予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

予備自衛官補のような制度は諸外国もやっているし普通に戦力化している

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 我が国の予備自衛官補制度は、自衛隊未経験者に50日(技能公募は10日)の訓練を実施し、予備自衛官として任用するものです。軍事制度に詳しい人からしてみれば一般的に予備役の軍人は除隊した軍人がなるものだという認識だと思います。ひょっとすると予備自衛官補のような制度を運用しているのは日本の自衛隊だけだと思っている方もいるかもしれません。

 

 しかしながら実は一般人を訓練して予備役の軍人とする制度は世界的に珍しくありません。例えばアメリカ合衆国の州兵は一般人が10週間の基礎戦闘訓練と特技訓練を受けた後、非常勤の州兵とするものです。

 

 また、イギリスの国防義勇軍やフランスの国民衛兵、以前当ブログでも紹介したポーランドの領土防衛軍なども一般人を訓練して予備役とする制度です。

 

 この中でアメリカの州兵やイギリスの国防義勇軍将兵は実際にアフガニスタンイラクの戦場に派遣されて活躍しています。制度的には予備自衛官ではなく即応予備自衛官に近い運用がなされているようです。

 

 予備自衛官と諸外国の予備役制度を比較してみると、まず目につくのが年間訓練日数の差です。例えばポーランドの領土防衛軍は最初の訓練期間こそ16日(軍隊未経験者)と予備自衛官補の教育訓練招集より少ないものの、年間の訓練日数は36日と即応予備自衛官を上回る日数です。これは米州兵も同じで、毎月1回の週末訓練と年1回の2週間訓練により約40日の訓練が課せられています。

 

 予備自衛官の場合は、まじめに訓練出頭していれば自動的に陸士から陸曹になれますが、諸外国の予備役では志願して教育を受けたうえで下士官に任官するという国もあります。また、大卒者に対しては将校への道が開かれているのも予備自衛官制度にはない特徴でしょう。

 

 このように充実した教育訓練の成果が予備役部隊のイラクアフガニスタンでの活躍ではないかと思います。

 

 予備自衛官補制度では教育訓練招集を50日と、比較的長時間にわたって確保していますが、予備自衛官任官後の訓練招集は年間5日間と、恐らく諸外国の中でも最低クラスではないかと思います。後方警備要員としてはそれでも十分なのかもしれませんが、これでは技能の維持が精一杯で、特に一般公募予備自衛官のモチベーション向上については難しいと言わざるを得ません。

 

 平成31年度より一般公募予備自衛官から即応予備自衛官への志願が可能となりましたが、勤め先の事情等もあり、希望者全員が即自に志願できるわけではないと思います。土日は訓練に行けるが平日はそう何日も休めないという人もいるでしょう。また、技能公募予備自衛官についても技能訓練という場があるとはいえ年5日間の訓練では新しい知識の習得もなかなか難しいのではないかと思います。

 

 予備自衛官の訓練は基本的に年1回(分割出頭の場合は年2~3回)であり、訓練出頭の間隔が長期間に渡ってしまうため、せっかく教育を受けても技能の定着が難しいという問題もあります。

 

 予備自衛官の年間出頭上限は20日なので、希望者には土日2日間の訓練機会をもっと増やすことができれば良いのですが、受け入れ部隊の都合もあり(予備自訓練の為、常備部隊の訓練が疎かになっては本末転倒)なかなか難しいのが現実ではないかと思います。

 

 そこで一つ提案というか思い付きなのですが、予備自の教育を予備自自身が行うというのはどうでしょうか?

 

 例えば赤十字の救急法講習や消防が行う救命講習については赤十字職員や消防職員だけでなく、資格を持ったボランティアが受講者に指導を行っています。赤十字の講習の場合は30時間の学科・実技講習を受けて検定に合格した指導員が救急員養成講習の講師を務めており、地域によっては赤十字職員よりも指導員の方が主となって講習を行っています。

 

 予備自衛官の場合、常備を定年退職したベテランの他、弁護士、司法書士、医療従事者や重機オペレーター(建設機械施工技士等)、測量士(補)等、多様な職業、様々な資格を持っている隊員がいます。そのような隊員の中から必要な技能・適性を持つ者を選抜・訓練し、一般の予備自衛官に教育を行わせることで予備自衛官の技能を向上させることは人材面で十分可能だと思います。

 

 このような取り組みは一部で実際に行われていて、隊友会自衛隊OB会)の新聞「隊友」令和元年9月15日号によれば、第47普通科連隊で行われた技能公募予備自衛官招集訓練において現役弁護士の予備3佐(技能公募予備自)が常備隊員に対し法務教育を実施したとの事です。

 

 勿論、安全管理等の観点から常備自衛官の監督下での訓練であることは必須でしょうが、それでも常備自衛官の負担は軽減されると思います(受入部隊の担当教官の仕事量は逆に増えるかもしれませんが・・・)。このようにすれば予備自衛官の年間訓練招集日数もある程度増やすことができ、招集訓練の間隔も短くなって教育内容の定着にも効果があるのではと思います。また、訓練招集に対するモチベーションが上がると共に教育する側の予備自衛官についても指導力の向上が期待できます。

 

 即応予備自衛官をやっていて思ったのですが、年度の前半にまとめて訓練を受けた時よりも毎月1回継続的に訓練を受けた方が効率的に技能を習得できました。訓練と訓練の間隔があいてしまうと、どうしても忘れてしまうことがあったりして、練度が下がってしまうのです。

 

 ともかく、予備自衛官の練度を向上させるには訓練日数と訓練頻度の増加が一番効果的でしょう。従来の5日間訓練に加え土日を中心とした2日間訓練を反復し年間20日出頭が実現できれば、平均して月1.7日の訓練となり練度の向上は十分に可能です。

 

 防衛省予備自衛官の活用を施策として挙げていますが、被教育者としてだけでなく指導者としての人材を予備自衛官の中に求め、予備自衛官全体の能力開発と向上につなげることができないかと思います。