進)
第10条 任命権者は、次の各号に掲げる階級を指定されている予備自衛官の区分に応じ、当該各号に定める要件を満たす予備自衛官のうち、適任と認められる者を1階級昇進させることができる。
(1) 2等陸佐以下陸士長以上、2等海佐以下海士長以上又は2等空佐以下空士長以上の階級を指定されている予備自衛官 次に掲げる要件
ア 昇進させようとする日(次号ア及び第3項において「昇進日」という。)の属する年度の前年度以前における直近の連続した2回の人事評価の全体評語が上位又は中位の段階であること。
イ 階級を指定されている期間(次号イ及び次項において「現階級指定期間」という。)において、通算して15日以上の訓練を受けていること。
(2) 1等陸士以下、1等海士以下又は1等空士以下の階級を指定されている予備自衛官 次に掲げる要件
ア 昇進日以前における直近の人事評価の全体評語が上位又は中位の段階であること。
イ 現階級指定期間において、通算して5日以上の訓練を受けていること。
2 任命権者は、前項の規定により昇進させることができる予備自衛官のうち、法第70条第3項の規定により自衛官となつて勤務したことがある者については、当該者が現階級指定期間において自衛官であつたときの人事評価の結果又はその他の能力の実証に基づく勤務成績を考慮した上で、昇進させるものとする。
3 第1項の規定にかかわらず、予備自衛官で次に掲げる特殊又は高度の技術及び知識を習得し、かつ、昇進日以前における直近の人事評価の全体評語が上位又は中位の段階であるものは、上位の階級に昇進させることができる。
(1) 医師、歯科医師、1級海技士(航海)又は1級海技士(機関)としての技術及び知識
(2) 看護師、救急救命士又は自動車整備士としての技術及び知識
(3) 前2号に掲げる技術及び知識に準ずるものとして陸上幕僚長又は海上幕僚長が定めるもの。
4 各幕僚長は、自衛官との均衡を考慮して、第1項及び前項の規定の実施に関し必要な事項を定めるものとする。
(免職)
(第12条) 予備自衛官が次の各号のいずれかに該当し予備自衛官として引き続き任用しておくことが適当でないと認められる場合には、これを免職することができる。
(1) 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくないとき。
(2) 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
(3) 前2号に規定する場合のほか、その職務に必要な適格性を欠くとき。
(4) 定員の改廃又は予算の減少により過員を生じたとき。
(5) 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
(6) 予備自衛官たるにふさわしくない行為のあつたとき。
(7) 常勤の隊員、法第44条の5第1項に規定する短時間勤務の官職を占める隊員又は即応予備自衛官となるとき。
(8) その他法及びこれに基づく命令に違反したとき。
(呼称の乱用の禁止)
第19条 予備自衛官は、法第69条の2第1項の規定に基づき呼称を用いるにあたつては、営利を図る目的等のために呼称を乱用することにより、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない。
(服装)
第19条の2 予備自衛官は、法第69条の2第2項及び第3項の規定に基づき制服を着用する場合には、自衛官服装規則(昭和32年防衛庁訓令第4号)の定めるところに準じて各種の服装をするものとする。
2 前項の規定による服装のうち、自衛官であつた者のき章等の着用については、人事教育局長の定めるところによる。
(防衛大臣の定める行事)
第19条の3 法第69条の2第3項第2号に規定する防衛大臣の定める行事は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1)冠婚葬祭の行事
(2)その他防衛大臣が特に指定する行事
(敬礼)
第19条の4 法第69条の2第2項及び第3項の規定に基づき制服を着用した予備自衛官は、自衛隊の礼式に関する訓令(昭和39年防衛庁訓令第14号)の定めるところにより敬礼を行なうものとする。
参考(自衛隊法第六十九条の二)
(予備自衛官の呼称及び制服の着用)
第六十九条の二 予備自衛官は、その指定に係る自衛官の階級名に予備の文字を冠した呼称を用いることができる。
2 予備自衛官は、第七十一条に規定する訓練招集命令を受けて訓練に従事する場合においては、防衛大臣の定めるところに従い、制服を着用しなければならない。
3 前項に規定するもののほか、予備自衛官は、次の場合には、防衛大臣の定めるところにより、制服を着用することができる。
一 自衛隊の行なう儀式その他公の儀式に参加する場合
(防衛功労章の着用)
