予備自衛官雑事記

予備自衛官のあれやこれや

奨学金としての即応予備自衛官制度

 河野太郎防衛大臣ライブ配信で、任期満了後に大学進学する任期制自衛官に学費や生活費を支援する制度を考えていると仰っていました。

 

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(該当箇所は59:30辺りから)

 

 河野大臣はアメリカのGI Bill(復員軍人援護法)を参考として挙げつつ、任期制自衛官自衛官候補生)が任期満了後に大学に進学する場合、自衛隊が学費を持つ、又は生活費を支援する代わりに大学4年間は即応予備自衛官に登録してもらう、という制度を考えているようです。要するに退職自衛官を対象とした条件付奨学金ですね。

 

 自衛官候補生の志願者増加と即応予備自衛官の充足率向上を可能にする一挙両得な政策と言えるのではないかと思います。

 

 自衛官候補生は2~3年を1任期として採用される任期制の自衛官ですが、少子化や民間の求人増も相まって募集難の状況が続いています。任期満了後に奨学金が出るとなれば志願者の増加にもつながるでしょう。

 

 また、即応予備自衛官は年間30日の訓練を受け、有事の際に招集される非常勤の自衛官ですが、主に仕事との兼ね合いが難しく充足率の低下が続いていました。大学生なら夏休みや春休み等を利用して訓練に参加するのことも可能ですので学業との両立も難しくありません。

 

 問題としては、実際にこの制度が実現したとしてどれぐらいの任期制自衛官が大学に進学するかという点です。自衛官が大学進学を目指す場合、一番の問題となるのは学力の問題です。例えば、陸上自衛隊自衛官候補生は入隊後約6か月の新隊員教育を受けますが、その間は勿論、受験勉強などできません。また、部隊配属後も教育や演習など勉強に集中できない期間も多く、よっぽど努力しなければ学力向上は難しいのではないかと思います。必然的に社会人入試やAO入試も視野に入れることになるでしょう。

 

 その他、大学を中退した場合の取扱いや、給付の条件(陸自と海空自は1任期の年数が違う)をどうするのか等、制度設計上の課題は多々あると思います。「自衛隊だけそんな制度を認めるのはおかしい」とか「経済的徴兵制だ」みたいな批判も出てくるでしょう。しかしながら自衛隊にとっては志願者の増加が見込まれ、経済的理由で大学に進めない若者にとっても大学進学への道が一つ増えることになりますので、これは社会全体にとっても公益に資する有意義な制度であると思います。

 

 防衛省としてもぜひ実現に向けて動いてもらいたいと存じます。

 

 なお、現在でも自衛隊から大学に進学した場合、即応予備自衛官を志願すれば4年間で213万6千円(陸士長の場合。なお30日出頭として計算、勤続報奨金1回含む。税引前)の手当を受けることができます。文系の場合はこれだけで学費の過半をカバーできますし、就職時に社会的貢献としてもアピールできる制度ですので是非有効活用してください。

 

 その他、大学進学に関わるお金の話は以下の記事もご参照を。

 

reserve-f.hatenablog.com

予備自衛官等関連資料 国家公務員服務関係質疑応答集(抜粋)

解説

 国家公務員の服務、兼業についての事例解説集。予備自衛官制度創設まもない昭和29年に人事院名古屋地方事務所長より人事院管理局法制課長に対し問い合わせが行われている。なお、同様のやり取りは地方公務員法についても地方自治体と自治庁(現総務省)の間で行われている。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 予備自衛官については国家公務員法(国公法)第104条の許可があれば予備自衛官を兼ねることができ、なおかつ休暇を取得して訓練出頭する場合は給与を減額されることは無い(年次有給休暇と訓練招集手当の給与二重取り問題は発生しない)との判断がなされている。

 

 以下抜粋。

 

予備自衛官を兼ねることについて(照会)

1 一般職員が、自衛隊法第66条に規定する予備自衛官を兼ねることができるか。

2 予備自衛官を兼ねることができる場合、訓練招集に参加する一般職員が勤務時間をさくときは、その取扱いをどうするか。(昭29.11.11 04-586 人事院名古屋地方事務所長)

 

(回答)

1 国家公務員法第104条による内閣総理大臣及びその職員の許可があるときは、兼ねることができる。なお、この場合において予備自衛官手当及び訓練招集手当の支給を受けることは差し支えない。

2 休暇を承認された場合を除き、さかれた勤務時間については給与が減額される。なお、特別休暇は与えることはできない。(昭29.11.19 12-882 人事院管理局法制課長)

予備自衛官補のような制度は諸外国もやっているし普通に戦力化している

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

※当記事は外国語のホームページをグーグル翻訳等で参照して書いております。間違っている点等あるかもしれませんがその時はコメント等で指摘して頂けると幸いです。

 

 我が国の予備自衛官補制度は、自衛隊未経験者に50日(技能公募は10日)の訓練を実施し、予備自衛官として任用するものです。軍事制度に詳しい人からしてみれば一般的に予備役の軍人は除隊した軍人がなるものだという認識だと思います。ひょっとすると予備自衛官補のような制度を運用しているのは日本の自衛隊だけだと思っている方もいるかもしれません。

 

 しかしながら実は一般人を訓練して予備役の軍人とする制度は世界的に珍しくありません。例えばアメリカ合衆国の州兵は一般人が10週間の基礎戦闘訓練と特技訓練を受けた後、非常勤の州兵とするものです。

 

 また、イギリスの国防義勇軍やフランスの国民衛兵、以前当ブログでも紹介したポーランドの領土防衛軍なども一般人を訓練して予備役とする制度です。

 

 この中でアメリカの州兵やイギリスの国防義勇軍将兵は実際にアフガニスタンイラクの戦場に派遣されて活躍しています。制度的には予備自衛官ではなく即応予備自衛官に近い運用がなされているようです。

 

 予備自衛官と諸外国の予備役制度を比較してみると、まず目につくのが年間訓練日数の差です。例えばポーランドの領土防衛軍は最初の訓練期間こそ16日(軍隊未経験者)と予備自衛官補の教育訓練招集より少ないものの、年間の訓練日数は36日と即応予備自衛官を上回る日数です。これは米州兵も同じで、毎月1回の週末訓練と年1回の2週間訓練により約40日の訓練が課せられています。

 

 予備自衛官の場合は、まじめに訓練出頭していれば自動的に陸士から陸曹になれますが、諸外国の予備役では志願して教育を受けたうえで下士官に任官するという国もあります。また、大卒者に対しては将校への道が開かれているのも予備自衛官制度にはない特徴でしょう。

 

 このように充実した教育訓練の成果が予備役部隊のイラクアフガニスタンでの活躍ではないかと思います。

 

