予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

自衛隊が予備自衛官に資格を取得させることは出来ないか?

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 即応予備自衛官予備自衛官の雇用企業に向けて、防衛省自衛隊は様々な支援制度を実施しています。例えば即応予備自衛官を雇用している企業については、即応予備自衛官雇用企業給付金、予備自衛官等が実際に招集された場合には雇用企業協力確保給付金が支給されます。また、予備自衛官等を雇用することによって国防に貢献している企業に対しては協力事業所表示制度、訓練招集の日程調整の為に情報提供制度もあります。

 

 一昔前は即自の雇用企業給付金しかなかったので、かなり充実してきたと言えるのではないでしょうか。ただ、官公庁については上記支援策のメリットはほとんどありませんし(給付金の対象外)、民間企業についても給付金がもらえるのはありがたいと思いますが、実際の所、デメリットの方が上回ると考えているところも多いのではないかと思います(特に即自)。

 

 そこで、今回は予備自衛官等雇用企業と予備自衛官本人、更には自衛隊にもメリットのある企業支援策について一つ考えてみたいと思います。

 

 少し話はそれますが、私個人的には予備自衛官の訓練が一般社会でのスキルアップにつながりにくいという点が非常に残念だと考えていました。予備自衛官等として訓練を受けても、その技能が通用するのは自衛隊だけで民間では生かす機会がない。これは即自や一般の予備自衛官、公募自衛官全てに言えるのではないかと思います。技能公募予備自衛官にしても、技能訓練で一般社会においてスキルアップできるような訓練はほとんどないのではないか。

 

 そこで一例として考えたのが、防衛省自衛隊予備自衛官等の資格取得支援を行ってはどうかというものです。

 

 現在では災害時に建設機械系の国家資格を持つ予備自衛官等が招集された場合、自衛隊側が必要と認めれば技能検定を受けたうえで施設器材(建設機械)を操作することができます。これによりMOSを保有していなくとも災害現場で予備自衛官等がユンボバケットローダ、トラッククレーン等を操作できるようになりました。

 

防衛省HPより)

https://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/resources/pdf/yobijiho/kokkashikaku.pdf

 

 建設機械を運転、操作する国家資格ですが当然ながら民間でも有効です。この資格を自衛隊予備自衛官に取得させることができれば大きなアピールポイントになるのではないか。例えば建設業に従事する予備自衛官ユンボの操縦資格を取得すると、本人のスキルアップだけでなく雇用企業にもメリットが生まれます。また、予備自衛官に建設機械系の資格保有者が増えるというのは自衛隊側にとっても災害時に使えるオペレーターが増えるという事なので良い事ではないかと思います。

 

 建設機械系の資格については基本的に講習を真面目に受ければ誰でも取得できる上に、講習期間も短いので難易度もそれほど高くはありません。例えば大型特殊免許については技能教習6時間+卒業検定ユンボを操縦できる「車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込・掘削)」については講習時間38時間(5日間)(ただし大型特殊免許を持っていれば14時間(2日)まで短縮される)です。

 

 具体的な施策については、単純に資格を取得した予備自衛官補助金を出す形でも良いですが、教習指導員や検定技能員等の資格を持つ予備自衛官を活用して休日等に自衛隊施設で講習を実施するのもありでしょう。雇用企業に対しても予備自衛官制度のメリットを分かりやすい形でアピールできるのではないかと思います。

 

 その他にも、自衛隊には建築士施工管理技士(建設工事で現場監督になるために必要)の資格を持つ隊員も多くいますので、希望する予備自衛官に対して自衛隊側が試験対策講座を行うのも企業側からすれば喜ばれると思います。また資格取得を通じた予備自衛官の能力向上は自衛隊にもメリットに繋がるでしょう。

 

 勿論、資格だけ取得してすぐに予備自衛官を辞められても困りますし、普段建設機械を使わないような職業の人に資格を取らせても有事に役立たないでしょうから何らかの制限をかけることは必須かと思いますが、雇用企業から見れば予備自衛官の訓練で社員がスキルアップするというのは業種によっては給付金と同じぐらいの魅力だと思います。

 

 今回は建設業関係の資格について話を絞りましたが、他の分野でも同じように訓練招集を通じて民間でも生かせる能力を身に着ける方法はあると思います。即応予備自衛官はともかく、予備自衛官は基本年5日間の訓練招集しかないため自らの能力向上を実感しにくい環境にあります。予備自衛官のモチベーション向上という観点からも資格の取得は有用ではないでしょうか。