第19条の5 表彰等に関する訓令(昭和30年防衛庁訓令第49号)第30条の規定は、予備自衛官の防衛功労章の着用について準用する。
(防衛記念章の着用)
第19条の6 予備自衛官のうち、自衛官であつた者については、自らの経歴を記念する防衛記念章を着用することができる。
2 前項の防衛記念章の着用要領については、防衛記念章の制式等に関する訓令(昭和56年防衛庁訓令第43号)第4条、第5条及び第6条の規定を準用する。
(予備自衛官勤続記念き章)
第19条の7 予備自衛官は、訓練招集に応じて出頭を重ねたことを記念する予備自衛官勤続記念き章を制服に着用することができる。
2 予備自衛官勤続記念き章の種類及び着用することができる者は、次の表に掲げるとおりとする。
種類 着用することができる者
第1号予備自衛官勤続記念き章 150日以上訓練招集に応じた者
第2号予備自衛官勤続記念き章 100日以上149日以下訓練招集に応じた者
第3号予備自衛官勤続記念き章 50日以上99日以下訓練招集に応じた者
第4号予備自衛官勤続記念き章 25日以上49日以下訓練招集に応じた者
資格を取れば10日の訓練で予備自衛官になれる
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
仕事が忙しいけど予備自衛官補に志願したい人へのオススメ資格
予備自衛官補に志願したいけど、50日(5日×10回)の教育訓練なんて無理だ、という方は結構いらっしゃるのではないかと思います。
実際に大阪地本に掲載されている予備自衛官補の訓練日程(平成30年度)を見てみると、ほとんどの訓練が平日の月から金までとなっています。訓練修了まで3年間の猶予があるとはいえ、単純計算で1年平均約17日の休暇を取得しなければならない計算となり、正直社会人でこの日程はきつい人が多いのではないかと思います。
そこでそんな方にお勧めしたいのが、予備自衛官補(技能)。一般の予備自衛官補と違い、技能区分の予備自衛官は2年以内に10日間(5日間×2回)の訓練を修了すれば予備自衛官に任官できます。しかも先述した大阪地本の訓練日程では全ての訓練に土日が含まれており、職場との調整がだいぶ軽減されるようになっています。
これは、防衛省側が一般区分の予備自衛官補を大学生、技能区分の予備自衛官補を社会人と想定している為かもしれませんが、何はともあれ、訓練に土日をはさんでいるので上手く行けば2年間で6日間の休暇を取るだけで予備自衛官に任官することができます。
「でも、技能区分に応募できるような資格なんて持ってないし…」という方。それならば資格を取ってしまえばよいのです。
2019年度予備自衛官補採用試験での技能区分受験資格はこちらの「予備自衛官補採用案内(技能公募)」から確認できます。医師や弁護士など高難易度の資格も記載されていますが、他にも多種多様な資格が列挙されており、実務経験や学歴等関係なく受験できるものもありますのでいくつか紹介したいと思います(2019年度現在の対象資格ですので今後変わってくる可能性もあります。ご注意ください)。
なお、予備自衛官任官時の階級については「予備自衛官の任免等細部取扱いに関する達 別表第一」を参照ください。
測量士の作成した計画の元で測量を行う為の技術者資格。この試験を取得するためには大学や高等専門学校等で所定の教育を受けるか、測量士補国家試験に合格する必要があります。技術区分は建設。予備自衛官に任官した際には3等陸曹の階級が指定されます(測量士は2曹)。
国家試験と言えど難易度はそれほど高くなく、平成30年度の合格率は33.6%でした。文系の方でも挑戦できるレベルでしょう。更に、測量士補の資格を取得すると土地家屋調査士(国家資格、不動産登記の専門家)試験の午前試験が免除になります。測量や登記分野のキャリアに興味のある人はスキルアップにも繋がるのではないかと思います。
ちなみに、上位資格である測量士は平成30年度試験で合格率8.3%の難関資格となります。
コンピューター、ネットワーク、プログラム等に関する情報処理技術者の国家資格。レベル4まである情報処理技術者試験の中でレベル2に位置づけられる資格です。技術区分は情報処理。予備自衛官任官時の階級は3等陸曹となります。
IT分野の技術者に必要とされる資格ですので、まったくの素人が挑戦するには難易度が高いかもしれません。もし、一からスタートするという方はまずレベル1の試験であるITパスポート試験合格を目指してみるのもよいでしょう。内容が一般人向けで試験も毎月実施されており、合格率も概ね50%程度と高いため、ITパスポート試験に合格してから基本情報技術者に挑戦すればモチベーションも維持できると思います。
昨年12月に定められた防衛大綱や中期防衛力整備計画ではサイバー防衛能力向上が課題として挙げられ、今後、情報処理技術者の重要性は自衛隊でも大きくなっていくものと考えられます。予備自衛官についても情報処理に係る技能公募予備自衛官転地訓練が実施されるなど、活躍の場が広がることが期待されます。