 予備自衛官補制度では教育訓練招集を50日と、比較的長時間にわたって確保していますが、予備自衛官任官後の訓練招集は年間5日間と、恐らく諸外国の中でも最低クラスではないかと思います。後方警備要員としてはそれでも十分なのかもしれませんが、これでは技能の維持が精一杯で、特に一般公募予備自衛官のモチベーション向上については難しいと言わざるを得ません。

 

 平成31年度より一般公募予備自衛官から即応予備自衛官への志願が可能となりましたが、勤め先の事情等もあり、希望者全員が即自に志願できるわけではないと思います。土日は訓練に行けるが平日はそう何日も休めないという人もいるでしょう。また、技能公募予備自衛官についても技能訓練という場があるとはいえ年5日間の訓練では新しい知識の習得もなかなか難しいのではないかと思います。

 

 予備自衛官の訓練は基本的に年1回(分割出頭の場合は年2~3回)であり、訓練出頭の間隔が長期間に渡ってしまうため、せっかく教育を受けても技能の定着が難しいという問題もあります。

 

 予備自衛官の年間出頭上限は20日なので、希望者には土日2日間の訓練機会をもっと増やすことができれば良いのですが、受け入れ部隊の都合もあり(予備自訓練の為、常備部隊の訓練が疎かになっては本末転倒)なかなか難しいのが現実ではないかと思います。

 

 そこで一つ提案というか思い付きなのですが、予備自の教育を予備自自身が行うというのはどうでしょうか?

 

 例えば赤十字の救急法講習や消防が行う救命講習については赤十字職員や消防職員だけでなく、資格を持ったボランティアが受講者に指導を行っています。赤十字の講習の場合は30時間の学科・実技講習を受けて検定に合格した指導員が救急員養成講習の講師を務めており、地域によっては赤十字職員よりも指導員の方が主となって講習を行っています。

 

 予備自衛官の場合、常備を定年退職したベテランの他、弁護士、司法書士、医療従事者や重機オペレーター(建設機械施工技士等)、測量士(補)等、多様な職業、様々な資格を持っている隊員がいます。そのような隊員の中から必要な技能・適性を持つ者を選抜・訓練し、一般の予備自衛官に教育を行わせることで予備自衛官の技能を向上させることは人材面で十分可能だと思います。

 

 このような取り組みは一部で実際に行われていて、隊友会自衛隊OB会)の新聞「隊友」令和元年9月15日号によれば、第47普通科連隊で行われた技能公募予備自衛官招集訓練において現役弁護士の予備3佐(技能公募予備自)が常備隊員に対し法務教育を実施したとの事です。

 

 勿論、安全管理等の観点から常備自衛官の監督下での訓練であることは必須でしょうが、それでも常備自衛官の負担は軽減されると思います(受入部隊の担当教官の仕事量は逆に増えるかもしれませんが・・・)。このようにすれば予備自衛官の年間訓練招集日数もある程度増やすことができ、招集訓練の間隔も短くなって教育内容の定着にも効果があるのではと思います。また、訓練招集に対するモチベーションが上がると共に教育する側の予備自衛官についても指導力の向上が期待できます。

 

 即応予備自衛官をやっていて思ったのですが、年度の前半にまとめて訓練を受けた時よりも毎月1回継続的に訓練を受けた方が効率的に技能を習得できました。訓練と訓練の間隔があいてしまうと、どうしても忘れてしまうことがあったりして、練度が下がってしまうのです。

 

 ともかく、予備自衛官の練度を向上させるには訓練日数と訓練頻度の増加が一番効果的でしょう。従来の5日間訓練に加え土日を中心とした2日間訓練を反復し年間20日出頭が実現できれば、平均して月1.7日の訓練となり練度の向上は十分に可能です。

 

 防衛省予備自衛官の活用を施策として挙げていますが、被教育者としてだけでなく指導者としての人材を予備自衛官の中に求め、予備自衛官全体の能力開発と向上につなげることができないかと思います。

ポーランド領土防衛軍について

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 ポーランド領土防衛軍(Wojska Obrony Terytorialnej 以下WOT)はポーランド軍の第5軍種として2017年に設立された非常勤兵士による民兵組織である。

 

 WOTホームページ

terytorialsi.wp.mil.pl 

 

WOT youtubeチャンネル

www.youtube.com

 

 ポーランドと日本では地理的条件等で異なる点が多く単純な比較はできないが、ホームページを見たところ詳細な情報が掲示されていたので何かの参考になるやもと思い記事に取り上げてみた。なお、筆者はポーランド語が全くできないためグーグル翻訳を頼りに書いている。誤っているところなどあるかもしれない。お気づきの方は知らせて頂けると幸いである。

 

 WOT設立の主たる要因は2014年に勃発した一連のウクライナ動乱でありWOTの任務についてもハイブリッド戦争を指向したものが主となっている。

 

 当初はポーランド東部3県(ロシアの友好国であるベラルーシとの国境近辺)で3個の領土防衛旅団(BOT)が編成され、現在13個領土防衛旅団まで増強されている。最終的には5万3千人からなる17個領土防衛旅団が編成され、首都ワルシャワのあるマゾフシェ県に2個、その他の県には各1個領土防衛旅団が配置される予定。

 

 各領土防衛旅団は駐屯する県に居住する兵士によって構成され、WOTのホームページには地域社会をサポートすると謳われている。ポーランド軍予備役が正規戦を担うのに対して、WOTはハイブリッド戦争下で自らの故郷を守る地域密着型組織であるということだろう。

 

 WOTの多くは非常勤の兵士より構成されており、生業を持ちながら訓練に参加している。志願するに当たって主な条件は以下の通り。

 

  • ポーランドの市民権があること。
  • 法定年齢(18歳)以上であること。
  • 肉体的・精神的に健康であること。
  • 兵役等の義務に従事していない事。
  • 犯罪歴がないこと。

 

 申し込みはネット及び郵送で行うことができる。採用試験は面接と身体検査、心理テスト。

 

 また、一般コースとは別にサイバーセキュリティ技術者や看護師を対象としたコースも存在する。大学等で教育を受けている看護師、もしくは看護師志望者については補助金を受け取れる制度もあるようだ。

 

 入隊後は教育訓練(自衛隊で言えば予備自衛官補の教育訓練招集か)を受けることになるが、軍隊経験者と未経験者とでは日数や内容が異なる。訓練については毎日12時間にも及ぶ厳しいものだが、基本教練等の訓練は最小限にして射撃訓練等を優先しているとの事。

 

軍隊未経験者

連続16日か2日×8回の週末訓練

戦闘訓練、救命措置、SERE(残存・脱出・抵抗及び退避)、射撃訓練など

 

