予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

防衛省がオークションよりも稼げる方法

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 去る7月26日に行われた防衛省のせり売りで581万8千円の売り上げがあったそうです。

 

不用物品の「せり売り」の結果について(防衛装備庁HP)

 

 なぜこのようなオークションを実施することになったかというと、「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)について」で防衛省は「その他の収入の確保などを通じて実質的な財源確保を図」ることとされた為で、その背景には「防衛費は自分で稼げ」という財務省の圧力があります(これもどうかと思いますが・・・)。

 

 勿論、今回の580万程度では防衛費の足しにもならないのでどちらかというと部外向けの広報と財務省向けのパフォーマンスという側面が強いかと思います。

 

 防衛省はこの他にも市ヶ谷大本営地下壕跡の見学入場料として700円(18歳以上)を設定するなど、防衛省が持つ資産等を有効活用した財源確保を進めていく予定です。国の防衛費を防衛省自身が稼がねばならないとはすごい時代になりましたね。

 

 そこで、もっと防衛省がもっと「稼げる」方法として一つ提案したいのは、中古の迷彩服や半長靴、雨衣等を希望する予備自衛官に販売してはどうかということです。そして予備自衛官が被服を私物として普段は自分で管理し、招集訓練の時は持参して使えるようにする。こうすれば販売収益だけでなく様々なメリットがあるのではないでしょうか。

 

 予備自衛官招集訓練の1日目は被服の交付だけで結構な時間を取られます。特に予備自衛官が100人以上も参加するような場合は朝礼時間が過ぎても延々と被服交付作業を続けている光景が良く見られます。

 

 訓練担当部隊にとっては被服の交付、返納作業だけで一仕事ですし、官品ですので訓練期間中の管理についても気を遣う事になります。予備自衛官に交付する被服が減ればそれだけ負担も軽減できますし、空いた時間を訓練に回せることになります。災害派遣招集の場合でも被服交付の手間が省け、迅速な活動開始が可能になります。

 

 予備自衛官にとっても官品よりは私物の迷彩服を着ている方が気楽という事情があります。招集訓練で私物の作業帽や弾帯を使っている人は実際よく見ますが、性能的な問題ではなくただ単に無くした時が恐ろしく面倒くさいので出来るだけ官品を使いたくないからだと思います(自衛隊は作業帽1つでも無くした場合は本当に「見つかるまで」探す)。かくいう私も訓練時に軍手を交付されるのですが、万が一無くしたら面倒くさいので私物の皮手袋を使っています。

 

 また訓練で支給される迷彩服は一着だけなので、特に通修者は洗濯も出来ず汚れた迷彩服で最大5日間も過ごさなくてはなりません。これでは冬場はともかく夏は結構きついものがあります。訓練に使える官品迷彩服を2着購入することができれば着回ししながら訓練に参加できるのでだいぶマシになります。更に自宅で迷彩服を洗濯できるため分割出頭した時の迷彩服クリーニング代も不要になります(予備自は迷彩服のクリーニング代が1回分しか予算計上されていないため、2回に分けて出頭すると1回分のクリーニング代は自腹となる)。

 

 民間で販売されている陸自迷彩服は生地が官品仕様(難燃ビニロンと綿の混紡)のものはあるのですが制電、難燃加工やIR迷彩(赤外線暗視装置に反応しにくい迷彩)ではなく訓練時に使えません。また現在の自衛隊は私物の迷彩服を着用していると公務災害(民間でいう労災)の対象にならないので実質的に私物迷彩服の使用は不可能となっています。これらの問題は官品迷彩服を予備自衛官に販売するという形にすれば解決します。

 

 気になるのは迷彩服等の外部流出による機密漏洩かと思いますが、そもそも生地の種類から混紡割合まで現在はネットで探せばいくらでも見ることができます。制電加工や難燃加工、IR迷彩も特段機密とされている技術ではありません。半長靴に至っては製造企業の某社が官品とほぼ同等品を民間向けに販売していたこともあります。勿論、販売する被服には何らかのマークを入れる等の処置が必要でしょうし、転売等は禁止するべきでしょうがそこまで神経質になることは無いと思います。

 

 今回の記事を書くに至った理由は、令和2年7月豪雨の予備自衛官招集です。即応予備自衛官については普段から被服、装具が貸与されているため、出頭後の準備も簡潔に終わらせることができます。一方予備自衛官は個人に貸与されている被服がないため、災害派遣招集でも一々部隊から被服の交付を受けなくてはなりません。理想を言えば普段から予備自衛官個人ごとに被服を貸与するのが一番良いのでしょうが、実際には難しいでしょう。あくまで一つのアイディアですが、防衛省の財源確保施策と合わせて私物として予備自衛官が官品迷彩服を購入するような形にすれば、防衛省、訓練担当部隊、予備自衛官それぞれにメリットがあるのではないかと思います。