また、上位資格を取得することによって階級が上がっていく(応用情報技術者等で1等陸曹、ITストラテジスト等で陸曹長)というメリットもあります(詳しくは前記「予備自衛官の任免等細部取扱いに関する達 別表第一」参照)。
実用英語技能検定準1級
言わずと知れた英語に関する資格です。技術区分は語学。予備自衛官任官時の階級は3等陸曹です。因みに英検1級合格者や外国語大学卒業者の場合は2等陸曹になります。
準1級のレベルは「社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる。」とのこと(公益財団法人 日本英語検定協会HPより)。この他、外国語短期大学卒業者、国際連合公用語英語検定試験A級以上などでも応募可能です。
恐らく、予備自衛官の中で最も転地訓練の機会が多いのが語学区分の予備自衛官だと思います。東日本大震災で米軍との通訳として招集されたのは有名ですが、日米共同の指揮所演習や防災訓練でも語学区分の予備自衛官が通訳として参加しています。今後、米軍との連携がますます重視される中で、訓練だけでなく災害時の実任務にも活躍が期待されるでしょう。
勿論、簡単な資格ではないので普段英語に接していない人が取得しようとすれば時間がかかることは間違いありませんが、自身のスキルアップにも繋がりますし普段の仕事や日常生活でも生かせる資格ですので挑戦してみる価値はあると思います。場合によっては英検2級ぐらいから段階的に勉強してみてもいいのかもしれません。
以上、いくつか紹介しましたが、この他にも司法書士、電気主任技術者、陸上無線技術士、総合無線通信士など、無条件で受験できる試験はいくつかあります。また、実務経験が必要ですが2級建築機械施工技士、2級施工管理技士(建築、土木、管工事)は試験の難易度もそれほどではなく、建築土木業界で働いている方には本業のキャリアアップにもなるのでお勧めです。
最後に、当たり前ですが資格を取得しても肝心の予備自衛官補採用試験に受からなければ元も子もありません。身体検査の基準もありますので募集要項にはあらかじめ目を通しておいて下さい。
なお、2019年度より一般公募予備自衛官から即応予備自衛官へ志願することが可能になるとの報道が出ております。
防衛省のホームページでは何もアナウンスされていないのですが、技能区分で採用された予備自衛官が即応予備自衛官に志願できるのかどうかは不明です。一般公募の予備自衛官は技能区分の対象となる資格を取得すれば技能公募の予備自衛官になることができますが、その場合、即応予備自衛官に志願できなくなる可能性もあるので今後の動向にご注意ください。
特別職と会計年度任用職員と予備自衛官
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
以前、公務員が予備自衛官をやるうえで兼業許可が必要であると書きましたが、一般職の公務員とは別に、特別職の公務員というものが存在します。特別職とは国家公務員法第二条第3項、地方公務員法第三条第3項に規定される公務員で、基本的に国家公務員法、地方公務員法の適応を受けないことになっています。当然、副業制限も課せられません。
(一般職及び特別職)
第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。
○2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
○3 特別職は、次に掲げる職員の職とする。
(中略)
○4 この法律の規定は、一般職に属するすべての職(以下その職を官職といい、その職を占める者を職員という。)に、これを適用する。人事院は、ある職が、国家公務員の職に属するかどうか及び本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する。
○5 この法律の規定は、この法律の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない。
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
3 特別職は、次に掲げる職とする。
(中略)
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
例えば国会議員、地方自治体の首長、地方議会議員、副知事、副市長など、選挙や政治任用される公務員が代表的ですが、国会職員、裁判所職員、防衛省職員、消防団員なども特別職に含まれます。
ただし、国会議員については国会法第三十九条により他の国家公務員、地方公務員を兼ねることができず、また国会職員、裁判所職員、防衛省職員については国会職員法、裁判所職員臨時措置法、自衛隊法によって一般職の公務員と同じように副業制限が課されています。
