予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

予備自衛官等兼業特例法案が提出された背景について

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 予備自衛官等兼業特例法案が閣議決定され、今後国会での審議も進むと思われるが、この機会に法案が提出されるに至った流れを簡単に説明しておきたいと思う。

 そもそも、予備自衛官制度が発足したのは昭和29年であるが、当初から国家公務員、地方公務員の予備自衛官は存在していたと思われる。

 地方公務員法実例判例集によれば昭和30年に複数の自治体から自治庁(現総務省)に地方公務員は予備自衛官になれるのかという問い合わせがなされているが、これは当該地方自治体で予備自衛官を志願する職員(元自衛官)がいたという事であろう。これに対する自治庁の回答は地方公務員法第三十八条第一項のに基づく任命権者の許可を得れば可能という事であった。ただし職免で訓練招集に参加する場合は条例で特別の定めが必要との判断されていた。また防衛招集で長期の招集となる場合は、「当該職員に無給休暇を与え、又は当該職員を休職する等の措置をとることが必要である」というのが当時の自治庁の見解である。

 国家公務員についても国家公務員服務関係質疑応答集によれば昭和29年に人事院名古屋地方事務所長より人事院管理局法制課長に大して問い合わせが行われ、国家公務員法第104条による内閣総理大臣及びその職員の許可があるときは予備自衛官になれること、また職免で訓練参加した場合は給与が減額されるとの回答が行われている。

 以後、公務員でも兼業許可があれば予備自衛官になれることがはっきりしたものの、訓練招集参加については法令等で一律に規定される事無く、各省庁・自治体がバラバラに対処、運用するという状態が長く続いた。結果として、訓練参加に職免が使える役所があれば、使えない役所もあり、また職免が使えたとしてもその間の給料が出たり出なかったりなど、同じ公務員でありながら訓練参加の条件が大幅に異なる事態となったのである。兼業許可条件についても一度許可を得れば災害招集等で再度兼業許可申請を出す必要が無い役所がある一方、訓練招集だけの兼業許可を認めて災害招集される際は別途兼業許可を申請しなければならない等、煩雑な手続きを要する事例も存在した。

 国家公務員等を兼ねる予備自衛官等がごく少数ならばこれでも大して問題にならなかったもかもしれないが、例えば平成23年では予備自衛官約1300人、即応予備自、予備自補はそれぞれ約50人が国家公務員及び地方公務員であり(第180回国会 予算委員会第一分科会 第1号(平成24年3月5日(月曜日))より)それなりの人数がいたのである。

 防衛省側もこの問題について無関心だったわけではなく、平成27年には任命権者が兼業許可条件を無報酬とした場合に対応できるように、無報酬で予備自衛官補が出来る手続きについて通知を発出。また令和元年には国家公務員及び地方公務員が訓練招集に参加する場合は職免で参加するのが基本との通知を発出し、統一した制度運用を図っている(但し有給休暇で出頭することは排除されない、また地方公務員の場合は最終的に任命権者の判断とされている)。

 この問題に関しては元自衛官の佐藤正久参議院議員(当時)が度々、予備自衛官の声を国会で取り上げたこともあってか、令和5年の「防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会」では「公務員が訓練等に応じて、平素の勤務先を離れる場合、給与が減額されるため有給休暇を取得」が課題として言及された後、令和7年の「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」において「令和8年度中に国家公務員又は地方公務員が予備自衛官等の職を兼ねる場合においても訓練に参加しやすくするための制度を整備」と具体的な目標が掲げられた。

 そして令和7年6月に石破総理(当時)が予備自衛官等を兼ねる公務員が有給休暇を取って訓練に参加している状況を速やかに見直すように関係閣僚に指示を出し、今回の法案提出に至ったわけである(言うまでも無いがこれは高市氏が総理大臣になるより前である)。

 この間、防衛省は公務員を兼ねる予備自衛官等に複数回にわたってアンケートを実施し問題点の把握に努めている。

 なお、余談ではあるが消防団員(非常勤特別職地方公務員)については平成26年に消防団等充実強化法によって、任命権者は一般職の国家公務員又は一般職の地方公務員から報酬を得て非常勤の消防団員と兼職することを認めるよう求められた場合には一部例外を除きこれを「認めなければならない」とされ、職免による消防団活動参加についても柔軟かつ弾力的な取扱いがなされるよう、必要な措置を講ずるとされた。

 本法案については様々な意見があろうと思うが、経過を見れば長期にわたり本業が公務員である予備自衛官等が要望してきた事を反映したものであると言える。この背景を認識したうえで、今後有意義な国会審議が進むことを一予備自衛官として切に期待するものである。