予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

予備自衛官等関連資料 サイバーリザーブ(予備役)の研究(『海幹校戦略研究』特別号(通巻第19号))

 「海幹校戦略研究」とは「海上自衛隊幹部学校(※上級指揮官、幕僚の養成機関。旧海軍の海軍大学校に相当)職員・学生の研究成果のうち、現代の安全保障問題を海洋国家日本の針路を考えつつ、時代に適合した海洋政策、海上防衛戦略を模索するという観点から取り扱ったものを中心としてまとめ」たもの(海上自衛隊幹部学校HPより)。

 

www.mod.go.jp

 

 今回紹介する「サイバーリザーブ(予備役)の研究」はサイバー防衛分野に関する予備役(リザーブ)の役割について考察した論文である。エストニアの準軍事組織であるサーバーディフェンスユニットの概略及び我が国の予備自衛官補制度(技能:情報)を紹介し、更に両組織の隊員にアンケートを実施して実態調査と考察を行っていくものである。

 

https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/review/sp-1-s/sp-1-6.pdf

 

 そこまで長い論文ではないので、情報技能系の予備自衛官予備自衛官補に志願しようとしている方は興味あれば閲覧されることをお勧めする。

 

 一点だけ気になったのは、予備自衛官とサイバーディフェンスユニットの志望動機について、前者は「国防のため」が主を占めていたが、サーバーディフェンスユニットの場合、「自身のスキル向上のため」が同程度の割合で存在していることである。要するに、技能公募予備自衛官制度は予備自衛官自身のスキルアップ手段として全く期待されていないという事だ。

 

 当論文はサイバー防衛分野に関する論文であるが、これは他の技能予備自衛官についても同様のことが言えるのではないかと思う。例えば活動分野が比較的明確かと思われている医療系の予備自衛官についても医師や看護師だけでなく薬剤師、心理、リハビリ系の資格を持つ人もおり、職務内容は非常に多彩だ。年5日の予備自衛官訓練だけでこれらすべての人々が資格に合った有意義な訓練を受けることは難しいだろう。ましてやスキルアップともなれば現状としては非常に困難である。

 

 予備自衛官制度の定員割れは雇用企業の同意を得にくいという理由が大きい。今後、予備自衛官制度を維持する上で金銭的な補償は勿論だが、「予備自衛官訓練を通じて本業もスキルアップする」という観点も取り入れることが、予備自衛官の能力向上と共に雇用企業に対するメリット提示にも繋がるのではないだろうか。