逆に、地方議会議員は特別職の地方公務員のため地方公務員法が適応されず、他の法律で兼職の規制もされていないため予備自衛官をやるのに制限はありません。実際に少数ですが地方議員の予備自衛官もいるようです。
そしてここからややこしい話なのですが、地方法自体では非常勤の職員(所謂役所のバイト)が特別職だったりする場合があります。
地方自治体の非正規職員の種類には一般職非常勤、臨時的任用職員、任期付職員等の他に特別職非常勤職員という職種があります。「なんで役所のバイトが特別職なの?」と思われるかもしれませんが、地方公務員法第三条第3項で掲げられる特別職に中に以下のような条文があります。
三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職
この条文を根拠に特別職非常勤職員として例えば事務補助員や作業員などを任用しているわけです。特別職なのでその自治体で別に条例等で規制されていない限りは副業の制限はありません。予備自衛官の任官にも許可は不要です。ただし、実際に予備自衛官をやるなら職場に一言相談ぐらいはした方が良いと思います。
一方で、一般職の非常勤職員や臨時的任用職員については地方公務員法の適用を受けるので、予備自衛官をやろうと思ったら許可を得なければなりません。
さて、この特別職非常勤職員ですが、地方公務員法の改正によって令和2年4月1日より大幅に減少する予定です。地方公務員法の趣旨として、特別職非常勤職員は本来専門的な知識や経験を持つ人が就くべき職のはずなのに、実際は事務補助や単純作業の為に任用されている点が問題となり、学識経験者等以外は新たに創設される会計年度任用職員制度に移行されるとの事。
会計年度任用職員については、パートタイムの職員ののみ、副業制限の対象外となります。短時間の勤務では生活の安定に支障が出るため、他所で働いてもいいですよ、ということで、予備自衛官をやるにも問題ありません。ただ、フルタイムで働く会計年度任用職員については地方公務員法第三十八条が適応され副業が制限されることになります。
予備自衛官等関連資料 地方公務員法実例判例集(抜粋)
解説
自治省(現総務省)が地方公務員法に関わる判例、通知、通達、行政実例をまとめたもの。地方公務員の兼業については地方公務員法で制限されているが、予備自衛官制度が出来て間もない昭和30年に、地方公務員が予備自衛官を兼ねることの疑義について北九州水道組合(現北九州市上下水道局)と愛知県庁から地方公務員法の所管官庁である自治庁(自治省の前身)に対し照会が行われている。
自治庁からの回答は、地方公務員法第三十八条第一項の規定に基づく許可を受ければ地方公務員が予備自衛官を兼ねることができるというもの。また、職員として勤務しなければならない時間内に予備自衛官としての職務を行う(所謂、職務専念義務免除(職免)で予備自衛官の招集訓練等に参加する)場合は条例に特別の定めがなければならない事や、自衛隊法第七十条に基づく防衛招集を受け長期に渡り地方公務員として業務に従事できない場合は自衛隊法第七十三条第二項(予備自衛官であることを理由とする不利益取扱の禁止)に違反しない範囲内において無給休暇や休職等の処置をとる必要性が述べられている。
詳細は以下の記事も参照されたい。
〇職員が予備自衛官を兼ねることができるか
昭三〇・五・一七 自丁公発第八五号
北九州水道組合総務部長あて 公務員課長回答
「予備自衛官たる職員の身分取扱に関する疑義について」
照会
(一)自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第六十条第二項は「法令に別段の定 めがある場合を除き」自衛隊員の兼職を禁止するものであるが、本条項は同法第七十五条により予備自衛官については適用を除外されることとなっている。
同じく第六十条第三項「総理府令で定める場合を除き」兼職を許された場合でも給与をうけることは出来ない旨と規定するものであるが、これも同法第七十五条により予備自衛官についてはその適用を除外されることとなつている。従つて、予備自衛官は、「防衛庁以外の国家機関の職を兼ね、又は地方公共団体の機関の職につくことができ」、同時に給与をうけることも出来ることとなっている。
しかるに、地方公務員法第三十五条は、地方公共団体の職員は、原則としてその職務に専念する義務があることを定め、同時に第三十八条は、職員は、任命権者の承認無くしては、「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」旨を規定している。
地方公務員たる当組合職員が、任命権者の許可なくして予備自衛官を志願し、採用された場合、地方公務員法第三十八条の規定に違反するものと解するが、この点の御見解如何。