軍隊経験者

2日×4回の週末訓練

体調検査、軽歩兵としての訓練など

 

 その後、3年間で段階的に個別訓練、専門訓練、部隊訓練を受けることになる。最初の教育訓練とは別に1年間で36日の訓練を受け、最初の3年間で合計124日の訓練を受けるように計画されている。ただし、雇用企業に影響を与えないよう訓練は休日を中心に行われているようだ。

 

 また、eラーニングも訓練の一部に取り入れられている他、体力錬成の為に専用のアプリまで用意されている。

 

play.google.com

(残念ながらポーランド語のみと思われる)

 

 体力検定の内容は3000m走、腕立、腹筋。

 

 この他、専門職養成の為のコースもあり年間36日(例:週末11日とフィールドトレーニング14日)の訓練を受けることができる。更に下士官や将校になるための長期入校コースも開かれており、またWOTの正規(フルタイム)軍人に志願することも可能である。

 

 雇用条件についてはWOT兵士は通常の訓練中、手当を受け取ることができる。一方、雇用企業は当該兵士を無給休暇扱いとするが、補償として一定の現金給付を受け取ることが可能。その代わりWOT兵士であることを理由に解雇することは出来ない。

 

 将校課程に入校する等、長期的に職場を離れる場合、雇用企業はWOT兵士に給料を支払い続けなければなければならないが、WOTより給料として支払った同額を補助金として受け取ることができる。WOT兵士の義務としては訓練期間を雇用企業に通知しなければならない。

 

 制度の紹介としては以上となる。

 

 WOTの役割はハイブリッド戦争時の郷土防衛が主であり、第一線任務に就く即応予備自衛官、後方警備に就く予備自衛官とは役割が異なっている。しかしながら訓練内容や人事制度については予備自衛官等制度の参考になりそうな点も多々あると思うので(体力錬成用のアプリとか訓練のeラーニング活用とか是非自衛隊でも実施して欲しいと思う)この度、紹介する記事を書かせてもらった。

 

 興味のある方はグーグル翻訳等を使ってWOTホームページを閲覧してみて欲しい。

公務員から公務員への転職と自衛官

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 自衛隊に関わった事のある方はご存知かと思いますが、自衛隊の場合、入隊したからと言って全員が定年まで残るわけではありません。自衛官候補生や一般曹候補生で入隊した隊員は3曹に昇進しなければ2~6年程度で退職していきますし、幹部にしても1~2割は尉官の段階で退職していくようです。

 

 任期制隊員は特殊な例ですが、幹部自衛官でも退職者が一定数いるというのは意外ではないかと思います。これは自衛隊だけでなく普通の国家公務員や地方公務員でも同様で、役所内で転職の話を聞くことは珍しくありません。

 

 民間では昔と比べて、一つの会社で新卒から定年まで過ごすという意識は低下しているとのことですが、公務員の世界でも(特に30代以下の若手には)新卒で入庁して定年まで同じ役所に勤めるといった固定概念はだいぶ薄くなっています。自分のライフスタイルやキャリアを考えて他所に行きたければ転職するといった考え方の職員が増えてきた感じでしょうか。

 

 そんな中でも一番多いパターンは公務員から公務員への転職です。

 

 私の知っている範囲でも、

 

自衛隊(幹部)→市役所

省庁→市役所

県庁→市役所

市役所→県庁

市役所→(他の)市役所

 

などと事例には事欠かない状態です。最近では社会人採用を実施している自治体も多いため、待遇の良い自治体(県庁や政令市等)が近隣自治体の優秀な職員を吸い上げてしまうという現象も発生しているとか。特に技術系公務員については現状どこの自治体も採用倍率が低いため転職の増加に一層の拍車がかかています。

 

 転職の理由は様々ですが、良くある理由として挙げられるのが地元に帰って働きたい、転勤が嫌(省庁や県庁から市町村に来るのは大体これらのタイプ)、もっと大きな仕事、専門的な仕事してみたい(市町村から政令市、県庁へ行く等はこのタイプ)などでしょうか。

 

 気になるのは面接で公務員であることがどう評価されるのかですが、しっかりと転職したい理由を考えて面接官に伝え納得させることができれば特に問題ないと思います。

 

 当然ですが地元に帰りたいとか、今の部署が激務なのでもっとましなところに行きたいとかの理由では駄目で、転職したい省庁、都道府県庁、市町村の特性と、そこで自分が何をしたいか、今の職場でそれは出来ないのか等の点を考慮したうえで志望理由を考える必要があります。それさえできれば特に不利になる点は無いかと。

 

 実際に、私も自衛官(陸士)から他職種公務員への転職組ですが、採用面接で自衛隊の経歴がプラスに働いたことはあっても不利に働いたことは無いと思います。要はちゃんと転職理由を説明できれば問題ないという事ですね。

 

 あと、現職の士の皆さんにこれだけは言いたいのですが、任期制・一般曹候補生問わず出来る事なら最低でも1任期分は在職しましょう。退職理由に「任期を満了する(した)から」が使えるのでだいぶ説明しやすくなります(一般曹候補生についても「ちょうど1任期分勤務したのでこれを区切りに外の世界で挑戦してみたいと思った」とか言えば説得力が出ます)。

 

 また、公務員試験を目指す場合は出来るだけ採用試験に受かってから退職するのがベストです(そもそも自衛隊の場合、次の就職先が決まってなかったら辞めさせてもらえないと思いますが)。消費税増税と新型コロナの影響による経済悪化で、今後公務員試験の倍率も上昇することが予想されます。数年間は退職するリスクも跳ね上がるでしょう。

 

 高校、大学で土木・建築・電気・化学・機械などの学科を卒業された方は技術系公務員という道もありますが、全体的に公務員の求人も少なくなっていくと思います。公務員に転職しようと思われている方は、曹になる気は無くてもある程度予防線を張っておくほうが良いかと思います。

新型コロナと予備自衛官の諸々

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 新型コロナによる緊急事態宣言が5月31日まで延期されました。新規感染者数は全国的に減少傾向であり、このまま事態が終息して緊急事態宣言が解除されれば予備自衛官等の訓練招集も再開されていくのではないかと思います。

 

 新型コロナで招集が無くなって、おまけに外出もままならず士気が下がっている方もいるかと思いますが、ものは考えようでこれを自己研鑽の機会と捉えて何か勉強を始めてみるのも手だと思います。

 

 社会人としてだけでなく、予備自衛官としてもスキルアップできる技能としては外国語(特に英語)が挙げられます。語学技能予備自衛官だけでなく即応予備自衛官や一般の予備自衛官としても外国語技能は絶対にプラスになる能力なので、簡単な日常会話レベルでも身に着けておけば損はしないと思います。また、本業でも仕事の幅が広がるのは間違いないでしょう。

