予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

奨学金としての即応予備自衛官制度

 河野太郎防衛大臣ライブ配信で、任期満了後に大学進学する任期制自衛官に学費や生活費を支援する制度を考えていると仰っていました。

 

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(該当箇所は59:30辺りから)

 

 河野大臣はアメリカのGI Bill(復員軍人援護法)を参考として挙げつつ、任期制自衛官自衛官候補生)が任期満了後に大学に進学する場合、自衛隊が学費を持つ、又は生活費を支援する代わりに大学4年間は即応予備自衛官に登録してもらう、という制度を考えているようです。要するに退職自衛官を対象とした条件付奨学金ですね。

 

 自衛官候補生の志願者増加と即応予備自衛官の充足率向上を可能にする一挙両得な政策と言えるのではないかと思います。

 

 自衛官候補生は2~3年を1任期として採用される任期制の自衛官ですが、少子化や民間の求人増も相まって募集難の状況が続いています。任期満了後に奨学金が出るとなれば志願者の増加にもつながるでしょう。

 

 また、即応予備自衛官は年間30日の訓練を受け、有事の際に招集される非常勤の自衛官ですが、主に仕事との兼ね合いが難しく充足率の低下が続いていました。大学生なら夏休みや春休み等を利用して訓練に参加するのことも可能ですので学業との両立も難しくありません。

 

 問題としては、実際にこの制度が実現したとしてどれぐらいの任期制自衛官が大学に進学するかという点です。自衛官が大学進学を目指す場合、一番の問題となるのは学力の問題です。例えば、陸上自衛隊自衛官候補生は入隊後約6か月の新隊員教育を受けますが、その間は勿論、受験勉強などできません。また、部隊配属後も教育や演習など勉強に集中できない期間も多く、よっぽど努力しなければ学力向上は難しいのではないかと思います。必然的に社会人入試やAO入試も視野に入れることになるでしょう。

 

 その他、大学を中退した場合の取扱いや、給付の条件(陸自と海空自は1任期の年数が違う)をどうするのか等、制度設計上の課題は多々あると思います。「自衛隊だけそんな制度を認めるのはおかしい」とか「経済的徴兵制だ」みたいな批判も出てくるでしょう。しかしながら自衛隊にとっては志願者の増加が見込まれ、経済的理由で大学に進めない若者にとっても大学進学への道が一つ増えることになりますので、これは社会全体にとっても公益に資する有意義な制度であると思います。

 

 防衛省としてもぜひ実現に向けて動いてもらいたいと存じます。

 

 なお、現在でも自衛隊から大学に進学した場合、即応予備自衛官を志願すれば4年間で213万6千円(陸士長の場合。なお30日出頭として計算、勤続報奨金1回含む。税引前)の手当を受けることができます。文系の場合はこれだけで学費の過半をカバーできますし、就職時に社会的貢献としてもアピールできる制度ですので是非有効活用してください。

 

 その他、大学進学に関わるお金の話は以下の記事もご参照を。

 

reserve-f.hatenablog.com