(二)又、自衛隊法第八章雑則には、労働組合法等の隊員に対する適用の除外を定めているが、地方公務員法との関係については何等調整条項は在しない。従つて、例えば、自衛隊法第七十五条の規定による同法第六十条第二項および第三項の適用除外と、地方公務員法第三十五条および第三十八条第一項の規定のいずれを優先せしめるべきか。即ち、地方公務員たる者が予備自衛官となった場合の身分取扱に関する地方公務員法の規定と自衛隊法の規定との関係如何。
(三)更に、当組合は、地方自治法第二百八十四条第一項の規定に基く特別地方公共団体であるが、地方公営企業たる性格上、地方公営企業法の適応を受けるため、組合の業務に従事する職員は、管理監督の地位にある者を除き、地方公営企業労働関係法第五条により団結権を有しているが、これと自衛隊法第六十四条第一項との関係如何。
(四)自衛隊法第六十条第二項、第三項にいわゆる「機関の職」の意義をも併せてお尋ね致したい。
回答
(一)職員が予備自衛官を兼ねようとするときは、地方公務員法第三十八条第一項の規定に基く任命権者の許可を受けなければならない。なお、当該許可を得て予備自衛官となった職員は、職員として勤務しなければならない時間内に予備自衛官としての職務を行う場合においては、同法第三十五条の規定に基く条例に特別の定がなければならないので、念のため。
(二)および(三)地方公務員の身分と予備自衛官の身分を併せ有している者については、それぞれの身分について、それぞれの関係法令が適用されるものである。
(四)自衛隊法第六十条第二項及び第三項の地方公共団体の機関の職とは、地方公務員法第三条第二項及び第三項に規定する職をさすものと解する。
〇職員が予備自衛官を兼ねることができるか
昭和三〇・六・一三 自丁公発第一〇一号
愛知県総務部長あて 公務員課長回答
「予備自衛官を兼ねることの疑義について」
照会
一 一般職の職員が予備自衛官となることは、地方公務員法第三十八条に基く任命権者の許可があれば差支えないと思われるがどうか。
二 差支えないとすれば、予備自衛官手当及び訓練招集手当の支給を受けることができるか。
三 できるとすれば、地方公務員法第二十四条第四項の重複給与禁止規定があるので、勤務しなかつた時間に対する給与は、減額すべきが妥当と思われるがどうか。
四 自衛隊法第七十条により防衛招集をうけ、長期に亘る場合、身分上の取扱いは如何にすべきか。
回答
一 さしつかえない。
二 受けることができるものと解する。
三 お見込みのとおり。
四 設問の場合は、自衛隊法第七十三条第二項の規定に違反しない範囲内において、それぞれ具体的事情に応じて、当該職員に無給休暇を与え、又は当該職員を休職する等の措置をとることが必要であると解する。
予備自のことをネットで書いても大丈夫なのか?
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
何年かぶりに予備自衛官の訓練に参加して変わったなと思ったのが、情報保全について。
もう訓練招集中は一切、画像や動画を撮るな、SNSやブログで訓練招集の事は絶対に書くなと言わんばかりの勢いです。予備自でブログ等をやっている方の中にはわざわざ駐屯地記念行事や一般公開イベントに行ってブログ用の写真を撮っている人もいるみたいです。
私も予備自に関するブログを書いておりますが、内容は防衛省や各地本のホームページ、メディア媒体等で既に発表されていたり、公開情報で誰でも閲覧ができるものに留めております。ブログやSNSに掲載するにしても、おそらくこの範囲なら特に問題はないのではないかと思います。
それでも、予備自招集訓練の内容をネット上で紹介したいと思われる方もいるかもしれませんが、正規の手続きとして以下の方法があります。
以下、資料より抜粋(防衛省情報検索サービスで誰でも閲覧できます)。
(論文等の外部への発表)
第12条 隊員は、防衛省以外に記事、論文その他の著作、写真及び動画等により自衛隊に関するものを発表(インターネット等情報通信技術を利用するものを含む。)する場合は、あらかじめ管理者等の秘密保全上の承認を受けなければならない。
部外に対する意見の発表に関する手続の徹底について(通達)(平成21年3月23日陸幕総第246号)
予備自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官補については、常勤の自衛隊員とは異なる特殊な性格を踏まえ、招集を受けて現に自衛官となっている者を除き、部外に対する意見の発表に関する広報上の手続の適用を要しないものの、自衛隊員としての守秘義務があることから、秘密保全に関する達第12条に基づき、予備自衛官及び予備自衛官補については、自衛隊地方協力本部長の承認を、即応予備自衛官については、指定部隊の管理者等の承認を受けるものとする。