 

 もし、英語を勉強する場合はモチベーション維持の観点からTOEICや英検などに挑戦することを目標にしてみても良いかもしれません(自衛隊では特にTOEICの点数が重視されるようです)。

 

 他にも例えば野外衛生に関して参考となる書籍等も出版されています。救急救命処置についても職種に関係なく全ての予備自衛官が身に着けておけば役立つ技能ですので勉強してみてはと思います。

 

イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護 -COMBAT FIRST AID-増補改訂版

 

※イラストは漫画っぽいですが元陸自の衛生隊員が書かれた硬派な内容の本です。

 

 衛生関係で興味を持たれた方は、現在は新型コロナの影響で中止されていますが消防や赤十字救急救命講習で技能習得を目指してみてはいかがでしょうか。

予備自衛官関係給付金の対象となる独立行政法人

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 以前、官公庁は即応予備自衛官雇用企業給付金など、雇用企業に給付される給付金の対象外だということを紹介しました。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 じゃあ独立行政法人はどうなるのか?

 

 独立行政法人制度とは「各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与えて、業務の質の向上や活性化、効率性の向上、自律的な運営、透明性の向上を図ることを目的とする制度(総務省ホームページより)」です。官庁と民間の中間的な組織に当たり、国の監督の元、ある程度の自立性をもって業務に当たる特殊な組織です。職員の身分も公務員(行政執行法人)の場合もあれば民間人の場合もあります。

 

 有名なところでは造幣局国立美術館独立行政法人です。防衛省関係では独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(エルモ)があり、在日米軍で働く労働者の雇用や労務管理を行っています。

 

 予備自関係給付金の対象外については国、地方公共団体及びそれに準ずる者ですが、この「それに準ずる者」とは「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる公共法人」(要するに法人税の支払いを免除されている法人)となります。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 この一覧の中に独立行政法人も記載されているわけですが、ここから少し事情が複雑になってきます。別表第一の記載は次の通り。

 

独立行政法人(その資本金の額若しくは出資の金額の全部が国若しくは地方公共団体の所有に属しているもの又はこれに類するものとして、財務大臣が指定をしたものに限る。)

 

 

 つまり、独立行政法人の全てが対象というわけではなく、財務大臣が指定したものだけが別表第一の対象という事になります。では、「財務大臣が指定をしたもの」とはどれを指すのか。根拠となるのは以下の財務省告示です。

 

平成15年 財務省告示第606号 法人税法別表第一第一号の表独立行政法人の項の規定に基づき、法人税を課さない法人を指定する件

 

※現在は統廃合された独立行政法人も含まれるため注意。

 

 対象となる独立行政法人があまりにも多いので詳細は上記のリンク先を参照して下さい。

 

 例えば独立行政法人国立病院機構はこの告示一覧に入っていないため別表第一の対象ではなく、もし職員が予備自衛官になったとしても各種手当は受け取れることになります。もっともこの告示自体は平成15年発出で、その後独立行政法人は統廃合が繰り返された上に新たに設立されたものもあるため、実際の運用がどうなっているのかは最終的に所管官庁(担当は財務省主税局)への確認が必要だと思います。

 

 もし独立行政法人に勤務している方で予備自衛官に任官している、もしくは志願しようとしている方は念のため地本に確認してもらった方がいいでしょう。

 

 ちなみに似たような制度である国立大学法人地方独立行政法人については法人税法別表第一に含まれておりますので給付金の対象外です。

「コロナ対策で予備自衛官を招集しろ」は簡単に出来ない

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 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い既にいくつかの都道府県で生活支援や教育支援で自衛隊災害派遣が行われております。直近では長崎のクルーズ船集団感染でも自衛隊に医療支援の災害派遣要請が行われたとの事です。

 

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 さて、医療関係者の負担も拡大する中、横浜港のクルーズ船の時と同じように予備自衛官を招集すればいいんじゃないかと思った方もいるかもしれません。横浜港のクルーズ船対応では医療系及び語学系の予備自衛官が招集されました。感染が日本全国に拡大した今、予備自衛官をもっと活用できればと考える人がいるのは確かに当然だと思います。

 

 生活支援や患者の車両輸送なら医療系の予備自衛官でなくとも従事可能だし、医療現場と自衛隊の負担を同時に軽減できれば一石二鳥です。実際に欧米では多くの国がコロナ対策で予備役を動員しています(アメリカ、フランス、スイス、カナダ等)。

 

 ただ、日本の場合は実際に予備自衛官を招集しようとすると非常に困難な問題に突き当たることになります。

 

 まず、第一に現状では医療系予備自衛官の招集が困難ではないかという事。基本的に予備自衛官は各々の本業を持ち生計を立てています。コロナ対策で必要とされる医療系予備自衛官特は主に医師、看護師等ですがその多くは普段、病院等で働いている医療従事者です。既に新コロナ対策の第一線で業務に従事している方も多いでしょう。新型コロナが感染拡大している現在、招集を打診してもそれに応じることのできる人は少ないのではないか。

 

 更にもし招集に応じることができたとしても二次感染する可能性が高い現場に投入された場合、招集解除後に2週間近い経過観察措置を設けなければなりません。それだけでなく、新型コロナ関連業務に従事したとあれば風評被害等にも気を遣わなければならない。確かに、横浜のクルーズ船で自衛隊は二次感染者ゼロという成果を出しましたが、だとしても予備自衛官を雇用する医療機関が現在、果たしてそのようなリスクを許容できるのか。

 

 一応、防衛省自衛隊では雇用企業協力確保給付金として、予備自衛官災害派遣招集に応じた場合及び公務中の負傷の為勤務できなくなった場合、日額3万4千円を支給するとしていますが、雇用企業からすれば実際の所「給付金が支給されても今は招集されてほしくない」というのが本音ではないかと思います(ちなみに予備自衛官が公立病院の職員である場合はその給付金すら支給されない)。

 

 では医療系以外の予備自衛官を招集しようとしたらどうでしょうか。患者の車両輸送や生活支援なら医療系でなくとも活躍の余地はありそうです。確かに、新型コロナの影響で会社自体が営業停止状態になっているところもあり、応招可能な予備自衛官もいると思いますが、逆にこんな事態だからこそ忙しくなっている業界もあります。また、新型コロナ感染を避けるために在宅勤務や自宅待機させている企業もあり、そんな中で感染の可能性がある場所に社員が行くというのは、予備自衛官本人にやる気があったとしても雇用企業として抵抗があると思います。

 

