予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

一般人が即応予備自衛官になる方法を1から説明する

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

予備自衛官等制度とは

 

 我が国の予備自衛官等制度は諸外国の予備役に相当するものであり、平時は定められた日数の訓練を受け、有事の際は招集されて最前線部隊や後方警備等の任務に従事するものでです。

 

 予備自衛官等制度は予備自衛官即応予備自衛官予備自衛官補の三つから成っており、有事の際に常備自衛官と同じく最前線で任務に従事するのが即応予備自衛官、後方や駐屯地の警備任務等に従事するのが予備自衛官です。即応予備自衛官予備自衛官は元自衛官からの任用されますが、自衛隊経験の無い一般人についても予備自衛官補として採用され教育訓練を修了すれば予備自衛官に任官することが可能です。

 

 更に令和元年度からは一般公募予備自衛官から即応予備自衛官への志願も可能となりました。実際に教育訓練を修了して即応予備自衛官に任官されている方も続々と増えつつあります。

 

 では具体的に一般人が予備自衛官補を経て即応予備自衛官になるにはどのようにすればいいのか? 今回は一連の流れを解説したいと思います。

 

 ちなみに、自衛隊に入隊して1年以上勤務すれば陸海空関わらず退職後は即応予備自衛官になることができます。今は自衛官候補生、一般曹候補生の志願者が不足しているみたいなので我こそはという方は入隊しましょう(切実)。

 

予備自衛官補になるには

 

 さて、自衛隊経験のない方が即応予備自衛官になるにはまず予備自衛官補に採用されなければなりません。この際、気を付けなければならない点として、予備自衛官補には「一般」と「技能」の二つのコースに分かれています。「一般」は特に資格が無くても18歳以上、34歳未満ならば応募資格があります。一方「技能」は医師や看護師、弁護士等の資格を持った人に限定されますが、資格により53歳未満から55歳未満まで受験可能です。

 

 即応予備自衛官に志願できるのは現在の所、予備自衛官補(一般)から予備自衛官に任官した者のみですので即応予備自衛官になりたい方は一般の予備自衛官補に応募しなくてはなりません。

 

 つまり34歳以上の方は残念ながら即応予備自衛官にはなれないという事になります(ただし、技能予備自衛官補の応募資格については比較的簡単に取得できるものもあるので、一般公募が年齢的に無理でも資格を取って技能公募として予備自衛官になる道は残されています。こちらも参照ください)。

 

 予備自衛官補(一般)に応募するために一番手っ取り早いのは、地方協力本部(通称「地本」)に問い合わせをすることです。自衛隊では隊員募集業務を地方協力本部の募集課が担当していますが、細かいことは考えずに住んでいる都道府県の地本に電話して「予備自衛官補に志願したいです」と言えば担当部署につないでくれます。

 

 地本の連絡先一覧はこちら。

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 残念ながら令和2年度の採用試験は終了してしまいましたが、毎年1月から4月あたり(募集状況によっては7月~9月に第2回の募集を行う事もある)に応募期間を設けているので次回の採用試験に応募したい方は年明けに地本に電話すればタイミング的にもちょうどいいのではないかと思います。

 

防衛省募集HP

www.mod.go.jp

 

 ここから採用試験受験までは、正直ここで書くことはほとんどありません(勉強は必要ですが)。地本には広報官という募集担当の自衛官がおり、疑問点等があればそれこそ手取り足取り教えてくれます。

 

 初めて自衛隊を受験される方は、「視力が低い」とか「アトピーだけど大丈夫なのか」、「筆記試験はどんな問題が出るのか」、「面接はどんなことを聞かれるのか」など色々と不安になると思いますが、あれこれ悩むよりはまず広報官に聞いてみましょう。力になってくれると思います。

 

 ちなみに筆記試験については高校卒業程度(国語、数学、理科、社会、英語、作文)です。短期間で点数を伸ばしたい方は数学に力を入れると良いのではないかと思います(基本的に公務員試験では数的推理、判断推理などの解答法が分かっていれば解ける問題で点数を稼ぐのがセオリー)。

 

予備自衛官補の訓練

 

 さて、無事試験に合格して採用されたとしましょう。ここからが最大の難関となる予備自衛官補の教育訓練です。一般の場合、3年以内に50日の訓練を受ける必要があります。

 

 肉体的、精神的な問題で訓練自体についてこれない人はそこまでいないと思います。最初は慣れないことも多く大変かもしれませんが、モチベーションがあればやり遂げることはそこまで難しくないはず。

 

 それよりも問題なのはどうやって訓練出頭の時間を確保するかだと思います。予備自衛官補(一般)の訓練は5日間×10回で実施されますが、おおむね平日に訓練が行われるため、学生の方はともかく社会人にとってはだいぶきついスケジュールとなっています。

 

 ただ、この訓練を修了して予備自衛官にならなければ即応予備自衛官への道も閉ざされてしまうので、どうにか頑張るしかありません(ちなみに予備自衛官補(技能)については期間が2年以内と短いですが日数は10日(5日×2回)で更に土日を含めた日程が組まれているため、訓練修了は社会人でも比較的容易です)。

 

即応予備自衛官になるために

 

 頑張って教育訓練を修了し予備自衛官に任官したら、いよいよ即応予備自衛官に志願することができます。教育訓練修了式には恐らく地本の担当者も来ると思いますので、志願したい旨を伝えてみましょう。また地本に直接電話して志願するのもアリです。

 

 即応予備自衛官に任官するためには基本軽火器(小銃手等)で36日、基本迫撃砲(小銃中隊の迫撃砲小隊もしくは重迫撃砲中隊で迫撃砲の操作に携わる)で39日の訓練を受け特技(MOS、自衛隊の部内資格)を取得しなければなりません。これには最低2年から最長3年の期間(やむを得ない場合は1年延長可)がかかります。

 

 1年ですべての訓練を終えられないのかと思った方もいるかもしれませんが、予備自衛官補と違い予備自衛官は年間に受けることのできる訓練の上限が決まっています。即応予備自衛官を志願したといっても、身分はまだ予備自衛官ですので1年間に受けられる訓練の上限は20日となり、即応予備自衛官に任官する為にはどうしても1年以上の期間が必要になってしまいます。ただ、即自になるための訓練については予備自衛官補と違い土日が中心ですので仕事との調整はまだ苦労しないのではないかと思います。

 

 訓練を受ける部隊は現在の所、普通科連隊に限定されているみたいですが、コア部隊の雰囲気についてはこちらもご参照を。

 

 なお、予備自衛官から志願して即応予備自衛官に任官した場合、雇用企業には自衛隊から即応予備自衛官育成協力企業給付金として56万円が給付されます(各種条件有)。ただし雇用企業の側から申請しなければもらえませんので、勤務先へのアピールもかねて有効活用していきましょう。

 

奈良地本HP

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 無事、教育訓練を修了すればMOSが付与され晴れて即応予備自衛官に任官です。今後は年間30日の訓練出頭をこなしていかなければならず大変かもしれませんが、即応予備自衛官は訓練招集も常備自衛官に準じた内容で、災害招集の機会も予備自衛官より多くやりがいや充実感は大きいと思います。もし、即応予備自衛官を目指して予備自衛官補(一般)に志願する方がいるなら、是非ともその目標を達成して頂きたいと思います。