予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

自衛隊OBの私的訓練報道と自衛隊法について

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 陸上自衛隊特殊部隊のトップだったОB(荒谷卓元1等陸佐)が現役自衛官予備自衛官に私的な訓練を行っていたと報道されています。

 

www.nikkansports.com

 記事では「自衛隊で隊内からの秘密漏えいを監視する情報保全隊も事実を把握し、調査している」「防衛省内には自衛隊法に触れるとの指摘がある」とのこと。

 

 確かに、自衛隊時代に身に着けた知識や技術(職務上知ることのできた秘密)を私的訓練で他人に教授した場合、自衛隊法違反になる可能性はないことも無いですが・・・。

 

自衛隊

五十九条 隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする。

 

第百十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第五十九条第一項又は第二項の規定に違反して秘密を漏らした者

 

 

※現職自衛官の場合はこの他に懲戒処分という可能性もあるが元自衛官の荒谷氏には関係ないのでここでは省く。

 

 問題は今回の荒谷氏の合宿内容が自衛隊法に触れるのかという点です。

 

 そもそも、自衛隊法の指す「秘密」とは基本的に省秘等、特定秘密、特別防衛秘密に指定されたものを指します。なので例えば元自衛官自衛隊の事をYouTubeで喋ったからと言って直ちに逮捕されるという訳ではありません(但し予備自衛官等については別の手続きが必要になる場合がありますのでご注意を)。

 

 ネットで探してみれば元自衛官が軍事技術を教えている団体や会社はいくつもあります。荒谷氏の合宿では受講資格を自衛官予備自衛官に限定していましたが、このような団体、会社は民間人も対象にしています。しかし、それが自衛隊法違反として問題となった事例を私は聞いたことがありません。

 

 これは当然のことで、教える内容が「秘密」に該当しなければ違法性がないため、防衛省や警察も取締りようが無いからです。また、自衛隊以外で知った情報であれば、それがいくら高度な軍事技術であっても誰に教授したところで自衛隊法上は何の問題もない事になります。

 

 主催団体のホームページによると今回の合宿内容は「集団での戦術行動も加味した森林錯雑地での徒手格闘素手での格闘術)」ということで、これを自衛隊法違反というには無理があるでしょう。

 

 という訳で、この件が自衛隊法違反として起訴される可能性は限りなく低いと思います。

 

 また、記事では「自衛官が、外部から戦闘行動の訓練を受けるのが明らかになるのは初めて」と書かれていますが、そんなもん共同通信が知らなかっただけで特殊部隊に限らず、自衛官が自費で部外の講習を受けるというのは昔からよくあった話です。

 

 秘密でも何でもありませんし、過去に問題となって何らかの処分の受けたという事例も聞いたことがありません。従って、今回の合宿に参加した現職自衛官予備自衛官が何らかの処分を受けることも無いのではないかと思います。