 もし新型コロナ対策で予備自衛官を招集し、新コロナ感染者を出したとあれば間違いなくニュース等で報道されるでしょう。結果としてリスクから企業が予備自衛官の雇用に消極的となり充足率の低下を招く可能性もあります。現在の日本には欧米と違いそこまでして企業が予備自衛官を雇用すべきという社会的素地はありません。

 

 横浜のクルーズ船で新型コロナが蔓延した当時は日本国内でこれほどまでに感染拡大するとは思われていませんでした。クルーズ船で事態が終息すればそれで解決だと国民の多くが思っていた。著名人が亡くなる前でそれほど危機感もなく、医療機関もまだまだ余裕があった時期です。だからこそ自衛隊も医療系や語学系の予備自衛官を招集することができた。

 

 ですが、現在は状況が違います。もちろん、東日本大震災や台風19号の時の様に予備自衛官を快く送り出してくれる雇用企業も多々あるでしょう。しかし、国内のどこもかしこも余裕がない現在、予備自衛官の招集は難しいのではないかと思います。

 

 また、予備自衛官を招集しても実際に活用できるのかという問題もあります。現在、自衛隊は軽症者への生活支援を初動の1週間程度とし、順次民間事業者や自治体に移行する取り組みを進めています。国防が本分である自衛隊として、派遣の長期化を避けるべく適切な段階で業務を移行する方針の様です。

 

 そもそも、今回の新型コロナについては厚生労働省地方自治体が一義的に対応すべき事案です。自衛隊がそこまで活動を拡大させていないという事は他の機関で対応が可能であるという事。以上の情勢を鑑み、欧米並みに状況が悪化しない限りは、防衛省予備自衛官の招集を考えていないか、あったとしてもごく一部に留めるだけではないかと思います。

新型コロナと予備自衛官訓練招集

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 新型コロナウィルスの影響により予備自衛官関係でも影響が出ております。

 

 既に令和2年度第一回予備自衛官補採用試験が中止になっており、予備自衛官即応予備自衛官の訓練招集や予備自衛官補の教育訓練招集についても全国的に訓練日程が未定となっているようです。

 

 即応予備自衛官については4月に訓練招集を行った部隊もあったようですが、今後の訓練予定は白紙状態とのこと。

 

www.mod.go.jp

 

twitter.com

 

 新型コロナに関わらず自衛隊は駐屯地内で多数の人間が集団生活をしているという特性上、感染症に対しては非常に神経質な組織です。隊内でのコロナ感染の可能性を少しでも低くするため、外部から多数の人員を招集する訓練や行事は中止せざるを得ないのでしょう。

 

 恐らく、緊急事態宣言が解除されるまで訓練招集の目途が立つことは無いと思われます。コロナの終息まで長引くようならば地本より何らかのアナウンスがされるでしょうが(訓練不出頭になる予備自が大量に出るため)、とりあえず今はおとなしく様子見といったところでしょうか。

 

 ちなみに防衛省ではホームページやYouTubeの広報チャンネルでコロナウィルスに対する啓発資料や動画を掲載しております。

 

防衛省 お知らせより

https://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/images/Disaster_relief/2020covid_19/2020covid_19_guidance1.pdf

 

www.youtube.com

 

 訓練予定も決まらずもどかしい状況ですが、感染拡大を防ぐため一人一人が出来る事をやって行くしかないと思います。

会計年度任用職員と予備自衛官まとめ

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 来年度(令和2年度)より非正規の地方公務員制度が大きく変わります。

 

 これまで役所の非正規職員(分かりやすく言えば役所のバイト)は、特別職非常勤職員、一般職非常勤職員、臨時的任用職員から構成されていました。

 

特別職非常勤職員  主に特定の学識・経験を必要とする業務(研究員。調査員等)

 

一般職非常勤職員  補助的な業務(事務補助員等)

 

臨時的任用職員   緊急・臨時の業務(災害発生時や産休職員の充足等)

 

※なお、これとは別に任期付職員という制度もありますが今回は関係ないので省略します。

 

 これが令和2年度より新制度に置き換えられ、一般職非常勤職員の全てと特別職非常勤職員、臨時的任用職員の多くが会計年度任用職員という形態に移行します。

 

 そもそもなぜ、このようなことになったかというと、本来、地方自治体では正規職員が主な業務を担い、非正規職員は補助的な業務に従事するという体制でした(ここら辺は民間会社の正社員と契約社員・バイトの関係に似ています)。

 

 しかし、バブル崩壊以降の厳しい財政状況と行政需要の増加により地方自治体は正規職員を削減。一方でその不足分を非正規公務員で充足した結果、非正規公務員の数は大幅に増加しました。要するに金は無いのに仕事は増えたから、正社員を削って非正規社員を増やして対応した、ということですね。

 

 ここで問題になってきたのが、そもそも非正規職員の運用が制度の趣旨から外れた形になっているという事。

 

 例えば「本来なら一般職非常勤職員として採用すべき事務補助員を特別職非常勤職員として採用する」、「緊急・臨時の業務で採用すべき臨時的任用職員を長期間に渡って雇用する」などを多くの自治体がやって来たわけです。。

 

 そこで国は今回の制度改正で特別職非常勤職員や臨時的任用職員の採用条件を厳格化し、一般的な補助業務については今回新設した会計年度任用職員で採用しなさいよ、ということにしたわけです。これに伴って多くの非正規公務員が令和2年度以降、会計年度任用職員に任用替されるものと思われます。

 

 では、この会計年度任用職員は予備自衛官になることができるのか?

 

 結論から言えば予備自衛官に任官することは可能です。ただし色々と条件が付きますし、フルタイム職員とパートタイムの職員で条件も異なってきます。

 

 まず、会計年度任用職員は一般職の地方公務員です。そのため兼業を行うためには地方公務員法第38条の規定に基づき兼業の許可を得る必要があります。

 

 例えば、特別職非常勤職員の事務補助員として今まで勤務してきた方は、地方公務員法第4条の規程により兼業申請の提出が不要でしたが、会計年度任用職員に任用替された場合は兼業申請を提出し任命権者の許可を得る必要がありますのでご注意ください。

 

 ただし、上記の制限を課されるのはフルタイムで勤務する会計年度任用職員だけで、パートタイムの会計年度任用職員については兼業が認められています(地方公務員法第38条第1項ただし書)。ただし、パートタイムの会計年度任用職員についても職務専念義務、信用失墜行為の禁止等の義務(要するに職務に支障が出たり、公務員の信用を貶めるような働き方をしてはいけないという事)が課せられますので、職場に申請を行わなければならない可能性はあります。また、自治体によっては兼業の時間制限など独自の規程を設けるところもあるかと思いますのでそこら辺はよくチェックすることが必要かと思います。

 

