自衛隊を退職して大学進学するために必要なお金
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陸上自衛隊の陸士は任期制、非任期制に関わらず、入隊後2年~6年で退職していく隊員が多くいます。退職後は民間に再就職する人も多いのですが、大学に進学して学生になる人もいます。
自らの知見を広め、幅広い視野を持つという点において大学進学は良い選択だと思いますし、また現実問題として卒業後の就職先の幅も大きく広がります(これは公務員試験でも一部を除き同じです)。
しかしながら、自衛隊から大学へ進学するにはいろいろな障害があるのも事実。
自衛隊から大学に進学する場合、一番の問題は入学試験ですが、学費や生活費等、お金の問題も考えなければなりません。親の援助が期待できるならまだしも、独力で資金を捻出しなければならないなら、事前に大学入学から卒業まできっちりと資金計画を立てておく必要があります。
大学に入学したはいいがバイトばかりで学業が疎かになるなど本末転倒です。奨学金を活用するという手もありますが、無計画に借りて卒業後に返済で首が回らなくなるなどという事態は避けたいもの。
そこで今回は、大学進学に係る資金について書いていきたいと思います。なお、引用しているデータはあくまでも目安と考えてください。
まず大学生活4年間でいくらぐらいの生活費が必要になってくるのでしょうか?
全国大学生活協同組合連合会の調査によると、下宿する場合、2018年でひと月に126,100円の生活費がかかるとの事。ここから単純に4年間の生活費を算出すると以下のようになります。
126,100円×12カ月×4年=6,048,000円
ちなみに実家生活の場合はひと月に67,200円で、4年間の合計は以下通り。
67,200円×12カ月×4年=3,225,600円
自衛官の営内者だと普段からあまり生活費の事を考えたりしないので「娑婆に出たらこんなに金がかかるのか!」と思う人もいるかもしれませんが、大学生の場合はこれに加えて学費がのしかかってきます。以下、総務省統計局の平成29年度小売物価統計調査年報を元に東京都における4年分の学費を算出してみました。
国立大学(文系・理系)の場合
入学金 282,000円
学費 535,800円(1年間)×4年=2,143,200円
合計 2,425,200円
私立文系の場合
入学金 222,715円
学費 779,906円(1年間)×4年=3,119,624円
合計 3,342,339円
私立理系の場合
入学金 253,461円
学費 1,050,098円(1年間)×4年=4,200,392円
合計 4,453,853円
これに生活費を合計すると、大学4年間で必要となる金額は以下の通りとなります。
国立大学(文系・理系)
下宿 8,473,200円
実家 5,650,800円
私立文系
下宿 9,390,339円
実家 6,567,939円
私立理系
下宿 10,501,853円
実家 7,679,453円
仮に下宿で私立文系大学に進学するとして、単純計算でひと月に20万円近いお金が必要となります。また実家暮らしだとしても14万円近いお金が必要です。もちろん、自衛隊時代の貯金額や、実家暮らしで親が生活費の面倒を見てくれたり、仕送りをしてくれたりするなど様々な条件によってこの金額は変わってきます。
もし、実家暮らしで学費だけ負担すればよいのなら、自衛隊時代にしっかり貯金をしておけば余裕で学生生活を送れるでしょう。しかし、親の支援が期待できず更に下宿する場合は、生活を切り詰めたうえでアルバイトすると同時に奨学金を活用するのが現実的ではないかと思います。
代表的なのは日本学生支援機構の奨学金ですが、ほかにも独自の奨学金制度がある大学もあります。また、国立大学では一定の収入以下の学生に授業料の全額若しくは半額を免除する制度もあります。
ちなみに、元自衛官なら即応予備自衛官を志願することによって年30日の訓練で約50万円の収入を得ることができ、1任期(3年間)を良好な成績で勤務すると更に勤続報奨金12万円が支給されます。国立大学や私立文系の場合はこれだけで学費の半分以上を工面することができるので、積極的に活用していきましょう。
これから大学進学を志す自衛官の方々は、4年間でどれだけの資金が必要なのか計画的に考え、志望大学に合格したからには金銭の問題で後悔することのない様に学生生活を送っていただきたいと思います。