予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

条令、規則等で予備自衛官の招集参加を職免で認めている自治体

※記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 地方公務員は地方公務員法(以下地公法という)第35条の規定に基づき「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と定められている。所謂、職務専念義務というものである。

 

 ただし、「法律又は条例に特別の定めがある場合」は職務専念義務を免除される。役所内部では略して「職免」、「職専免」等と呼称している(以下職免という)。

 

 では実際にどのような場合、職免が認められるのかというと、例えば年次有給休暇、育児休暇、公の職務(裁判員や国会参考人など)、研修への参加など。自治体によっては運転免許の更新に職免を使えるところも存在する。

 

 さて、予備自衛官として気になるのは訓練招集や防衛招集に職免が認められるかという点である。恐らく、多くの公務員兼業予備自衛官が訓練招集に年次有給休暇を使用していると思われるが、日数が限られている年次有給休暇よりも職免を使える方が災害招集や防衛招集の時には圧倒的に有利である。

 

 だが、法律上は予備自衛官の招集は職免の対象となっていないため、一律に認められることはない。職免の対象となる「公の職務」についても予備自衛官の招集は含まれないと定義されている(詳しくは以下の記事も参照)。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 ただし、各自治体が個別に条例で「予備自衛官の招集で職免を使える」と定めているとなると話は別になる。この場合、地公法第35条の「法律又は条令に特別の定めがある場合」に該当するので、当該自治体の職員は職免で予備自衛官等の訓練招集に参加できることになる。

 

 とは言ったものの、実際に条例で予備自衛官の職免について定めている自治体なんて存在しないだろう・・・と思って調べてみたら、驚くべきことに存在していた。

 

 以下、青森県野辺地町の条令及び規則からの抜粋。

 

野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する条例

 

昭和三十四年三月三十一日

条例第五号

 

(この条例の目的)

第一条 この条例は、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十五条の規定に基き職務に専念する義務の特例に関し規定することを目的とする。

 

(職務に専念する義務の免除)

第二条 職員は左の各号の一に該当する場合において、あらかじめ任命権者(県費負担教職員にあつては「教育委員会」)又はその委任を受けたものの承認を得てその職務に専念する義務を免除されることができる。

 

一 研修を受ける場合

二 厚生に関する計画の実施に参加する場合

三 前二号に規定する場合を除く外町長が定める場合

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する規則

 

平成十五年三月三十一日

規則第十五号

 

(目的)

第一条 この規則は、野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和三十四年野辺地町条例第五号)第二条第三号の規定に基づき、野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関し必要な事項を定めることを目的とする。

 

(特例)

第二条 前条の特例は、次の各号の一に該当するとおりとし、任命権者がそのつど必要とする期間これを与えることができる。

一 特別職として職を兼ね、その職に属する事務を行う場合

 

(中略)

 

九 予備自衛官の防衛訓練等の招集があった場合

 

(中略)

 

(手続き)

第四条 職員が、第二条の規定により、職務に専念する義務の特例を受けようとする場合は、遅滞なくその旨を所属長を経て、任命権者に願い出て承認を受けなければならない。

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

 恐らく、「予備自衛官の防衛訓練等の招集」とは訓練招集、災害招集、防衛招集等を指すと考えられる。この条例、規則により野辺地町職員で予備自衛官等に任官している者がいれば、招集のたびに年次有給休暇を使わなくても済むようになる。

 

 果たして自衛隊の駐屯地、基地があるわけでもない自治体で何故、予備自衛官が職免対象にされているのか謎ではあるが、予備自衛官を志願する職員が出た際に人事担当課が有事に際を考慮して追加したのかもしれない。

 

 また、直接職免とは関係ないが、宮城県蔵王町例規にも予備自衛官に関する事項記載されているものがある。

 

 以下抜粋。

 

蔵王町道路補修作業員就業規程

 

昭和57年2月12日

規程第2号

 

第1章 総則

 

(趣旨)

第1条 蔵王町道路補修作業員(以下「作業員」という。)の就業に関しては、この規程の定めるところによる。

 

(作業員の定義)

第2条 この規程において「作業員」とは、蔵王町が道路補修作業(運転業務を含む。)のため作業員として、臨時に採用したものをいう。

 

(中略)

 

(欠勤)

第6条 道路補修作業員が欠勤するときは、予め欠勤日並びにその事由を明記して所属長の許可を受けなければならない。即応予備自衛官の訓練に従事するときも同様とする。ただし、緊急やむを得ない事由により許可を受けることができなかった場合は、事後遅滞なく承認を得なければならない。

 

(中略)

 

(割増賃金)

第12条 作業員に支払う割増賃金は、次の各号に掲げるところによる。

 

(中略)

 

(6) 即応予備自衛官の訓練のため欠勤したものについては、就労実績に加算するものとする。ただし、その日数は1年間を通じて15日間とする。

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

  この「道路補修作業員」は正規職員ではなく会計年度任用職員(非正規公務員)である。詳しくは以下のリンク先の「募集職種一覧」を参照。

 

www.town.zao.miyagi.jp

 

 なぜわざわざ即応予備自衛官限定でこの条文を規程に入れたのか、これもかなり謎であるが、即応予備自衛官の作業員を採用しているのだろうか?

 

 いずれにせよ自治体が予備自衛官を職免対象と規定してくれれば、地方公務員の予備自衛官は大手を振って職免で訓練招集に参加できるし、近年たびたび発出されている災害招集についても年次有給休暇の残日数を気にすることなく参加でいるようになるのでありがたいのだが、何かしらの大きな働きかけがないと難しいだろう。

 

 一番手っ取り早いのは、国(厚生労働省)が予備自衛官労働基準法第7条の公の職務と認めてくれることだが、去年の国会で取り上げられたとはいえ制度が変わるにはまだまだ時間がかかるのではないかと思う。