 地方公務員の予備自衛官兼業については以下の記事もご参照ください。

 

reserve-f.hatenablog.com

reserve-f.hatenablog.comhttps://reserve-f.hatenablog.com/entry/2019/08/05/211937

reserve-f.hatenablog.com

条令、規則等で予備自衛官の招集参加を職免で認めている自治体

※記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 地方公務員は地方公務員法(以下地公法という)第35条の規定に基づき「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と定められている。所謂、職務専念義務というものである。

 

 ただし、「法律又は条例に特別の定めがある場合」は職務専念義務を免除される。役所内部では略して「職免」、「職専免」等と呼称している(以下職免という)。

 

 では実際にどのような場合、職免が認められるのかというと、例えば年次有給休暇、育児休暇、公の職務(裁判員や国会参考人など)、研修への参加など。自治体によっては運転免許の更新に職免を使えるところも存在する。

 

 さて、予備自衛官として気になるのは訓練招集や防衛招集に職免が認められるかという点である。恐らく、多くの公務員兼業予備自衛官が訓練招集に年次有給休暇を使用していると思われるが、日数が限られている年次有給休暇よりも職免を使える方が災害招集や防衛招集の時には圧倒的に有利である。

 

 だが、法律上は予備自衛官の招集は職免の対象となっていないため、一律に認められることはない。職免の対象となる「公の職務」についても予備自衛官の招集は含まれないと定義されている(詳しくは以下の記事も参照)。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 ただし、各自治体が個別に条例で「予備自衛官の招集で職免を使える」と定めているとなると話は別になる。この場合、地公法第35条の「法律又は条令に特別の定めがある場合」に該当するので、当該自治体の職員は職免で予備自衛官等の訓練招集に参加できることになる。

 

 とは言ったものの、実際に条例で予備自衛官の職免について定めている自治体なんて存在しないだろう・・・と思って調べてみたら、驚くべきことに存在していた。

 

 以下、青森県野辺地町の条令及び規則からの抜粋。

 

野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する条例

 

昭和三十四年三月三十一日

条例第五号

 

(この条例の目的)

第一条 この条例は、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十五条の規定に基き職務に専念する義務の特例に関し規定することを目的とする。

 

(職務に専念する義務の免除)

第二条 職員は左の各号の一に該当する場合において、あらかじめ任命権者(県費負担教職員にあつては「教育委員会」)又はその委任を受けたものの承認を得てその職務に専念する義務を免除されることができる。

 

一 研修を受ける場合

二 厚生に関する計画の実施に参加する場合

三 前二号に規定する場合を除く外町長が定める場合

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する規則

 

平成十五年三月三十一日

規則第十五号

 

(目的)

第一条 この規則は、野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和三十四年野辺地町条例第五号)第二条第三号の規定に基づき、野辺地町職員の職務に専念する義務の特例に関し必要な事項を定めることを目的とする。

 

(特例)

第二条 前条の特例は、次の各号の一に該当するとおりとし、任命権者がそのつど必要とする期間これを与えることができる。

一 特別職として職を兼ね、その職に属する事務を行う場合

 

(中略)

 

九 予備自衛官の防衛訓練等の招集があった場合

 

(中略)

 

(手続き)

第四条 職員が、第二条の規定により、職務に専念する義務の特例を受けようとする場合は、遅滞なくその旨を所属長を経て、任命権者に願い出て承認を受けなければならない。

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

 恐らく、「予備自衛官の防衛訓練等の招集」とは訓練招集、災害招集、防衛招集等を指すと考えられる。この条例、規則により野辺地町職員で予備自衛官等に任官している者がいれば、招集のたびに年次有給休暇を使わなくても済むようになる。

 

 果たして自衛隊の駐屯地、基地があるわけでもない自治体で何故、予備自衛官が職免対象にされているのか謎ではあるが、予備自衛官を志願する職員が出た際に人事担当課が有事に際を考慮して追加したのかもしれない。

 

 また、直接職免とは関係ないが、宮城県蔵王町例規にも予備自衛官に関する事項記載されているものがある。

 

 以下抜粋。

 

蔵王町道路補修作業員就業規程

 

昭和57年2月12日

規程第2号

 

第1章 総則

 

(趣旨)

第1条 蔵王町道路補修作業員(以下「作業員」という。)の就業に関しては、この規程の定めるところによる。

 

(作業員の定義)

第2条 この規程において「作業員」とは、蔵王町が道路補修作業(運転業務を含む。)のため作業員として、臨時に採用したものをいう。

 

(中略)

 

(欠勤)

第6条 道路補修作業員が欠勤するときは、予め欠勤日並びにその事由を明記して所属長の許可を受けなければならない。即応予備自衛官の訓練に従事するときも同様とする。ただし、緊急やむを得ない事由により許可を受けることができなかった場合は、事後遅滞なく承認を得なければならない。

 

(中略)

 

(割増賃金)

第12条 作業員に支払う割増賃金は、次の各号に掲げるところによる。

 

(中略)

 

(6) 即応予備自衛官の訓練のため欠勤したものについては、就労実績に加算するものとする。ただし、その日数は1年間を通じて15日間とする。

 

(以下略)

 

 全文を確認したい方はこちら

 

  この「道路補修作業員」は正規職員ではなく会計年度任用職員(非正規公務員)である。詳しくは以下のリンク先の「募集職種一覧」を参照。

 

www.town.zao.miyagi.jp

 

 なぜわざわざ即応予備自衛官限定でこの条文を規程に入れたのか、これもかなり謎であるが、即応予備自衛官の作業員を採用しているのだろうか?

 

 いずれにせよ自治体が予備自衛官を職免対象と規定してくれれば、地方公務員の予備自衛官は大手を振って職免で訓練招集に参加できるし、近年たびたび発出されている災害招集についても年次有給休暇の残日数を気にすることなく参加でいるようになるのでありがたいのだが、何かしらの大きな働きかけがないと難しいだろう。

 

 一番手っ取り早いのは、国(厚生労働省)が予備自衛官労働基準法第7条の公の職務と認めてくれることだが、去年の国会で取り上げられたとはいえ制度が変わるにはまだまだ時間がかかるのではないかと思う。

予備自衛官、即応予備自衛官として取得した防衛記念章が着用できるようになりました

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 防衛省情報検索サービスの方はまだ更新されていないようですが、山本朋広防衛副大臣ツイッターで公表されています。

 

twitter.com

 

 これまで予備自衛官即応予備自衛官については、現役時代に着用資格のあった防衛記念章しか着用が認められていませんでした。つまり、予備自衛官即応予備自衛官として縁故募集や災害派遣等での活躍があっても(正確には活躍により賞詞が授与されても)新たに該当する防衛記念章を着用することができなかったのです。

 

