予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

自衛官候補生募集の要は在職中の待遇ではなく退職後の進路

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 自衛隊の募集難が続いています。特に自衛官候補生は採用数が計画数の半分を割り込む事態に陥っているのだとか。報道によると防衛省は希望者が少ない理由の一つに任期の短さがあるとして、新たに任期を4年とする案を考えているらしいのですが、正直効果があるかどうか・・・。

 

 自衛官候補生について言えば入隊後数年での退職を前提とする以上、志望者増加に有用なのは退職後にどのような進路が待っているかが大きいと思います。任期制隊員の再就職は援護を通す事が多いと思いますが、必ずしも好条件の仕事ばかりではなく、将来性があるかと問われれば微妙と言わざるを得ません。俸給が少しばかり上がったり任期を延長したとしても、退職後の展望が見えなければ志望者増には繋がりにくいのではないか。

 

 この点についていえば、防衛省はもっと「任期制自衛官退職時進学支援給付金」制度を前面に押し出して広報すべきではないかと思います。これは任期満了退職した自衛官四年制大学に進学すると同時に即応予備自衛官に任用された場合、在学中に毎年27万1千円(予備自衛官の場合は4万5千円)の給付金(返済不用)が支給されるというものです。

 

 経済的な理由で大学進学が難しい高校生にとって「給付金」+「営内生活(或いは艦艇勤務)で貯金」+「任満金」+「退職後に即自手当年約50万円」で自衛隊退職後に大学進学というのは結構刺さる内容だと思います。別途貸与型奨学金を借りる必要があったとしても金額を圧縮出来ますので大学卒業後に返済で苦労するリスクは減るのではないかと。

 

 制度の存在自体は自衛官候補生のパンフレットに記載されているものの、大きく紙面を取っているわけでもなく、また民間企業に再就職した先輩自衛官の声は掲載されていますが、大学に進学した自衛官経験談は記載されていません。キャンパスライフの写真と共に大学進学にあたってどのように勉強したかとか、社会人入試を活用したか等、大学に進学するための具体的な体験談を記載すれば尚更効果は高いと思います。

 

 防衛省としてもう一点、力を入れて欲しいのが、他職種の公務員に任期制隊員を再就職させること。公務員試験なんて難しいのは? と思われるかもしれませんが、例えば技術系公務員に関しては昨今の技術者不足から地方自治体が採用試験を行っても志望者が集まらず、土木職はまだしも建築職や電気職などは志望者が0人なんてこともあります。勿論、勉強は必要ですが、技術系公務員は現在圧倒的売り手市場で一昔前に比べて難易度は大幅に下がっているのでチャンスと言えます。工業高校等、関係する学科を卒業している隊員の再就職先として自衛隊としてもPRと支援してみてはどうかと。また事務職公務員や技能系公務員(バス運転手、現場作業員、調理師など)も以前と比べれば倍率は低下しています。

 

 高校生のなりたい仕事ランキングでは概ね上位に入る公務員(いやまぁ自衛官も公務員ですが・・・)ですので、自衛隊退職後、他職種の公務員になる自衛官を増やすことが出来れば募集面でもメリットは大きいでしょう。募集パンフレットでも「自衛隊を辞めた後、他職種の公務員として働いてる先輩が沢山いますよ。支援する制度もありますよ」とアピールできれば志願者増につながると思います。これも大学進学と同じように実際に公務員になった先輩隊員のメッセージを載せることが出来れば更に効果的かと。

 

 ともかく、俸給を上げるとか営内環境を改善することも勿論大事ですが、退職後の生活についてもそれなりに魅力的な未来を見せることが出来なければ人は集まりますまい。米軍のような手厚い保障は無理だとしても「魅せ方」次第で自衛官候補生のメリットは広げているのではないかと思います。