以上のように予備自衛官、予備自衛官補については所属の地方協力本部長(恐らく実際の窓口は援護課になるでしょう)、即応予備自衛官については指定部隊(所属部隊)の管理者等(誰に提出していいかわからなければとりあえず幹部か中隊の先任に相談すればいいのではないかと)の承認を得ればネット上でも掲載は可能です。
予備自衛官等の年齢制限について
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以前の記事でも少し触れましたが平成30年10月1日より、予備自衛官等の採用上限年齢が引き上げられています。
具体的には予備自衛官の場合、退職時に士長以下の階級だった者はこれまでの上限年齢37歳未満から55歳未満へ。即応予備自衛官については陸士長以下の階級だった者は上限年齢32歳未満から50歳未満までと、大幅に引き上げられています。
その他、陸曹、幹部については、平成30年度より1佐の予備自衛官採用が開始されたこと以外は変更ありません。簡単にまとめると以下のようになります(記事投稿日時点でのデータです)。
対象者
自衛官として、1年以上勤務した者で、採用時の年齢が、それぞれの階級に応ずる年齢未満の者(海上自衛官・航空自衛官を含む)。
1佐 58歳未満
2佐・3佐 57歳未満
1尉・2尉・3尉・准尉・曹長・1曹 56歳未満
2曹・3曹・士長・1士・2士 55歳未満
対象者
自衛官として、1年以上勤務し、退職後1年未満の元陸上自衛官又は陸上自衛隊の予備自衛官として採用されている者。
2尉・3尉・准尉・曹長・1曹 51歳未満
2曹・3曹・士長・1士 50歳未満
公式情報が見たい方はこちらへ。
予備自衛官はともかく、即応予備自衛官は退職時の階級が士長だったため年齢制限で志願したくてもできなかった人には朗報かと思います。
興味のある方は居住地の地本に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
地本ホームページのお役立ち情報
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自衛隊の総合窓口である地方協力本部。一昔前は地方連絡部(地連)と称し、募集担当の広報官をチレンジャー等と呼んでいたのも今は懐かしい話。全国50ヶ所(北海道4ヶ所、その他都府県各1ヶ所)に置かれ予備自衛官関連業務も地本が担当しています。
これら地本にはそれぞれホームページがあり、予備自衛官訓練予定表が掲載されていたりするので(地本によっては訓練期間から担当部隊まで分かります)私はよく閲覧したりしているのですが、そのほかにも結構役立ったり面白いことも書かれているので少しご紹介いたします。
千葉地方協力本部
平成30年に新設されたコア部隊、第103補給大隊(霞ヶ浦駐屯地)の情報を見ることができます。普通科連隊の即自ですと、D、F日程で4日間連続の訓練に出頭しなければなりませんが、補給大隊だと訓練出頭は最大3日間連続の訓練になるとのことです。
社会人として働きながら即自をやっている方には今更の話ですが、土日がかぶっているとはいえD日程やF日程の訓練で4日連続間出頭するのは仕事との兼ね合いでかなりきついです。訓練出頭が最大3日というのは1日の差といえど職場との調整がだいぶ楽になるのではないでしょうか。
コア部隊の補給大隊はこの他に中部方面後方支援隊の第101補給大隊(桂駐屯地)と東北方面後方支援隊の第102補給大隊(仙台駐屯地)があります。この他にも各方面後方支援隊隷下の弾薬中隊や普通科コア部隊の整備を担当する普通科直接支援中隊もコア部隊です。
一時期は普通科に集約されていた即自も現在は部隊のバリエーションが増えつつあるようですので、後方職種出身で即自をやってみたいけどいきなり普通科はなぁ…と思っている方がいれば、こちらの方を目指してみてもいいのではないかと思います。
栃木地方協力本部
予備自衛官各種届出について(リンク先の一番下)
予備自衛官に必要な各種届出の書式がダウンロードできます。宛先が「気付先 自衛隊栃木地方協力本部長」となっているものは栃木地本所属者しか使えませんが、参考にはなるのではないかと思います。
なお、届け出の書式は神奈川地本HPでもダウンロードすることができます。
静岡地方協力本部
自衛隊で取得した第1種大型自動車免許の但し書き(大型車は自衛隊用自動車に限る)は警察で削除できますが、そうしてしまうと免許が中型自動車扱いになり予備自衛官になっても自衛隊の大型車両を運転できなくなるとのことです。
このお知らせページにはその他にも「私物の迷彩服を訓練で使用できますか」など色々と情報が充実しているので一度ご覧になってはと思います。
神奈川地方協力本部
メールフォームから予備自志願が可能です(基本は神奈川県在住の方限定ですが)。恐らくメールフォームで予備自に応募できるのはここぐらいかと思います。
茨城地方協力本部