 例えば、現職時に縁故募集により第5級賞詞を授与され防衛記念章(第13号)の着用資格を得た隊員が、退職後に即応予備自衛官となり熊本震災に関わる災害招集に従事し第3級賞詞を授与(第4号)された場合、第13号は制服に着用できますが第4号は着用できない状態でした。

 

 今回の制度改正により、予備自衛官即応予備自衛官として賞詞を授与された場合は該当する防衛記念章が制服に着用できるようになり、予備自衛官補出身者についても防衛記念章着用への道が開かれたことになります。

 

 ちなみに予備自衛官即応予備自衛官についは主に賞詞授与(縁故募集関係(第5号、第9号、第13号)や災害派遣関係(第4号、第8号、第12号))での着用資格が主になると思われます。実際に以下の通り、縁故募集や災害派遣予備自衛官即応予備自衛官に対する賞詞授与が行われております。

 

防衛ホーム新聞1002号12面

www.boueinews.com

 

雑誌「みりば」埼玉地方協力本部No.61より

http://www.miliba.com/pdf/report_03_061.pdf

 

 今回の改正については、予備自衛官等の縁故募集拡大といった狙いもあるのかもしれません(山本防衛副大臣のツイートでもモロに書かれている)。まぁ、予備自衛官が制服を着用する機会は滅多にないのですが(即自でも貸与はされるものの着る機会はほぼ無い)、それでもモチベーションアップには繋がるのは間違いないでしょう。

雑誌記事紹介

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 新型コロナウィルス対応のため、予備自衛官が招集されるようです。

 

https://www.mod.go.jp/j/press/news/2020/02/13a.pdf

防衛省プレスリリースより)

 

 今回の招集は主に医師、看護師等の資格を持つ予備自衛官が対象との事。地震や台風に続き医療活動での招集ということで、予備自衛官の活用も一昔前に比べると幅が広がったな、という感じです。

 

 これから重要になってくるのは招集される予備自衛官の生活や、雇用企業に対する補償だと思いますが、防衛省自衛隊は実態に即した問題把握に努め、制度の改善に努めていってほしいと思います。

 

 あと、公務員が即応予備自衛官雇用企業給付金制度と雇用企業協力確保給付金制度の対象外になっているのはいい加減、何とかならないもんでしょうか? 公務員の予備自衛官が招集されても現行の制度では所属組織に対する補償は一切なしとか肩身が狭すぎるんですが・・・。

 

 さて、ここからが本題。

 

 予備自衛官に関する雑誌記事を2点見つけましたので紹介したいと思います。

 

 一つ目は防衛省が編集協力している雑誌「MAMOR」の2020年2月号。

www.fusosha.co.jp

 

 「いざ志願! おひとりさま自衛隊」の著者で予備自衛官補出身の岡田真理予備3曹が台風19号による災害招集の体験をルポとしてまとめたものです。着隊から離隊まで19日間の活動を紹介されています。

 

 岡田3曹は陸上総隊司令部報道官室に配属され主に広報の仕事に携わっていました。台風19号の時に陸上総隊司令部のツイッターを見ていた方は招集された予備自衛官の紹介などが投稿されていたことを覚えていると思いますが、その裏舞台がどうだったのかこの記事を読めば分かります。

 

 本業がプロのライターという事で、一般人にわかりやすい文章の作成等、自らの経歴を生かして業務に貢献できたとの事です。

 

 岡田3曹の場合はレアケースになるのかもしれませんが、防衛省はこれから先、予備自衛官の職業、資格、技能を把握したうえで、これを有事に際に生かしていこうと考えているようです。

 

 既に制度改正で予備自衛官等が施設器材(建設機械)の資格を保有している場合は災害派遣の現場で活用できるようになっていますが、その他の分野でも予備自衛官の能力に応じた運用を進め、限られた人的資源を有効活用できるようになればと思います。

 

 二つ目は「ビジネスガイド」2019年8月号。

www.horei.co.jp

 

 恐らくほとんどの人になじみのない名前かと思いますが、労働保険、社会保険、税務等に関する雑誌で、企業の労務担当者、社会保険労務士などを対象とした記事が多く書かれています。

 

 2019年8月号では「社員が予備自衛官になったら・・・~制度の概要と実務上の留意点~」と題し、社会保険労務士の専田晋一氏(予備3曹)が予備自衛官等制度の概要と予備自衛官を雇用する企業の実務対応について書かれています。

 

 このブログでも紹介した労働基準法第七条(公の職務)に予備自衛官は該当するのかという問題や、訓練招集時の休暇はどう処理するのか、就業規則予備自衛官をどう規定するか等々について事例等を含めて解説されています。予備自衛官等たる社員の処遇に関する規程例も掲載されていますので、予備自衛官だけでなく、雇用企業の人事関係者にも役立つ内容となっております。興味ある方はご参考にされてはいかがでしょうか。

元自衛官から見た徴兵制と予備自衛官制度

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 平成26年ごろに解釈改憲が議論の的となっていた頃、徴兵制についても集団的自衛権と絡める形でよく話題に上がっていました。

 

反対派からは「集団的自衛権を認めると徴兵制になる」

 

賛成派からは「ハイテク兵器が主体の現代戦で徴兵は役に立たない。現実性がない」

 

 と、何だかかみ合わない議論を繰り広げていたような記憶がありますが、世界に目を向ければロシアによるクリミア占領の影響から2015年にリトアニアが徴兵制を復活、スウェーデンも2018年に人材確保の問題から徴兵制を復活させました。

 

 では実際に現代戦で徴兵制は役に立たないのでしょうか。憲法的な問題は置いといて、今回は自衛隊の諸制度と照らし合わせて実際に徴兵が役に立たないのかどうかについて書いていこうと思います。

 

 ちなみに筆者は徴兵制について、状況によってそれが日本の独立のために合理的なら採用すればいいし、非合理的なら志願制でいいという立場です。

 

※ここでの徴兵制の定義とは、成人に達した男子の全部、もしくは一部を1~2年軍隊に入隊させる制度とします。

 

 よく言われるのが、

 

「現代の兵器はハイテク化されていて徴兵では扱えない」

「軍人が一人前になるには長い年月がかかる。短期間で除隊する徴兵は役に立たない」

 

 多分、徴兵制に対する反論として真っ先に挙げられるのがこのフレーズだと思います。

 

 確かに部隊の運用、ミサイルや電子機器、火砲の操作には長年にわたる技術の習熟と経験が必要なので、御説ごもっとも。でも、それってそもそも将校(幹部)とか下士官(曹)の役目じゃないでしょうか?

