予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

自衛隊の定員割れが行きつく先は?

※当記事は一般公開しても支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。

 

 自衛官候補生の入隊が5年連続計画割れとの事です。

 

www.tokyo-np.co.jp

 

 直接的な原因は少子化や景気回復による民間採用の増加との事ですが、別の背景として所謂3K、体育会系の職場が若者から忌避されているからともいえるのではないかと思います。

 

 公安系職種である警察官(一般の公務員より給料は良い)も自衛隊と同じく成り手不足に苦しんでいるようですので“綺麗な仕事”をしたがるというのは今時の若者全体の傾向なのかもしれません。とすればもしこの先、消費税増税東京オリンピック終了に伴い景気が悪化したとしても(いや、悪化はしてほしくないですけど)、急激に進行する少子化と相まって自衛隊の入隊志願者は簡単に増加しないと考えた方がよいでしょう。

 

 昔は「就職先がないから自衛隊でも行くか」なんて時代もありましたが、これからは「自衛隊に入るぐらいなら派遣社員でもしていた方がまし」という考えが主流になるのかもしれません。

 

 そうなったときにいかにして自衛隊の戦力を維持するか。思いつくところでは以下のような対策が考えられます。

 

① 選抜徴兵制を施行する

 

② 自衛官の待遇を良くする

 

③ 予備自衛官等を拡充し不足分を補う

 

④ AIの導入や無人化等で省人化を進める

 

⑤ 外国人の入隊を認める

 

 ①についてはスウェーデンが人員確保を目的として2018年より徴兵制を復活させた事例がありますが、我が国での徴兵制導入は例え解釈改憲によって徴兵制が違憲でないとされても政治的に不可能でしょう。国民の支持も得られないものと考えられます。

 

 ②の自衛隊の待遇を良くするというのはよく保守系評論家からも聞こえてくる意見ですが、実際にやるとなると難しい。単純に俸給を上げたり居住環境を改善しようとしても結局の所、予算がつかなければ絵に描いた餅にしかなりません。政府が防衛費を大幅増額すれば可能かもしれませんが現在の財政難ではそれも望み薄。

 

 しかも自衛隊には過去に輝号計画の失敗という苦い経験があります。いくら最近の若者が個人主義でプライバシーを重視するとは言え、おいそれと営内の規律を緩めるわけにはいかないでしょう。

 

 その点③の予備自衛官等制度の拡充は、幹部や曹の充足率が高い自衛隊にとって平時に人件費を圧縮し有事になれば教育済みの士(兵隊)や技術を持った曹(下士官)を即急に集めることのできる点において現実的かもしれません。ただし、即応予備自衛官予備自衛官の充足率が年々低下している中で、常備隊員の不足を補えるかという問題があります。

 

 予備自衛官等制度の一番の問題点は予備自衛官を雇用する民間企業に負担をかけてしまうという点です。世論調査自衛隊に対して好印象を持っている人が90%を超えているとはいえ、実際の職場において予備自衛官等の負担を甘受してくれるかどうかは別問題です。予備自衛官等の充足率が年々低下している背景には雇用企業の理解を得ることができないという厳しい現実があり、まずこの課題を解決せねばなりません。

 

 ④のAIの導入や省人化についても結局は②と同じく予算の制約があるため、近い将来に実現する可能性は低いと思われます。

 

 最後の⑤についてはフランス外人部隊や、アメリカのように永住権を持つ外国人の入隊を認める等の事例がありますが、民間軍事会社による外部委託なども考えられるかもしれません。何しろ現在、政府は外国人労働者の受け入れ拡大中です。諸外国では軍での勤務と引き換えに帰化に必要な期間を短縮できる所もありますが、自衛隊も国籍付与などを呼び物に外国人へ声をかければ志願者は結構集まるのではないでしょうか。

 

 兵役の経験がある外国人なら自衛隊生活もさして苦にはならないでしょうし、日本国籍を取得できるうえに退職時には仕事まで紹介してくれるという好待遇です。自衛隊には存在しない実戦経験者が入隊してくれば自衛隊としても得るべき点が多くあるというもの。日本人の入隊志願者がこのまま減少していくのならば、人材の供給源を他に求めるのは致し方ない事でございます。

 

 ・・・「そもそも国の防衛を外国人に依存するという発想はどうなんだ」とか「他国籍の人間を自衛隊に入れていいわけないだろ」というご意見もあると思います。いや、私もまったくその通りだとは思いますが、正直、今の世情だと⑤が一番実現可能性が高いような気がしてなりません。何しろ金がかからず、なおかつ自分がやりたくない3K仕事を外国人がやってくれるというのですから。

 

 個人的には人材のパイが少なくなっていく以上、②、③、④を組み合わせて国防力を維持していくのがかろうじて出来る事ではないかと思いますが、実際にはどうなることやら・・・。

 

 もっとも、日本の経済的衰退を見るに自衛隊に入ってまで日本国籍を欲しがる外国人などほとんどいなかった、等というオチになるかもしれません。これはこれで笑えませんが・・・。