ページの一番下にある「予備自衛官等制度について詳しく見る」で表示されるパンフレットが非常に充実しています。予備自志願に当たって大抵の疑問はこれを読めば解決すると思います。ただし、志願上限年齢など一部古い情報が混じっているので注意。
この他にも、災害招集に参加した予備自衛官の体験記、女性予備自衛官へのインタビュー、訓練内容の紹介など様々な情報が掲載されています(中には防衛省の予備自サイトへのリンクだけという地本もありますが…)。一度、自分が住んでいる都道府県の地本ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。新しい発見があるかもしれません。防衛省のホームページには地本のアドレス一覧が出ています。
なお、予備自とは直接関係ありませんが、最近は自衛隊関係のイベント情報も地本のホームページやツイッター、フェイスブック等で積極的に発信されています。興味がある方は併せてご覧ください。
予備自衛官をやる上で知っておきたいお金の話
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。
※R4.11.03改稿
お金の為だけに予備自衛官をやっている人はそうそういないと思いますが、実際にいくらもらえるのかというのは結構気になる話です。今回は予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補の手当について紹介していきたいと思います(なお、金額は記事投稿日時点でのものです。また源泉徴収分は考慮していませんのでよろしくお願いします)。
予備自衛官の手当は毎月支給される「予備自衛官手当」と年5日の訓練招集に出頭すると支給される「訓練招集手当」の二つ。予備自衛官の場合、階級による手当額の差はないので2等陸士から1等陸佐まで支給される金額は一緒になります。詳細は以下の通り。
予備自衛官手当 4,000円×12カ月=48,000円
訓練招集手当 8,100円×5日=40,500円
合計 88,500円
※公募予備自衛官から即応予備自衛官任用への基本特技取得のための訓練招集手当は日額8,300円
参照
防衛省の職員の給与等に関する法律第二十四条の三第2項
防衛省の職員の給与等に関する法律施行令第十七条の十四第1項
なお、予備自衛官は「方面総監が必要と認めるときは合計して年間20日を超えない範囲で特別な招集訓練に参加可能」(予備自衛官中央訓練や予備自衛官転地訓練など)ですのでそれらの訓練に参加した場合は受け取る手当も増えることになります。
毎月支給される「即応予備自衛官手当」と訓練招集(年間30日)に出頭すると支給される「訓練招集手当」があります。即応予備自衛官の場合は階級により「訓練招集手当」に差があるので総支給額も階級で変わります。詳細は以下の通り。
即応予備自衛官手当(全ての階級で共通) 16,000円×12カ月=192,000円
訓練招集手当
2尉 14,200円×30日=426,000円
3尉 13,700円×30日=411,000円
准尉、曹長、1曹 13,200円×30日=39,6000円
2曹 12,600円×30日=37,8000円
3曹 11,300円×30日=339,000円
士長、1士 10,400円×30日=312,000円
従って30日全て出頭した場合の年間支給総額は以下のようになります。
2尉 618,000円
3尉 603,000円
准尉、曹長、1曹 588,000円
2曹 570,000円
3曹 531,000円
士長、1士 504,000円
この他に1任期(3年)を良好な成績で勤務すると支給される「勤続報奨金」120,000円があります。
参照
防衛省の職員の給与等に関する法律第二十四条の四第2項
防衛省の職員の給与等に関する法律施行令第十七条の十四第1項
防衛省職員給与施行細則第12条の2第1項
自衛隊法施行規則第八十六条の三第1項
「教育訓練招集手当」のみとなります。予備自衛官補は「一般」と「技能」に分かれますが、手当の額に違いはありません。ただし、訓練日数が異なるため(「一般」は3年以内に50日、「技能」は2年以内に10日)総支給額は変わってきます。詳細は以下の通り。
教育訓練招集手当
予備自衛官補(一般) 8,500円×50日=425,000円
予備自衛官補(技能) 8,500円×10日=85,000円
参照
防衛省の職員の給与等に関する法律施行令第十七条の十五第1項
これらの手当ですが、毎月支給されるわけではなく2月、5月、8月、11月の3カ月毎支給となります。
ただし、正当な理由無く訓練に出頭しなかった場合は、手当の支給は停止されます。訓練招集命令書が発行された後で都合が悪くなった場合は可能な限り早く地本や担当部隊に連絡しましょう。特に即応予備自衛官の場合は勤続報奨金の支給条件にも関わってきますので、無断で出頭しなかったなどという事は絶対に無いようにご注意を。
公務員は予備自衛官になれるのか?