 

 一般的に軍隊では指揮官の手足となって行動する兵(士)が必要となります。陸上自衛隊の場合、兵(陸士)に該当する入隊コースは自衛官候補生と一般曹候補生ですが、入隊すると前期後期併せて6カ月の新隊員教育を受けてから部隊に配属され、実際に演習や恒常業務に従事することになります。

 

 部隊で陸士がやる仕事は陸曹の指示の元で各種作業に従事したり、演習では普通科中隊の場合、小銃手などとして班長分隊長の指揮下で行動し、文字通り手足として部隊の末端を支えます。

 

 5~6年目の陸士長ともなれば陸士のまとめ役としてある程度のリーダーシップを求められますが、基本的に指揮は陸曹がするものと考えられているので陸士単独での判断能力というものはそれほど求められません。何か簡単な作業させる際にも陸士だけでやらせることはまず無く、指揮官として陸曹がつけられます。

 

 その後、陸士たちは陸曹にならなければ早くて1任期(2年)、長くても3任期(6年)ほどで任期満了退職(一般曹候補生依願退職)し自衛隊を去ることになります。つまり、陸上自衛隊も陸士については徴兵制と同じように比較的短いサイクルで隊員を入れ替えていることになります。

 

 だからといって有事になった場合は「こいつは入ってまだ2年目だから防衛出動には出せないな」なんてことはなく当然、経験の浅い陸士でも最前線に出ることになります。というか、出さなかったら何のために自衛隊にいるんだという話です。

 

 要するに「現代の兵器はハイテク化されている」、「軍人が一人前になるには年月がかかる」は確かに事実ですが、一方で軍隊組織には未だに「ベテランの手足となる体力重視の若い兵士」が大量に必要であることも事実なのです。

 

 これは徴兵制を採用している軍隊も同様で、兵は徴兵によりますが古参下士官や上級将校はほぼ全員が職業軍人で構成されています。

 

 ここでもし、「短期間で除隊する徴兵は役に立たない」とするならば、約6カ月の訓練で部隊に配属され、最短2年で辞めていく任期制陸士は一体何のために存在するのかという事になります。

 

 更に言えば予備自衛官補が予備2士に任官するまでの訓練日数は50日。技能公募予備自補に至っては10日しかありません。予備自衛官任官後の訓練も通常は年5日です。即応予備自衛官にしても年30日の訓練で現職の自衛官と同じ任務をこなすことが期待されています。

 

 「徴兵は短期間で除隊するから役に立たない」と言い出せば、そもそも陸士や予備自衛官は全員役に立たないという話になりますし、そんな制度を運用している防衛省自衛隊の見識が問われる事になるでしょう(実際には陸士、予備自衛官即応予備自衛官共に災害派遣等で活躍しています)。

 

 現実にはイスラエルのように徴兵制でありながらも強力な軍隊を維持している国も存在しますし、スウェーデンの様に志願制移行後に人員と質の低下により徴兵制を復活させた国もあります。

 

 というわけで、

 

「現代の兵器はハイテク化されていて徴兵では扱えない」

「軍人が一人前になるには長い年月がかかる。短期間で除隊する徴兵は役に立たない」

 

 は必ずしも事実ではありません。

 

 徴兵が役に立つかは

 

「その国の情勢」

「軍の教育システム」

「教育する職業軍人の質」

「国民の徴兵制に対する理解度」

 

 等々様々な条件に左右されます。

 

 昨年、自衛官候補生の採用が5年連続計画割れというニュースがありましたが、少子化と民間の採用増により今後、急速な景気悪化でもない限り自衛官の募集活動は苦戦を余儀なくされると思われます。

 

 というか、はっきり言って就職氷河期リーマンショック後のように自衛隊が優秀な人材をいくらでも集められた時代はとっくに終わっています。給料を上げたらどうにかなるとか、最早そういう段階ではありません。

 

 我が国が徴兵制を採用することは少なくとも今のところはなさそうですが、それならば実際に戦場に派遣されているアメリカの州兵(パートタイムの兵士で年間訓練日数は約40日)やイギリスの国防義勇軍(民間人を訓練して予備役軍人とするもの。我が国の予備自衛官補制度に近い)を参考にして予備自衛官制度を効率よく運用できるようにするなど、新隊員募集以外の面でも改革を行っていかないと最終的には「戦わずして戦力減耗」みたいな状況になりかねません。

 

 徴兵制を否定するのはそれで構いませんし、筆者も今の日本に徴兵制は不要だと考えています。が、長期的に少子化が続くという我が国の状況を考えて、それでも必要な人員を確保できるだけの施策は考えて行かなければならないと思います。でないと、待っているのはスウェーデンのような「徴兵制の方が合理的」という結末かもしれません。

国会で予備自衛官等制度について取り上げられていました

※当記事は公開情報を元に支障のない範囲で記述しておりますが、もし問題がある個所がありましたら筆者まで一報頂ければ幸いです。また記事の内容は投稿日現在のものです。

 

 令和元年11月14日の第200回国会参議院外交防衛委員会(第4回)において予備自衛官等制度について取り上げられていました。

 

 発言者は元自衛官佐藤正久議員で、内容としては主に以下の通り。

 

○「労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日基発第150号)」により予備自衛官が公の職務に含まれていないことの問題点。

○海自と空自の予備自衛官が少なすぎる。

災害派遣の実情に応じて建設機械を操作できる予備自衛官を重点的に採用して欲しい。

 

 ちなみに基発第150号について稲津久厚生労働副大臣の回答は「防衛省を通じて予備自衛官の活動状況の実態を把握した上で対応していきたい、速やかに検討してまいりたいと思います」とのこと。

 

※動画はこちらから検索ください。

www.webtv.sangiin.go.jp

当該質疑応答は23分14秒あたりから。

 

※議事録はこちらから検索ください(「予備自衛官」で検索すると出てきます)。

kokkai.ndl.go.jp

 

 なお、「労働基準法関係解釈例規について(昭和63年3月14日基発第150号)」については以下の弊ブログ記事も参照ください。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 欲を言えば、基発第150号に触れるなら、官公庁が予備自衛官に関わる各種給付金の対象外になっていることにも触れてほしかった。現在、本業が公務員の即応予備自衛官予備自衛官は「即応予備自衛官雇用企業給付金」、「雇用企業協力確保給付金」の対象外なのです。

 

reserve-f.hatenablog.com

 

reserve-f.hatenablog.com

 

 労働基準法の解釈については所管が厚生労働省の為、防衛省単独ではどうにもなりませんが、給付金の支給対象については防衛省単独の判断で変更できるためハードルはもっと低かったはず。

 

 ただ、限られた質疑応答の時間を使って予備自衛官について言及して頂いた佐藤議員には公務員の予備自衛官の一人として大いに感謝の言葉を伝えたいと思います。