※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。
※以下の記事も参照ください。
自衛隊に関わったことがある方ならご存じのことだとは思いますが、基本的に予備自衛官は普段、仕事(生業)に従事しつつ訓練招集を受け、有事には各種招集命令が発せられて自衛官として任務に従事するわけです。当然、訓練招集には手当(お金)が発生するわけですが、ここで気になるのが「地方公務員、国家公務員は予備自衛官になれるの?」というお話。
勿論、一般企業でも就業規則で副業を禁止しているところもありますが、地方公務員、国家公務員は特に法律で副業が制限されています。
(他の事業又は事務の関与制限)
第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
「えっ? 自衛隊は営利企業じゃないから大丈夫でしょ?」と思われるかもしれませんが、要するに私企業だろうと官公庁だろうとNPO法人だろうと勝手にお金をもらって働いてはいけませんよという事です。
地方公務員法の所管官庁は総務省ですが、前身の自治省が発行した地方公務員法実例判例集においても地方公務員が予備自衛官を兼ねようとするときは地方公務員法第三十八条の規定に基づく任命権者の許可を受けなければならないと判断されています。
国家公務員についても人事院等の具体的な文書は見つけられませんでしたがやはり所管庁の長の許可が必要でしょう。
ただ、逆を言えば正式な手続きを踏んで許可を得ることができれば予備自衛官になることは可能という事。
国家公務員、地方公務員の副業制限については、そもそも以下の法令を遵守するためという趣旨によります。
(信用失墜行為の禁止)
第九九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(秘密を守る義務)
第一〇〇条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
(職務に専念する義務)
第一〇一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
(信用失墜行為の禁止)
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(守秘義務)
地方公務員法第三十四条
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
(職務専念の義務)
地方公務員法第35条
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
要約すれば公務員の信用を損ねるような副業をしたり、職務上知り得た情報を利用して商売をしたり、副業のせいで本来の業務に支障が出るようなことがあってはならないので副業をやるなら事前に許可を取りなさいということ。
これを予備自衛官に当てはめてみれば、職の名誉を傷つけるわけでもなく、職務上知り得た秘密を利用する余地もなく、体を動かすとはいえそこまで無理に追い込むようなものでもない予備自衛官は、公務員の副業として十分認められる余地があるのではないかと思います。
実際に地方公務員、国家公務員の予備自衛官は平成23年度で約1300人、即応予備自、予備自補はそれぞれ約50人いるそうです(第180回国会 予算委員会第一分科会 第1号(平成24年3月5日(月曜日))より)。特別職(兼業制限が適応されない公務員、主に地方議会議員など)も含めた数値だと思いますが、とりあえず平成29年度の予備自衛官実員(約33000人)を元に計算すると予備自衛官の約4%が国家公務員、地方公務員という事になります。意外と多いですね。
因みに私もこの約1300人(現在は多少減少していると思いますが)の内の一人でございます。
国家公務員、地方公務員で予備自をやってみたいと思っている方。何はともあれまずは最寄りの地方協力本部に相談してみてはいかがでしょうか。担当者にもよりますが様々な事例を知っているので色々相談に乗ってくれますよ。
最後に、当たり前ですが防衛省の職員は予備自衛官になることができません。ただし、期間業務隊員(非常勤隊員)は兼任することが可能だそうです。
自衛隊退職後、ブランクがあるけど予備自衛官に志願したい方へ
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予備自衛官になるパターンは大体次の2つではないかと思います。
- 任期満了、定年等で退職し、そのまま予備自衛官になる人
- 予備自衛官補の教育訓練を修了し予備自に任官した人
任満や定年の人は、退職前に人事係へ申し出れば手続きしてくれますし、予備自衛官補は教育訓練が終われば自動的に予備自衛官です。
一方で、退職後、何らかの理由で数年のブランクがあるけど予備自衛官をやってみたいと思った人はどうしたらいいのでしょうか?
そういう場合、各地本協力本部の援護課(地本によっては名称が予備自衛官課、予備自衛官室だったりします)で予備自衛官志願者の受付しています。
とりあえず現住所を担当する地本に電話を入れてみましょう(各地本の連絡先はこちら。神奈川県在住の方は神奈川地本HPのメールフォームからも応募できます)。受付に「元自衛官ですが予備自衛官に志願したい」と伝えれば担当部署につないでくれます。その後の具体的な手続きは地本担当者の説明を聞きましょう。
因みに私も仕事の都合で何年かブランクが空いたのち再び予備自に志願したクチでした。私の場合は電話で説明を受けるのもまどろっこしいと思ったので、地本の担当者と日時を調整し平日に休みを取って直接説明を聞きに行きました。担当事務官に応対して頂きましたが、一旦自衛隊と縁が切れてから予備自に志願してくる人はあまりいないそうで、珍しいと言われたのを覚えています。
その後、身体検査(駐屯地の都合で平日を指定される場合もあるので注意)や必要書類を提出し、選考を通過すると晴れて予備自衛官として採用となります。人によっては身体検査が気になるところだと思いますが、退職後に健康状態が滅茶苦茶悪化してでもない限りほぼ大丈夫だと思います。以前は予算の問題で志願者全員が予備自になれなかった時期もあったように記憶していますが、現在は充足率が低下しているせいか志願すればほぼ採用される様子。
なお、地本に連絡を取ってから手続きが完了して予備自衛官になるまでは時期によって数カ月かかる場合もあります。なかなか連絡が来ないと焦るかもしれませんが、地本も忙しいみたいなのでやたらと催促の電話を入れるようなことはせず、落ち着いて待ちましょう。
平成30年10月1日から予備自衛官、即応予備自衛官の採用上限年齢が大幅に引き上げられました(詳しくは防衛省HPで)。今まで年齢制限で諦めていた方も予備自衛官に志願できるチャンスです。これを機に志願してみてはいかがでしょうか?